196.案内人として
異世界転移をしたパーフェクトガール、北大路ナミことナヴィ。
職業『村人A』
仕事『駆け出し冒険者に、最初のダンジョンの情報を与える』のみ。
王都公認の案内人となったナヴィ。
ナヴィがグローリア案内所を出て行く明朝。ヴィオネットは。
「ナヴィ」
「はい」
扉を開け案内所から立ち去ろうとするナヴィにヴィオネットが再度声を掛けた。
「曲がりなりにも同職だ。お前が自分の案内所で成功することを祈ってる」
背中を向けていたナヴィはヴィオネットのいつもからは想像もできないほどの優しい口調に戸惑いを見せ、小声で呟いた。
「……今更何を」
ナヴィの取っ手を持つ手が震える。
「ヴィオネさん」
「なんだ」
「ヴィオネさんはどうして案内人なんですか。サーティーンプリンスターを倒すほどの実力があるのに、こんな仕事辞めて冒険者に……」
「お前も知ってるだろう。俺たちは冒険者にはなれないんだ」
「でも、そんなの気にせず」
「ナヴィ。俺はこの仕事が好きだし、案内人という職業に誇りを持っている」
「え?」
「いや、違うか。誇りを持てるような仕事って胸を張って言えるようにする。そのために案内人を続けている」
「……ヴィオネさん」
「生まれとか。才能とかそんなのは関係ない。自分が決めた、自分がしたいって思ったことで輝きたい。それって普通のことなんじゃねぇのか」
「……!?」
それまでヴィオネットに背中を向けていたナヴィがヴィオネットの方を振り返った。
「今の言葉……」
『どんな仕事でも誇りを持って全うすること。それがたとえ冒険者様であっても、勇者様であっても、もちろん村人でも、じゃ。さすればどこにいたって、どんな職業だって輝くことができる』
おじいちゃんの……。
「ヴィオネさん!」
おじいちゃんのこと知ってるのかな。
「いーからさっさといけ。お前のいる場所はここじゃない」
「……」
声のトーンが上がったナヴィの呼びかけに冷たく返すヴィオネット。
「っく。失礼します」
「こんなこと言われたっけ」
あの時あたしは案内人という仕事の本質を何なのか分かっていなかった。
「あたしはあくまでも案内人。冒険者じゃない」
アミスやエンフィーを守る。
ミモザや魔王を討伐する。
そんなを言い訳ばかりで自分を正当化し続けてきた。
「でもそれも今日で辞める」
「あたしは案内人だ」
「ちょっナヴィちゃん! 出てきちゃだめだ!」
岩陰に隠れていたナヴィはクオードの後ろに立ち、魔力を放出しつつ杖を前に構えた。
「クオードさん。すみません。でも、あなたと一緒に戦わせてください」
「え?」
「冒険者様を全力でサポートする。それが私たち。案内人です」
「……ナヴィちゃん?」
「はぁぁぁぁぁ!」
「す、すげぇ魔力だ……でもこの魔力の波長。攻撃魔法じゃない!?」
「行きますよ、クオードさん!」
<セイクリッド・アタックグロウ!!>
クオードの身体が赤く光り輝いた。
「これは、物理攻撃の強化魔法……しかしこの力の上がり様は」
「はい、とっておきのです! クオードさん。まだ戦えますよね!?」
ナヴィの力強い声掛けに、にやりと笑ったクオード。
「ふふ、やるじゃねぇか。ナヴィちゃん。あたりめーだ!」
「グルルル」
オーガロックは背中に担いでいた金棒を取り出し二人の目の前でぶんぶんと振り回した。
「あの金棒……かなり強力そうですね」
「あぁ、だが今俺の後ろには天才上級ガイドがいる。それだけで十分だぜ!」
「ふふ、もちろんです! 後ろは私にお任せください」
「ふん。うおぉぉぉ!」
「ガァァァァ!」
<スプラッシュジャベリン!!>
クオードは水流を纏わせた檄を向かってくるオーガロックに放った。
そしてその檄はそのモンスターの固い装甲ごと胸を貫通した。
「何だこの威力……いつもの倍の威力なんてもんじゃねぇ……これがナヴィちゃんの」
「グアァァァァァ」
「す、すごい……」
ナヴィは自分の魔法を繰り出した杖を凝視した。
もちろん、クオードさんの素の力もあったと思う。けど、あたしここまでできてたんだ。
できないことにわざわざ立ち向かう必要もないし、その道を諦めることは妥協じゃない。
今の自分が最大限出せる場所で戦っていく。それが案内人としてのあたしの戦い方だったんだ。
クオードに胸を貫かれたオーガロックは、装甲が剥がれ落ち、体も砕けた岩のように少しづつ崩れていった。
「終わった……」
「あぁ、ナヴィちゃん」
クオードはナヴィに近づき親指を立てた。
「やるじゃねぇか。助かったぜ。若いのに大したもんだな!」
「……クオードさん!」
「つーわけで疲れたからちょっと、きゅう、け、い……」
オーガロックと一人で戦っていたクオードは相当なダメージを負っていたこともあり、ナヴィの目の前で親指を立てながら倒れた。
「うわー! クオードさん! 大丈夫ですか!!」
<ヒール! ヒール! ヒーール!!>
そこから一時間後、ナヴィの回復魔法で復活したクオードとナヴィが攻略したダンジョンの前で立ち話をしていた。
「いやぁ、ナヴィちゃん。助かったよ。はい、これ!」
クオードは腰に付けていたポシェットから小さな巾着を取り出した。
「これって、お金じゃないですか!」
「当たり前だろ! 助けてもらったんだから」
「いえ、こんなの受け取れません。それに」
私、それ相応のものはクオードさんとのダンジョン探索でもう受け取りましたから。
「え? どういうこと……って思ったけど。ダンジョン探索前よりいい顔してるなナヴィちゃん」
「ふふ、そうかもしれないですね。それじゃ暗くなってきましたし、私もう行きますね。行こうマーガレット」
そういうとナヴィは愛馬に乗り颯爽と森の中を掛けていった。
「言っちまったかぁ。いやぁいい子に会えたなぁってあれ?」
「あの子、あったとき西の方角から来てたよな。東の方に抜けていったぞ……」
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第十二章 十三話 いかがだったでしょうか。
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ナヴィが向かった先は。




