14.補助魔法使い ナヴィ
異世界転移をしたパーフェクトガール、北大路ナミことナヴィ。
職業『村人A』
仕事『駆け出し冒険者に、最初のダンジョンの情報を与える』のみ。
『村人』→『ガイド』へとクラスアップしたナヴィ。
転んだ拍子に持ちたくもない杖を持ってしまったナヴィだったが……。
「「お買い上げありがとうございます!」」
「結局買っちゃった。」
涙目になりながらゴールドを払うナヴィ。
「まぁでも、似合ってるよ。うん」
木製でナヴィよりも数センチ高く、先端で渦を巻いており、その中心に緑の宝石が埋め込まれた杖をナヴィは受け取った。
エミルはもう一声とナヴィに話しかける。
「ねぇナヴィ様。もしうちの専属になっていただければその杖専用のローブを差し上げますよ」
「え! いいの!?」
「はい。オーダーメイド等をする時もうちでやっていただけるのであれば」
にかっとエミルは笑った。サミルはエミルの耳に手を当て話す。
「エミル。あげるはさすがにやりすぎなんじゃないかな?」
「大丈夫よサミル。あの人たちは多分これから強くなる気がするよ」
「根拠は……?」
「ない! でも大丈夫! あたしが保証するわ!」
「そんな……」
サミルはまたエミルの勘かと苦笑いをする。
でもエミルの勘は馬鹿にならないくらい当たるんだよね。今回も信じよう。
二人は悩んでいたナヴィとハンナに目を向ける。
「ハンナいいかな?」
「いいんじゃない? 別にこの子たちも悪い子たちじゃなさそうだし、僕もいい装備買えたしね」
「それじゃあエミル、サミルこれからもよろしくね!」
「「はい!よろしくお願いします!」」
「ではこちらが『魔術師のローブ』です。ちなみに杖の方は『エメラルドロッド』ナヴィ様の胸のタトゥーと同じですね。効果は補助魔法の効力アップですからお姉さんの特性にぴったりですよ!」
フードのついた白を基調にした生地に、緑のラインが散りばめられているローブを早速着るナヴィ。
「わぁ可愛いローブ。ありがとう! 杖も補助魔法の効力が上がるなら願ったり叶ったりね! って、え、どうしてあたしの特性を……」
「私、目がいいんですよ。だてに五十年も生きてないですからね!」
「そっか、頼もしいわね」
「ナヴィそろそろ行こうか」
「えぇ。じゃあエミル、サミル、またよろしくね!」
ナヴィは腰を下ろし目線を合わせて言った。
「「はい! お待ちしております!!」」
エミルとサミルに大きく手を振りながら二人は店を後にした。
エミルとサミルの店を出たころには日も沈み、王都は夜の街へと変わっていた。
「お酒一杯五百ゴールドでーす!」
「ステーキ安いよー!」
「うわー夜の街はまた賑やかね。村じゃ考えられないわ」
「王都にもなると午前よりも夜の方が力が入ってるように見えるね」
疲れた様子のナヴィを見てハンナは言う。
「ナヴィ、そろそろ帰ろうか?」
「そうね。今日は一日いろいろあって疲れたわ……」
その時ハンナは左にある看板を見て目の色を変えた。
「あ、それじゃさ。今日は王都に泊っていこうよ!」
うーんエンフィーが心配だけど今から帰るのはなぁ……。
「お店が心配だけど、それもそうね。今日はもう日が落ちてきたし、明日の朝出れば夜までにはお店に帰れるわよね」
「やった!」
「でも泊るってどこに……」
「ナヴィ。左を見て」
看板の方に指をさす。
上が欠けた楕円、縦の三本の波線。これって。
「温泉?」
「ん?オンセンって?」
「あ、何でもない。お風呂かしら」
ちょくちょくこの世界には通じない言葉があるのよね……。
「そうだよ。ここのお風呂はとっても広くて気持ちいんだって」
「そういえばこっちに来てからはシャワーばっかりだったし……」
「いいわね! じゃあ行きましょ! 王都の夜を楽しむわよ!」
「おー!」
こうして二人は温泉に入ったり、お酒を飲んだりと王都の夜を満喫した。
次の日の明朝
二人は王都を背中に向け、昨日くぐった大きな門の前に立っていた。
「ナヴィ、準備できたかい?」
ハンナはローブと杖を装備したナヴィを見た。
「えぇ。じゃあ帰りましょうか。オリバービレッジに!」
二人の目の下にはしっかりと隈ができていた。
「うぅ気持ち悪い」
「ナヴィは流石に飲みすぎだったね」
「ハンナが夜明けまで付き合えとかいうからでしょ。それに初めてのお酒だったし」
「あはは、そうだった。でも楽しかったね」
「えぇ。今度はエンフィーも連れてここに来たいわ」
「うん! 魔法適性のお店のおばあさんやエミルとサミルにもまた会いたいしね」
「えぇ、それに」
少し俯くナヴィ。
「ケビンだね」
「うん、何か気になっちゃって……」
「またどこかで会えると思うよ。ケビンは外に出てることが多いらしいからダンジョンとかでも会うかもね」
「それは流石に確率的には低すぎるんじゃ」
「まぁまぁ。じゃあ出発しようか!」
「えぇ、帰りましょ」
それから二人は村に向かう途中にある森の中を順調に進んでいった。
「あ、ハンナ、モンスターだよ。あれはスライムね」
「本当だ、ナヴィ。せっかくだしなんか魔法使ってみてよ!」
「そうね、昨日ぱって覚えたので良ければ」
「ハンナいくよ!」
<アクセル!>
杖をハンナに向けると緑色の魔法陣が出た。
「わ、すごい。あたし魔法使ってる!」
「おぉ。青い光が。よーしじゃあ僕も!」
<アースエッジ!>
ハンナは二本の剣を重ねると、土属性のオーラが付いた双剣で、スライムを目にも留まらぬスピードで一閃した。
「おぉ体がめっちゃ軽くなったよナヴィ!」
「アクセルは敏捷性をアップさせる魔法ね。単純だけど意外と使えるかも」
「うん、僕も初めて能力向上系の魔法を受けた。この体に力がみなぎる感じすごくいいよ」
あれ、何かあたしの魔法ってすごいんじゃない……?
