101.ブランとの約束
異世界転移をしたパーフェクトガール、北大路ナミことナヴィ。
職業『村人A』
仕事『駆け出し冒険者に、最初のダンジョンの情報を与える』のみ。
王都公認 『案内人適性試験』に臨むナヴィ。
トーナメント一回戦を突破した面々が準決勝に向け特訓を開始する。
鍛えてきた剣術を捨てグローブを身に着けたダリウスだったが……。
「うん! なんかこのグローブしっくりくるな!」
「おいらもそう思う! 剣よりもいい動きしてる気がするよ!」
「私も! 全然違うね、びっくりした!」
よし、やっぱり僕はこっちの才能があったみたいだ! これならきっと……。
「エドウィンの勝ち!」
「ミミィの勝利!」
あれ……?
「ザクレーの勝ち!」
な、なんで……。
「勝者、ナターシャ!」
「うぅ」
ナターシャは横たわっていたダリウスに声を掛ける。
「あーえーと、ダリウス大丈夫? 確かにグローブの方がいい動きしてたよ……? ほら! 武器の相性とかもあるだろうし」
「それじゃダメなんだ……」
「え?」
僕はその場から逃げ出した。結局武器の問題ではなかった。
僕には戦闘の才能ない。
その後も魔法や別の武器も一通り扱ってみたけどどれも極めるまでには至らなかった。
そんな劣等感や敗北感が付き纏わり、それを見かねたクラスの人間は僕を避けていった。
「五位……」
これじゃ兄さんに見せる顔がない。
「おいらは六位! お、ダリウスの次かぁ。おいらにしては上出来!」
「私は八位だったなぁ……」
「サテラ戦闘がだめだめだもんなぁ。おいらも人のこと言えないけど……順位が近い者同士で頑張ろうぜ! な、ダリウス!」
「触らないで!」
「「!?」」
「あ、ご、ごめん。僕先に行くね……」
二人は何も悪くないのに……僕は……くそっ。
そんな中、これから数週間後に開かれる案内人の公認試験があると聞き、僕を含めた上位八名が教室でその説明を受けていた。
「と、いうわけで今回試験を受けに来る『上級ガイド』はみな案内人のエキスパートです。皆さんのことをたくさんサポートしてくれるでしょう。上級ガイドの質によってですが、ここで才能を開花させるアカデミー生も少なくありません」
「「おぉ!」」
「私は主席のザクレー様だぞ? そんなもの必要ない。案内人なんぞいなくてもこいつら全員倒せるしな」
横に座っていたエドウィンの眉がピクリと動いた。
「今回一位になっただけで俺に負けたこともあるじゃねえかザクレー」
「何だとエドウィン?!? ここでやるか」
「あ?」
「やめなさい二人とも。みっともないですわ。わたくしが優勝するに決まってるのに……」
「ミミィ、君は全く……」
「あら、何かしら四位のキュリオさん」
「何だと? 魔法でしびれさせてあげようか?」
「うわぁおいら達とは違って上位勢はみんなすでにばちばちだなぁサテラ大丈夫か?」
「うん。私はこの中じゃ一番弱いから誰とあたってもやだなぁ。特にナターシャ」
「あはは、そうしたらさすがのあたしも容赦しないよサテラ」
「ひぇ! ってダリウス? どうしたのそんなににやついて……」
よし、よしよしよし。来たぞ。このトーナメントが一発逆転の大チャンスだ! 五位の僕でも優勝すれば次の成績発表で首席になれる可能性も出てくる。
問題はどんな案内人がパートナーになるか……。まぁでもきっと誰が来ても経験豊富な上級ガイド。強くなりたいことを伝えてたくさん教えてもらおう。きつくても食らいつくんだ!
そして当日、僕のパートナーとなるあの人が現れた。
「僕はブラン・ゴードン。よろしくね、ダリウス君」
ブランさんは僕の顔を見て優しく微笑んだ。きっとこの人は僕のことをたくさんサポートしてくれる。強くしてくれる。直感的にそう感じた。
そしてその勘は間違いではなかった。
「ブランさん。僕はもう負けるのは嫌なんです! 僕を強くしてください!」
「ダリウス君。君は勇者テリウスの弟だね?」
「え……なんでそれを」
「まぁ案内人だからこのくらいの情報は普通に持ってるものだよ」
「す……すごいですね……」
「それに、君がテリウスから剣術を習っていたが、他のアカデミー生に惨敗し、剣を捨て現在のグローブに武器を変えたこともね」
「それは……」
なんでこの人そのことまで……。
「別に僕は攻めてるつもりも卑下するつもりもない、ただ君のどうにかしてでも一番になりたいとあがこうとするその気持ちに感心したんだよ」
この人、何で笑顔でそんなこと言えるの?
「……」
「ダリウス君」
「は、はい」
「僕は君を強くすることができる」
「ほ、本当ですか!?」
「あぁ、このトーナメントで誰にも負けないほど……」
「誰にも負けない……」
やっぱりこの人は僕をきっと強くしてくれる! この人についていくんだ。
「ただ一つの言葉を覚えてほしいのと、一つの約束してほしい」
「言葉と約束ですか?」
「あぁまず大前提に『君は勇者テリウスにはなれない』それはわかっておいてほしい。だから辛いかもしれないけどお兄さんのことは忘れるんだ」
「!?」
分かっていた。でもこうも提言されると……。だめだ迷ってる場合じゃない。僕は強くなりたい。
「……分かりました。兄さんのことは忘れます。それで約束って?」
「ふふ。いい子だ。約束は簡単。『僕の命令は絶対だ』強くなるためには多少きつくて逃げ出したくなることもあるかもしれない。けど僕の言うことを信じて食らいついてほしい」
「はい! それはもちろんです。僕は誰よりも強くなりたいんです」
「ふふ、では一緒に頑張ろうね。ダリウス君」
こうして僕はブランさんと固い握手を交わし、このトーナメントに臨んだ。
そして約束通り、確かにこの人は僕を強くしてくれた。いや、『強く』はしてくれた……。目先にある地獄と引き換えに。
最後までご覧いただきありがとうございました!
第九章 十話 いかがだったでしょうか。
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この出会いがダリウスを歪ませた……。




