イツワルツイ
寒くてパルデア地方に出張してました
後書き設定書き忘れたので年明けに追加(1/21)
城壁からの飛び降りの衝撃をリヒャルドの腕で吸収して着地する。カランカランとハンドベルを鳴らして周囲を確認し一息つく。
「いや~逃げ仰せましたね。でここからどうするんですか?王国?それとも双子の所に観戦に行きますか?」
「いやいや、一回はぐるりと逃げ回るにゃ~」
「では、早速逃げましょうか!」
「ん~、その前にすることがあるのにゃ~」
「え?何かすることがあるんですか?」
実況ちゃんが入っているリヒャルドの骨の檻を変化させ、四本の腕を生やすと地面と城壁に食い込ませて俺との連結を外す。
「あ、あれ?バイブスマスク、私を置いていくんですか?」
「そうだにゃ~。ここから先は建物や住人が居ないからブロワー達の本領発揮してくるのにゃ~」
「で、でも私に配慮しなくてもブロワーですから死んでも「君はブロワーじゃないのにゃ~」━━え?」
ブロワーとして実況席に呼ばれていた彼女は、なななんとブロワーではなかったのにゃ~!!
と、心の中でも語尾をつけておどける。実際、アイテム袋を持ってない状態の彼女が死ぬことを恐れていたり、俺が渡すまでブロワーなら持っているはずの場所からアイテムを取り出さなかったり。それに1度も技文字を出す素振りをしていない。
「アイテム袋を持ってないし、持っていないにしても出す素振りもしない。実況ちゃん、君はストレージを持っているのかにゃ~?」
「持っているに決まっ……て……」
「HP0になんで恐怖を覚えてたのにゃ~?」
「そ、それは実況が……」
「ならなんで自分の足で動かなかったのにゃ~?」
「それは貴方に捕まってて……」
「それじゃあなんで技文字を一回も使おうとしなかったのにゃ~?」
「そ、それは……」
俺らと同じブロワーなら実況としてそれ用の特化をしてるはずなのに、映像の目を潰してからただ吊られてるだけでなにもしていないのは可笑しい。聖都の映像設備に繋げられないにしても配信を映し出す技文字が創れない訳がない。なのに呑気に俺に連れ回され、トリックアートにした鑑定。【偽倣の左手】がそれに反応しなかった事からスキルの物だとわかった。
「ブロワーが必要に駆られても、レベルの低いスキルの【鑑定】なんて持ってても使うわけないのにゃ~。トリックアート“だけ”判明する程度なら自前で作成した方が弱くても詳しいのにゃ~」
「━━━━ッ!」
べろべろべと舌を出して煽ると実況ちゃんは何も言えなく、顔の表情をひきつらせ━━表情が無くなる。
「あーあ、バレちゃってたか。もう少し近くで観察してたかったのになぁ。けらけらけら」
「うわお、笑い声を声に出してる奴とかひっさしぶりに見たのにゃ~」
手を使い無理矢理笑い顔にして声を出す“誰か”を観察しながらも周囲をハンドベルの音で確認しておく。
「そうだね。こっちも観察したからわかったけど、久し振りだね『屋台骨』」
「……えっ、まさか『自作自演』かお前!?」
「キリンから何年ぶりかな?君、たしか実績全解除したから飽きたって言って……もう十数年だったかな。けらけらけら」
オンラインバトルゲーム『レジェンドジラフ』。全年齢の様々なフィールドで行われる生き残りを賭けたゲームで、デフォルトされた可愛い動物アバターによって行われるある意味弱肉強食をモデルにしている。
と、見せかけた殺し屋ゲーム。あくまで表向きはほのぼの系の皮を被ったバトル・ロワイアルゲームなのだが、以前説明した様に最初にプレイするときにアンケートを行い、その脳波を読み取った結果により分けられた別サーバ先の暗殺バトルゲーム━━通称『キリング・フィールド』で行われていた殺伐とした殺し屋同士の殺し合い、標的の奪い合いでの知り合いの一人が『自作自演』。そして目の前の奴がそれらしい。だったら尚更警戒を高めなければならない。
「お前とわかってたらここまで連れ回さなかったし、こんなちんけな拘束をしなかったんだがなぁおい!」
「それがバレないようにちゃんと実況の中から選んだからね。あ、それとこの子の精神は無事だから」
ガチャガチャとリヒャルドの腕を更に呼び出し囲いを強力にしていく。
