ミズバトコウテイ
[教国ダンジョン内部:不明2]
高熱環境部屋の戦いから過ぎること十数分後、観客席から見るに一番少なかった砂時計が落ちきった瞬間、閉ざされていた扉が勝手に開き始めた。それと同時に開いた隙間から水が、塞き止められていた物が開かれたそのままの様相で向こう側から砂時計の柱がある部屋の床の上を沈めていく。
待機していたブロワー連中は脛の半分まで一気に上がった水深の中、水を吸って重くなった足装備に加え増えた抵抗に難儀しながら部屋の中へ入る。部屋の中は見えない上空から水が闘技場より少し短い外周の壁に沿って落ちつつも、その部分は深くなっているのか部屋に付属している効力なのか弾けて出来る霧が無く、部屋全体を見渡せるほどに視界が確保されている。そして冠水している部屋の床からアーチ状に何本もの水流がランダムに飛び出している。
「ようこそいらっしゃいました。えっと、皆様、否応無くこの場所とワタシの姿を見て、ああこれがモチーフなのかと理解することでしょうから最初から名乗らせていただきます。アリエナ・インディーネと申します」
そう言って名乗ったアリエナの姿は下半身が人魚姫のように魚の胴体と尾鰭になっていて、現代美少女系漫画風の耳辺りが綺麗な鰭になっている、流石に貝殻ビキニではなくチェストプレートを装備した女性ブロワーが大きな水柱の上に鎮座して挑戦者を迎え入れた。
そして、一団に顔を向けると、顔をしかめ腕を軽く振るう。
「【爆水噴乱柱】」
技文字を発動した瞬間、一部のブロワー足下の水が噴き上がり見えない上空に吹き飛ばされた。その数は半数にも満たないが戦力が即座に減ったことには変わりなく、ブロワー達に動揺が走る。
「はぁ~、スッキリしました。やはり男は邪魔ですわね」
彼女の言った邪魔と言う言葉通り、打ち上げられたブロワーは全て男性アバターのみ。女性アバターのブロワーは誰一人欠けてない。
一仕事終えたといった顔をしているアリエナの背後から足装備を外した全身甲冑だったブロワーが斬りかかったが、手を掲げた瞬間座っていた水柱の一部が流動して剣を受け止める。
「なんで行きなり男性アバターのみ排除をしたか聞いても?」
「それはですねこの世界ですと顔が整っているから大丈夫かなと思ったんですけど、やっぱり男の姿が嫌いらしいです私」
「なるほど。排斥系か貴様」
「ですので、皆様もう少し薄着になってもらえると助かります」
振り返って指を弾くと防いでいた水から針が飛び、甲冑のブロワーが勢いに押されフィールドに着地する。それを狙い彼女の両側から波が挟み込みように現れるが、侍と盾士のブロワーが間入り防ぐことで彼女を守る。それと同時に数人の弓使いが後ろを向いているアリエナを狙うが腕を動かしただけで現れた水の壁に阻まれる。
「まあまあ!お水を噴かれる技術がとても素晴らしいですね。私も体が濡れそぼって、動きづらいですわ」
「この連携、あなたが動かしてるみたいですね」
「そうです。貴方の様な特化した方ですと、見渡した限り一人で対抗出来そうな屈強な方は最初に落とされてしまいましたから、体の相性を探りつつ気持ち良く合わせる事が出来るように致しました」
「厄介な人を残してしまったわね。でも、貴女に対して比重を傾ければいいだけの話です。とても良い装備ですので壊してしまうのが勿体ないですが、思いっきり行かせて貰います」
アリエナが両手を振るうと彼女の周辺及び部屋の縁からたくさんの水の触手が現れ、先端には様々な武器の形状をしており殺傷力は充分に備えていることが見てとれる。
「更に【水棲模倣】、【水球転動星】、そして【硬質水芸演舞】。遊び心満載だけど遊びは無いから気を付けて下さい」
