219.人間と魔物
異世界転移をしたパーフェクトガール、北大路ナミことナヴィ。
職業『村人A』
仕事『駆け出し冒険者に、最初のダンジョンの情報を与える』のみ。
自分の進むべき道を見つけグローリア案内所で仕事を行うナヴィ。
魔物の反撃が始まる。
最後のモンスターを片付ける、その一瞬で俺らは二人の仲間を失った。
「あはは! あっかーい! 見て見てアギル! ほら、ぶしゅーって!」
「当たり前でしょう、腹部を貫いたんですから」
「「!?」」
「シネェェェェェェェェ」
「アヴィロ!?」
怒りに身を任せ、バーサーク状態となったアヴィロが突攻した。
「はや! アギル、危ないよ!」
「分かってる」
アギルはネリウルの腹部を貫いていた手を放し、後方へと回避する。
「ネリウルっ! くそ、シャギーはサナを。苦手かもしれないがアヴィロが戦ってる今、回復魔法を頼む!」
「わ、分かった!」
俺らが回復に専念する中、アヴィロは奴らと対面する。
「サ、ナ、ネリ、ウル。オマエラ、コロス!」
「アギルアギル! あの人すごいよ! なんかもう獣だね!」
「あれは獣人族、それもあの翡翠の鱗、アリゲーター。凶暴性では獣人族の中でも随一だとか」
「へぇすごいすごい!! ねぇねぇあれ、うち一対一で戦いたい!」
「はぁ、だめといっても聞かないでしょ。お好きにどうぞ」
「わーい!」
「ガァァァァ!」
バーサーク状態のアヴィロにあのダリアってやつは笑顔で向かっていった。
「クオード、ネリウルの様子はどうだ!」
「重傷だ……それに、これは、もう……」
「そうか……」
「サナは?」
シャギーは無言で首を振った。
「くそ、くそ、くそぉぉぉ! まだ魔力が足りねぇっていうのかよ……」
もう少し時間が必要だ。アヴィロ。何とか持ちこたえてくれ。
「あははは! 速いし強いね、いいよいいよ、すごーく楽しい!」
「ガァ! ガァ! ガァ!」
「おい、嘘だろ……あのバーサーク状態のアヴィロのフィジカルは俺らとは段違いなんだぞ……なんで攻撃が一つも当たらねぇんだ……」
「それに回避しているあいつはまだ何も攻撃してないぞ」
驚愕した。
バーサークの解放を制限せずフルで行ったアヴィロの攻撃を赤子同然にあしらっている。
「あはは、あは、はは……なーんか面白くなくなってきちゃった……」
「ギギギギッ。グルアァァ!」
「もうその突進と大きくなったお口で嚙む攻撃は見飽きたよ。他に芸はないの?」
「ダリア、そろそろ時間だよ。帰らなきゃ。私も出る」
「そっか。残念だな」
「じゃあバイバイ。ワニさん」
「!? ガッ……グ、グ……」
ダリアの手が突進してきたアヴィロの腹へと突き刺さった。
「アヴィロォォォ!!!」
ダリアを掴みにかかったアヴィロの腕がゆっくりと下がっていく。
そしてその腕はそれ以上上に上がってくることはなかった。
「アヴィロ、ネリウル、サナ……てめぇら。何やってくれてんだ……」
シャギーは回復魔法を中断し、放していた大剣を掴んだ。
「シャギー落ち着け……俺達じゃあいつには敵わない。今は大人しく」
「何言ってんだ。クオード。三人も殺されたんだぞ……しかも目の前で……」
「気持ちはわかる……だが」
「うるせぇ。お前はなんでそんな冷静でいられる!」
「ネリウル、アヴィロ、サナ。……サナ、サナ」
「だめだ行くな!!」
「くそがぁぁぁぁ!」
シャギーは俺の話を聞かず、後を追っていくかのように無策で奴らに突っ込んでいった。
「ねぇアギル。うちああいうの嫌いなんだよね。感情的になるやつ……」
「さっきまでの上機嫌はどこにいったのダリア……まぁ同感だけど」
「「殺そう」」
「うおぉぉぉぉぉぉ!」