あの頃のプレイヤー名は『セルフアート』。プレイヤー全員に付属されるコードネーム『カメレオン』以外に殺し屋ランク上位に送られるコードネームを持っている一人。説明臭いがその上位の人物故に腕の方もあり、限られたステージ内での人間関係を使って起こさせそれを解決、口止めに犯人も殺すのでプレイヤー間で付いたあだ名が『自作自演』。
だがそれだけに留まらず、標的がプレイヤーの場合の対人戦での強さも持っていた。
「今回はどんな茶番を仕込んだんだ」
「仕込んだなんてそんなそんな。ただ、双子に武器と動機をあげて、そんな中動く君を見たかったからだよ」
「ちっ、相変わらずだな」
「でも君とわかったならもう良いかな」
喉奥に指を入れると『自作自演』は何かを吐き出した。複数あるそれを掴むと先をこちらに向けて付いている紐を引っ張る。紐が外れると自走する花火の様にあちらこちらへ発射された。
「……しかし……技文字……便利……ね。……実では……な拡張……できるか……」
「お、おい。何をしたお前!」
「合図……」
電池切れのオモチャの様に途切れ途切れの言葉を吐き終わると、動力が切れたオモチャの様に体が横に倒れた。中身はアイツだが外身が一般人だから叩き斬ってやることが出来なかったから一手遅れた。
地面から槍が突き出され手足を貫かれた。さすがにベルだけで地中の探知は出来ないから反応出来なかった。
「ドゥルルルルフ、見つけたぞ。これで報酬は俺のものだ」
「なにその笑い方。自分で考えたの?ゆでたまごでもキめたの?」
「う、うるせぇ!お前の面もコレクションに加えてやる!」
地面から現れたドリルが付いたマスクに両手にドリル、全身ドリルコーデの世紀末風の男が両手のドリルを構え、一本の矢のように飛び俺のマスクを剥ぎ飛ばす。
「ドゥルルルルフフッ、こんな簡単にやれる相手だったとは手こずっていた奴らは何をしていたのか」
「ぐぁぁぁ、俺の顔が……顔、が……」
「ふん、体には用はねえからさっさと粉微塵にしてやる」
両手で顔を押さえふらつきながら近寄っていく俺に対し、余裕と言う風に歩いて近づくドリルマン。
「顔……顔……」
「喰らえ【掻き混ぜる━━な!?て、テメェ!」
「顔……フェイス……俺の……」
油断して振り上げた腕と逆の手を掴む。力ずくで逃げ出そうと体を揺すったり足掻いたりしているが、リヒャルドの手をも使い拘束し簡単には外せない。そして既に俺の、いやゴミ野郎の必殺技の範囲内である。
「フェ~イス…………破顔!!」
「う、動けねえ!お前な、なんだその顔……いや体は!?誰だお前ぇぇぇ!」
「顔、顔、顔!俺の顔はぁぁぁぁあ!『颪鐘』!」
ガバッとドリルマンに向けた顔は面の皮を剥がして貼り付け直した様になっており、その顔に視線を向けられた一瞬で体型を逆三角形、チョモランマなバルクを持つズボンをサスペンダーで吊ったマッチョガイへ変わる。そしてそのまま頭を掴み地面に叩き付ける。そしてドリルマンの顔面を地面に付けたまま引き摺り壁へ。更にそのまま100mほど走り、ドリルマンの足に掴み変えると中空へ飛び城壁と地面を二辺に、ドリルマンを振り回す残像を斜辺にし執拗に顔面を削り回す。
「まったく、顔を狙われたからつい殺ってしまったが、フェイス破顔は扱いづらいキャラなんだがな」
赤い二本線の先に首から下だけになったドリルマンが光に還ったのを見送ると、壊れた物と同じ仮面を被り直して周囲を見回す。おっと、ちょっと時間かけすぎたかな?花火もあったし。
リヒャルドを召喚して第4形態に登録された完成形のバイク形態に乗り走り去る。
「こちら偵察班、目標はバイクに乗って逃走。ってバイク創れるんだ!?」
『了解、方向を伝えてくれ。待ち伏せする』
━━
「って、言ってからだいたい見えてくる時間なんだが……」
高くそびえる中世に似つかわしくない鉄の巨人の肩から遠くを眺める一人の、なにやらヒーロースーツとは別のピッチリとしたタイツスーツを来たブロワーが待ち伏せをしている。
「おっ、砂煙が見えて……………ん?なんか多くねえか?」
一人だけが向かってきているはずなのだが、それにしては大きい砂煙が巨人に向かってやって来ている。
「って、準備しねえと!」