「あらあら、そんなに激しく求められイカされるのも嫌いではないのですが、もっとゆっくりとねぶるように行うことも私好ましく感じますわ」
水棲生物を模した水や星の周りを回っている衛星の様な水球が追加され、残ったブロワーの数より更に増えた攻撃に周囲はたじろいでいる。
「……と言っても、此方がスローペースで良いのかも知れませんが、アラバスターが仰っていた事が気になります。迷宮がこんなに激しくマワされている異常事態ですし、外がどうなっているか此方からでは分かりませんので」
オルキンティがポンと手を叩くと一段と激しく用意されていた水による攻撃が次々と打ち落とされる。そして武器に付いた水を払い落としたウテルスが氷系技の文字を呟くと周囲が凍結、水の攻撃が激しさを落とす。
「【富安婬闘鼓舞】。皆様方、頑張って下さいませー!!」
部屋内の味方ブロワーに強化が行き渡りチームで水を破壊していく。
しかし、水を破壊したところで無くなるわけもなく、それぞれ対応するがアリエナの一振で次々と新しく追加される。
「貴女達が頑張ろうとも、地の利が此方にある私の方が有利には変わりないです!」
「地の利か。それはどうかな?【水流突撃】」
「お、男の声!?」
その言葉が聞こえた瞬間に自分の周りに水を集めて壁を作ったアリエナだが、その壁を突き抜けて小さな黒い影が胴体に当たり跳んでいく。
「おっと、男性が嫌いみたいだが多めに見てくれお嬢さん。僕の名前は」
その影が着地した瞬間を狙い攻撃を加えたが小さな影は効かないとばかりに触手の中を通り、ステージギミックの間欠泉に乗り上げる。
その影の姿がはっきりとし、黒と白のツートンカラーが特徴的な、頭に飾り羽根を付けた鳥の姿だった。
「エンペラーノ・ペンギン。見ての通りのキングペンギンだ」
「……イワトビペンギンですが?」
「この飾り羽根はアクセだ。敏捷が10%増えるのだよ」
フリッパーで頭を撫でると飾り羽根が跳ねる。そんなやり取りの中でも他ブロワーからの攻撃を捌くが、連携されたスキルの効果で凍っていく水。それを直ぐにステージ端に落とし使用できる水をしっかり確保する様子はその戦術に対して対応できると言う証拠である。
「素晴らしい対応力です。私の【戦術四十八手】はまだ手があると仰っていますので激しくイカさせて貰いますわ!」
「やってやろうじゃないの!雇われ分しか働こうと思ってなかったけど、こっちも全力で行きます!」
氷結や蒸発して足場と攻撃範囲を減らしたブロワーが数個の纏まりになり、オルキンティの号令で一対多━━いや一帯対多の戦闘が本格的に始まった。
エイジェンマ・フラグメント溢れ話
」]
|◎フ <環境型ダンジョンについて
それぞれの国の首都にあるダンジョンはそれぞれ特色を持っていて
王国:連携特化訓練用、多人数運用群れ型、又は、大型モンスター
帝国:個人特化修行用、個人鍛練用小~中型モンスター
教国:環境特化修練用、環境適応型の小~中型モンスター
首長国:技術特化鍛練用、ギミック型小~大型モンスター
となっていてそれぞれの纏め役が決めて運用している。それぞれそのダンジョンでレベル上げをしているために国もその特色の影響を受けている。
またそのダンジョンでのルールも決まっているのでキチンと確認してないと初見で死ぬ。
P.S.
アリエナ・インディーネ
人魚型アバターで一応二本足になれる。
男性嫌いで現実では直ぐに手が出てしまう性格なので女性専用の所に引きこもり在宅ワークをしている。
通常時が人魚なのと関わってくる協会関係者の男性を吹き飛ばしてたから指名手配された。
エンペラーノ・ペンギン
キングペンギン型アバターで、ちょっとした人気者。
お金を払い人形に扮して抱えてもらっていたので脱落から免れた。




