10.王都到着
異世界転移をしたパーフェクトガール、北大路ナミことナヴィ。
職業『村人A』
仕事『駆け出し冒険者に、最初のダンジョンの情報を与える』のみ。
『村人』→『ガイド』へとクラスアップしたナヴィ。
ナヴィの異常な情報収集癖にハンナは付き合わされるも何とか王都の目の前へ来たのだが…
「おーいナヴィ。もう王都の目の前だよー。何やってるんだい」
目を細めてナヴィを見るハンナ。
ナヴィはその横で足を抱えながら座っていた。
「ハンナちょっとだけ時間頂戴」
真剣な顔をしてハンナにお願いするナヴィはリュックの中をガサゴソと漁る。
「もしかして、ナヴィ。君はまた……」
ハンナは頭を抱える。
「ちょっとだけだからさ! それに王都ももうすぐそこじゃない」
その通りで王都はもう目と鼻の先だった。
三十メートルほどの大きな壁に草原と分断するように作られている。入り口には五メートルほどの門があり、木材で造られた橋が架けられている。
「ナヴィ。一応聞くけど何をしているんだい」
呆れた声でハンナが確認する。
「もー何度も言わせないで。情報収集よ」
ナヴィの目がきらりと光る。
ハンナにはもうナヴィのサファイアのような瞳が美しいとは微塵も思わなくなった。
「相変わらず絵はめちゃくちゃ上手いけどさ。流石にこの王都の入り口は使わないんじゃ……」
ナヴィは馬鹿にしたような顔で呆れ顔のハンナを見る。
「ハンナ、あなたはまだ『ガイド』の目線がわからないのね。情報を提供するということはあたし達のホスピタリティからなるのよ」
「ほすぴたりてぃ?」
「簡単に言うと思いやりよ。例えばあたしみたいに王都に行くのが初めてという冒険者様がいたら、あれが王都ではなく魔王の城かと思うかもしれないわ。この情報を正確に知っていれば王都に行くときの安心度が変わってきたりするのよ」
それはないと思うが今ツッコむのはやめておこう。
「まぁ理にはかなってるね」
「それにこの門の大きさだと、もし今後巨人族の冒険者様が現れてきたときに『門が少し小さめなので気を付けてくださいね』ってアドバイスもできるわ」
「うん、それは絶対にないから大丈夫」
「『絶対にない』なんてこの世に存在しないのよ! あらゆる可能性を考慮してシミュレーション重ねる。そしてその中から冒険者様に最善のアドバイスをする。それがあたし達ガイドなのよ!」
月の光がスポットライトのようにナヴィを照らしているように見えた。
見事なポージングだね。ナヴィ。
無言でゆっくり拍手をするハンナ。
「ナヴィ、素敵なポージングをしているところ申し訳ないけど、手が止まってるよ。早くしよーね」
「あ、あなたが聞いてきたんでしょ。すぐ描くからもう少し待っててね」
そんな会話をしていると、門の方からギギギという音が鳴っているのに二人は気づく。
「え、うそでしょ。確かに夜中だけど……そんなことある……」
ナヴィの目が大きく開く。
「あーもうそんな時間になってたかぁ」
目の前では王都に架けられていた橋が動いていた。
草原側にある橋の先端が徐々に上に上がっていくのが見えた。
二人は額に冷たい汗をかきながら一度ゆっくり向かい合って頷く。
「「走れーーーーーーーー!」」
「まだ間に合う。橋があるうちは門番に声を掛けさえすればきっと開けてくれるはず。ってナヴィはや!」
「現実世界の運動神経をようやく披露する時が来たわね。ハンナ、あたしだけ先行くよ!」
「あっ」
「ナ、ナヴィ!」
ナヴィは盛大にこけた。
「いったぁ。そういえばこんなに全速力で走ったのっていつぶりだったかしら。こっちに来てからは内職続きだったし……」
「ただの運動不足なんじゃないのかい。ナヴィ」
何とか追いついたハンナは手を貸した。
「ハンナより速いのに?」
「うるさい! いいから早く立って!」
ナヴィがハンナの手を取った瞬間。門の方からバタンと大きな音が鳴った。
「「あ」」
お、終わった。野宿だ…
ハンナが膝から崩れ落ち前に手を着く。
「ふっふっふっ」
ハンナの隣でナヴィは小さく笑いながら腰に手を当てる。