ブロワーが巨人に乗り込むとコックピットに光が灯り、集音装置や望遠装置が働き始め向かってきている物の情報が入ってくる。
「さーて、この俺が━━ってなんだぁ!?」
『ふはははは!いきがりやがってもその程度か!この俺のファーストティー・フロッグカスタムの走りに付いて来れねえ奴はさっさと脱落しな!』
『くそっ、ポピュラーバショーじゃ奴のマシンに追い付けないのか……』
『諦めるな!』
『お、お前は!?』
『やっぱりこの俺がいなけりゃダメみたいだな!』
『き、貴様のアシストスカイは壊れた筈じゃ……』
『残念だったな。おい、こいつを使え!』
『こ、こいつはモガミリヴァーのパーツ。いいのか?』
「バイクじゃなくて俳句に乗ってるうううう!!」
エイジェン━━レジェンドジラフ溢れ話
¶¶
|◎フ <ジャンル:パーティバトル・ロワイアル
|.| または:SLGバトル・ロワイアル
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表向きはデフォルトされた可愛い動物アバターを操り障害物を越えたり、落ちないように立ち回ったり等の様々なステージをクリアして最後の一人になる。そんな様子が公式の広告やデモなどに使われている。
そして通常プレイヤーは困惑するが最後の一人、勝者に送られるのがレジェンドジラフの称号。なぜ伝説のキリンなのかは通常プレイヤーの謎となっている。
そして表向きがあるなら裏向きもある。
このゲームは最初にプレイするときにアンケートを行い、その脳波を読み取った結果により振り分けられる場所が変わって、別サーバ先の暗殺バトルゲームへと送られる。
アンケートが終わった瞬間目の前が細かい光が漏れる暗闇に変わり、手足が動かないまま車で運ばれる所からムービーが始まる。裏プレイヤーはスキンヘッドで顔無しのアバターに変わり、『カメレオン』のコードネームで呼ばれるようになり、暗殺任務をいくらか達成すれば顔と名前を返すと言われ何処かの部屋に投げ捨てられる。その後チュートリアルとして拘束からの脱出。連絡役のバー、底辺の情報屋、表家業で隠した武器屋、そしてお粗末な暗殺を終えてようやくログアウトが出来るようになる。ログアウト後に困惑してしなくなるプレイヤーもいる。
暗殺のターゲットは権力者、金持ち、一般人、貧乏人、同業者、プレイヤー様々。メインターゲット報酬の他にPK、ストーリー、シチュエーションなどの報酬もある。
プレイヤー間のランキングで上位になると動物の名前の二つ名が与えられる。上位を外れても別のプレイヤーにその動物が行くわけではないので上位に戻れば戻ってくる。その他にキリンの三つ目のコードネームを持つ同業者かプレイヤーを殺すと受け継がれる。基本的に持っている事を知られる事はなく、報酬のポイントが倍増するメリットが、そのプレイヤーを殺すと報酬以上の多大なポイントを取られるデメリットがある。
つまりキリンになってポイントを増やすかキリンとバレて狩られるか、地道に増やすかのゲーム。製作者曰く、殺し屋育成ゲーム。
それ故に内部での通称がジラフから取ってキリング・フィールドで略称がキリン。
P.S.
フェイス・破顔
デストロイトシティズのキャラクター
ストーリーはラスボスに市長の座と面の皮を取られたその数年後から始まる。
最初は下水道に住み着いていた科学者により命を取り留めたが記憶喪失の上、科学者に洗脳され言われるままに2戦、その後に愛娘が襲われている所を目撃し自身を取り戻して博士に反逆、そしてラスボスが居る場所へ行くための妨害を排除してラスボスを倒し愛する家族と街を取り戻すストーリー。
顔には自分の面の皮を適当に縫い留められ、様々な薬品により膨れ上がった筋肉にサスペンダーが添う。
元々は正々堂々を心掛けたパワーファイターだったが、記憶喪失中に残虐行為が染み付き顔を執拗に攻撃する様になった。
絶死大技は洗脳の後遺症の暴走状態になって相手を掴み壁に押し付け走り、ジャイアントスイングで様々な所に叩き付け、最後にローリングパイルドライバーで顔を執拗に磨り潰す。
失敗は暴走故に対象を捉えられず自爆自傷し続ける。