ようやくらしくなってきたじゃないの!
「さぁ、ハンナ。この調子で帰るまでにどんどん試していくわよ!」
「うん。補助魔法よろしくね!」
二人はこうして往路で見たことのある敵をどんどんと倒していった。
「ふー少し休もうか」
「えぇ。MPもそろそろ切れてきたし。これ変な疲労感ね」
「僕も思った。ただの体力が切れる感じとは違うみたいだね」
二人が木こりに座ろうとした瞬間、草むらの方からガサガサッと音が聞こえてきた。
「む、モンスターかな」
小さなモンスターが飛び出してきた。
「キュピー!」
「「ん、ウサギ?」」
その瞬間ハンナにウサギが突っ込んだ。
「いった!このウサギ結構速いよ。ナヴィも気を付けて!」
「ハンナ! ちょっと待って!」
真剣な表情を見せるナヴィ。
「どうしたの? 何かあった?」
ナヴィの表情を見て焦るハンナ。
「初めて見るモンスターだわ」
あ、まさか……。
「ねぇ、ナヴィ。もしかして帰りも?」
サファイアのような瞳がひと際に輝いた。
「えぇ。よろしく頼むわ。ハンナ!」
パンパンのリュックからすでにノートとペンが出ていた。
「君は本当に生粋の『ガイド』だね。」
やれやれとナヴィを見た。
「大丈夫。今回は防御魔法の<ディフェンドグロウ>を掛けてあげるから」
「ま。まぁそれならいいか……。ちょっとしか待たないよ。今日中には帰りたいからね」
「任せて!」
二人は往路で見たモンスターは魔法の試し打ちに、初見のモンスターはデータ収集にし、順調に村に帰っていった。
夕日が沈みだしたころ、エンフィーの仕事も終わろうとしていた。
「今日は店じまいでーす。ありがとうございました!」
二人組の冒険者がクローズの看板にしようとしていたエンフィーに声を掛けた。
「あのー、『始まりの遺跡』はどちらに?」
「あ、それなら。ん?何してるのお姉ちゃん」
エンフィーは営業スマイルから一変し目を細めてフードの下を覗いた。
「やっぱばれたかー!」
「だから言ったでしょ」
「お姉ちゃん! ハンナさん! おかえりなさい!」
今度は本物の笑顔だった。
「只今同行から戻りましたよ! エンフィーさん!」
自慢げにナヴィは言った。
「はいはい。それで、その恰好どうしたの!」
「あはは、まぁそれはかくかくしかじかありまして。」
「まぁいいわ。それは今日の夜ゆっくり聞かせてもらおうかしら!」
「えぇ、たっくさん話したいことがあるんだから」
やっぱりこの姉妹は絵になるね。
「それじゃ僕もそろそろ帰ろうかな、疲れたし」
「あら、ご飯でも食べていけばいいのに」
ナヴィが誘う。
「いいよ! 今日は二人でたくさん話したいんじゃない?」
ハンナの言葉にナヴィとエンフィーが向き合った。
「それもそうね。ハンナ、初めての同行があなたでよかったわ! ありがとね!」
「うん、僕はこれからも特別で頼むよ」
ハンナはナヴィに向かって親指を立てた。
それに対してエンフィーがすぐに返す。
「えぇもちろんです!」
「ちょっと、なんでエンフィーが応えるの!」
「いいじゃんハンナさんと仲良しなんだしさ。」
「じゃあ僕帰るから、またそのうち顔出すね!」
「えぇまたね!」
二人でハンナの背中が見えなくなるまで手を振った。
「エンフィーあたしがいない間お店ありがとね」
「ううん、実はいろんな冒険者様からお姉ちゃんに同行の依頼が来てるのよ。その恰好見てるともう明日からはそっちもできそうね」
「任せてちょうだい!」
こうしてハンナとの初同行と初王都の旅が終わった。
明日からもまたエンフィーと一緒にしっかり仕事をしていくわ。
おじいちゃんと同じこの補助魔法の適性と一緒に早く『上級ガイド』にならなくちゃね!
第二章 初めての王都編 完
最後までご覧いただきありがとうございました!
第二章 最終 第八話 いかがだったでしょうか。
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ストックは特にありませんがこの先も続けていく予定です。
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次回 第三章 スタートです!