「ナヴィ?」
リュックに手をかける。
「こんなこともあろうかと。テントと非常食持ってきてました!」
ハンナはいつもの通り呆れた顔で尋ねた。
「これも『ガイド』だからですか。ナヴィさん」
「もちろんよ」
今回ばかりはそのどや顔が頼もしいとハンナは感じた。
「でもそれは『ガイド』だから。じゃなくて君の性格の問題だよ」
そんなことを話しながら二人はテントを建て、寝袋に入った。
言い合いはその後も続く。
「あのねハンナ、ガイドたるもの備えは常に……」
「そこまでしなくても、今日もっと早く歩いてれば夕方には着いたんだからね!」
「しょうがないでしょあたしの知的好奇心はあたしにも止められないんだから」
「それは少しぐらい我慢してよ!」
……ナヴィ。出会ったときとは本当に変わったね。あの時はただ目標のためだけに頑張ってる印象があったけど、今はこの仕事や冒険者一人ひとりに真剣に向き合ってる。もう君は立派な…。
「ハンナ?何こっち見てにやにやしてるの。気持ち悪いわよ」
「ううん。何でもないよ。さぁもう寝ようかナヴィ」
その後、二人の声は話し声からゆっくりと寝息へ変わっていった。
「ハンナ。ハンナ!朝だわ。起きなさい」
「お、おはようナヴィ」
「さぁすぐ出発するわよ!その前に朝ご飯っと」
「どこまで用意周到なんだい……」
二人は出発してから数分で昨日諦めた場所まで到達した。
門の前にもしっかりと橋が架けられており、二人はその橋の中心から門を見つめる。
「改めてみるとほんとにでかいわね。この門も橋も壁も。そして……」
そんなことを言いながら門を潜り抜ける。
「王都。で。でかすぎませんか」
「まぁこの世界の中心だからねー。僕も中に入るのは久しぶりだな。本当にいつみても大きな街だね」
「ねぇいろんなお店見て回っていいのかしら!?」
目を煌めかせながらハンナを見る。
「僕も魔法適正を見てくれるお店がどこにあるのかわからないからまずは探索ってところかな」
「そしたら自由時間にしましょ。お互いみたいもの見たらまたこの場所に集合しましょ」
「うんわかった。あんまり遠くまで行っちゃだめだからねナヴィ!」
「分かってる分かってる。それじゃ、一時間後ね!」
「はーい。ってもう行っちゃったし。さて。じゃあ色々見て回りますか」
二人はそれぞれ街を探索し始めた。
ナヴィはある大行列ができている小さな店を見つけた。
「うわっすっごい。あたし達の店の調子がいい時と同じくらい並んでいるわ」
んー、人だかりがすごすぎて看板が見えない。
ぴょんぴょん跳んでいるナヴィに一人の男が声を掛けた。
「そこの綺麗なお姉さん。こんなところで何をしているんだい」
背中に大剣。冒険者様かしら。
「すみません。あまりの大行列だったので、このお店が何のお店か気になっちゃって。」
「なるほどね。ん、お姉さんその胸のタトゥー。もしかして『ガイド』かい?」
「あ、そうです。ご存じなんですか?」
「あーそしたらここはお姉さんと同種のお店だよ」
ふふっと男は笑った。
「え、ここって情報屋か何かですか?」
「その通りさ!しかもな。ここには最近腕がよくてブイブイいわせてるやつがいるんだぜ」
「あ、そういえばお姉さん『ガイド』なのにずいぶん若いね。歳は?」
「レディーに歳を聞くなんて。まぁいいです。二十歳ですけど……それが何か?」
「お、その年でもう『ガイド』か。お姉さんもなかなかやるね。でもな」
そういうと店の方を真顔で親指を指す。
「ここにいる奴はもっとすげえ」
ナヴィは一瞬固まる。
「どういうことですか?」
「ここにはいるぜ。二十一歳で『上級ガイド』になった天才が」
この日あたしはハンナがなぜあたしを王都に連れてきたのかを知ることになる。
最後までご覧いただきありがとうございました!
第二章 第四話 いかがだったでしょうか。
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次回、ついに同種のライバル登場!?




