マツリヤタイサイ
最近は街をブラつくと隣に誰かいたから一人で回るとなると寂しげが……まあ、ないな。複数人プレイ専用のゲームを一人でRTA繰り返してたからそこら辺はバカになってるし。まあ、厳密には会話できる誰かが居ないだけだけど。
「という事で今日は教国の聖誕祭に来てるのにゃ~。さて、あそこにある射的屋を冷やかすのにゃ~」
依頼料で交換して貰った旧型射影機片手に屋台に向かう。旧型と付くがこれは世代移行の薄型化に伴い廃れたから倉庫で埃を被っていた物だ。それでも映像の荒さを除けば録画容量もデカイし音もノイズが少ない。
「へーい、にっこり笑うにゃ~」
パシャっと写真を取ればブロワーのスクショ機能に連動して保存され、こちらの機器だからかそのスクショを相手に直ぐ様渡すことができる。その上こちらにはデータが残らないアナログ式なので肖像権に対してバッチリだ。
「へーい、へーい。っと、ありゃオルさんとウテルさんでねえか。久しぶりべにゃ~」
「お久しぶりですアラバスター。相変わらずの変人ですね」
「こちらにいらっしゃると言うことは騎士様との逢瀬は終わりましたのね」
「終わったのにゃ~。まあ、あの騎士様が超優秀だったってのもあるのにゃ~」
「まあ、とてもお強い方でしたの」
「そりゃもう中堅までのブロワーなら軽く叩き潰せるほどなのにゃ~」
フェリックスの実力としてはウソでもないが本当でもない。中堅ブロワーの塊を百数十単位までならあの重力の力で物理的に潰してたし、あれ以上の実力を隠してるからどこまで強いのか知らないし。
しかし、依然あった時から幾らか時間が経っているのだが、オルさんの装備のデザインが露出大な青少年に目の毒に成りそうな鎧とデザインが同じながらも性能が上がっているメイド服のウテルさんに脱帽する。
あ、俺?初期装備に似たデザイン、柄違いの半裸装備ですけどなにか?
「そう言えば、あの時一緒にいたワニの奴はどうした」
「そうですわ。今はご一緒ではないのですの?」
屋台巡りをしながら街行く人々にサービスで写真を提供しているとそう聞かれた。ワニちゃんは今教国周辺の魔物を味わっていて、御前試合まで全部の種類を食べると息巻いていた。
「と言っても御前試合は明日だから全部は無理だろうにゃ~」
「一人で納得してないで説明をしろ」
「【報連相】だにゃ~」
「まあ、それって間に合いますの?」
「試合内容に大食いがあったからからならず戻ってくると思うのにゃ~」
スキルの【報連相】で簡単に伝えると、デスペナを気にしてかワニちゃんを心配している様子だが、ここら辺でワニちゃんの堅さを越える魔物なんていないから試合が始まる前には帰って来るだろう。
「そう言えば私も御前試合に出ますの。確か競技は沢山の逞しい人達が大事な所を攻め立てて、無理矢理襲うと言った……」
「お嬢様と私は攻城戦に出場する。対人戦は普段から出来ますが、城攻めや籠城などはこう言った機会が無ければあまり巡り合うこともないからな」
「うーむ、そうだにゃ~。前の帝国と王国の戦争は戦争って名前のじゃれ合いだったから、本格的な拠点の攻め合いは無かったのにゃ~」
「そうだ。アラバスターさんも攻城戦に出ませんか?貴方の能力なら皆さんも満足出来そうです」
「お言葉は嬉しいけどそれはお断りするのにゃ~。わちきの戦闘スタイルはあんまり大衆受けしないのにゃ~」
「ですが」
「お嬢様。断られたのなら潔く引きましょう。アラバスターの考えもあります」
「……そうですか。とても楽しくなりそうでしたのに」
残念そうにするオルさんを横目に、ハンドベルをカランと鳴らすと別の場所で一人のブロワーが転ぶ。そしてその周囲にアイテムが散乱すると、周囲の人達がその様子に驚き散乱したアイテムを拾いだす。
「あら、どうしたのかしら?」
「ただのスリ師のこそ泥にゃ~」
「そうか。ならいいが、お前はさっきから何をしているんだ?」
「スキルと技文字の試用にゃ~。いざと言うときに使える奴だから、その準備に恩を売り中なのにゃ~。はい、お一つどーぞにゃ~」
スッと先ほどの騒ぎのなかでこっそり買ったチョコバナナの見た目をした軽食を渡す。
「あっ、スゴい……。黒くて太くて、とても暖かいです。んっ……、大きくてお口が疲れてしまいます」
「なるほど、そして私達にも恩を売ると。その性質から詐欺師、商人系統スキルの【損得勘定】、【貸借契約】辺りですか」
「そっ、だからあまりあっしのスタイルは見世物に向かないのにゃ~。まあ、この程度の貸し借り程度でできることはカスダメの肩代わりくらいにゃ~」
気持ち程度の貸し借りじゃ効力は弱いし、大々的な物になると相手が構えてちゃんとした物にならないから商人の大口契約の時にしかあまり使われることの無いスキル。その利用法が俺にはあるのでカス貸しを増やしている所だ。まあ、俺の方も借りを作ってしまったりしているが、いつか貸しに出来るだろう。
そんな会話の途中に渡した食べ物に大口を開けずに少しずつ頬張るオルさんと正反対に一口で半分ほどを噛みちぎるウテルさん。俺の制限版レーダーでは同じ女子校に通っていたと示すが、正反対だと一緒にプレイするほど仲良くなるのか?
屋台をブラつき終わり二人と別れたところで、路地裏掃除をしてからログアウトした。ちっ、しけた奴らだったぜ。