「やめろぉぉぉぉ!!!」
シャギーの突攻していく姿を見てられず、俺は一瞬顔を反らしてしまった。
その一瞬の間に、大きな轟音が鳴った。そしてその後俺がシャギーの姿を確認しようとしたが。
あいつは姿形も残らない塵となっていた。
愛用していた大剣と、三人の遺体、そして俺を残して……。
「あんたは攻撃してこないのかい? えーっと。クオードさん。だっけ?」
「まぁここで死ぬのは変わんないけど」
「……のために?」
「「え?」」
「何のためにお前らはここに来た」
やめろ。聞くな、俺……。
「何のためにってそんなの教えられるわけないじゃん。ばっかじゃないの? ね、アギル」
「目的を遂行するためとしかいうことができないね」
「その目的はなんだ」
だめだ。それ以上踏み込むな。
「アギル。この人馬鹿なの」
「まぁいい。どうせ死ぬんだ。一秒でも長く生きるために考えた苦肉の策なのだろう」
「えへへ、おじさん頑張ったから教えちゃおうかなうちらはね『ブラッディフェスト』っていうのをやるんだよ!」
「ちょっと。ダリア何を」
「いいじゃんいいじゃん! どうせこの人死ぬんだから最後くらい付き合ってあげようよ!」
「ブラッディフェスト……?」
「難しい話はディノール様達しか知らないけど。簡単に言うと。人間を一匹残らず殺して、うちら魔物の世界にしちゃおうって話! さいっこうだよね!!」
「なん……だと?」
何を言ってるんだこいつは。
「なんでそんな不思議がるの、おじさん?」
「え?」
ダリアというやつは俺に笑顔で近づき、目の前へと来た。
その瞬間、奴の瞳孔が開き目と鼻の先の距離で俺のことを睨みつけた。
「あんたらが最初にやったことだよね?」
「……それは、でもそんなの昔の話で」
「じゃあ二年前に襲い掛かってきたのも昔の話?」
「!?」
「おかしいよ。共存できていた人間と魔物が、いや、元は魔物なんか呼ばれてなかったもんね。種族が違うだけだった。なんで人間は一方的な偏見や価値観でうちらを世界の隅に追いやったのかな?」
それを根に持っていたのか……? それなら人間が悪かったことを証明して……。
「……今からでも遅くない。話し合えばきっとわかる」
「人間は話し合いをしてくれたのかな? ずっと昔も二年前も」
確かに……何も言えない。でもそれが分かれば人間もきっと。
「……それはすまなかった。でも俺も今の話を聞いてできることなら」
「はぁ、もういいや。なんか話してて腹立ってきちゃった。アギル。このおじさんもう殺そう」
「もともとそのつもり」
「ごめんねおじさん。多分あなたは人間の中では良い人なんだと思うよ」
「……?」
「でもさ、うちらにとっては。人間は人間なんだ。それ以上でもそれ以下でもない。うちらから見たら良いも悪いも関係ないの。……アギル」
「なに?」
「この人にはせっかくだし、見せてあげよう」
「は? なんでこんなやつに」
「ね、いいでしょ?」
「しょうがないなぁ」
二人は手を取り合い息を深く吸い込んだ。
その瞬間二人を中心に大量の風が周りの木々を薙ぎ倒していくほど吹き込み始めた。
そしてその風が止んだ時、俺の目の前にいたのは……。
「……嘘だろ……。獣人族のドラゴン……? なんで」
「これがうちら『魔物』と呼ばれ。人間に突き放された怒りの姿だ」
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第十二章 三十六話 いかがだったでしょうか。
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クオードの前には二体の龍が。




