ケンカシクワナ
途中、道草を食べていて脇道に逸れていたのでちょっとだけ時間がかかってしまいましたが、アラバスターのいる場所にやってこられました。
「えっと……、いまどういう状況なんですか?」
ワニトロスの口から這い出ながら畳の上で卓袱台を囲んでゆっくりしているロゥリコンとメリーに話しかけます。卓袱台の上に乗っている焼き菓子に目を取られてしまいますが、中央で敵っぽい人とギャグアニメの様な砂煙の中で手足や頭をちょこちょこ見せながら喧嘩をしているアラバスターの状況に首を傾げます。
「ん?ああ、到着したかワニベロス。いやぁ、ワシらが来たときは和やかに談笑していたのだがな、お茶請けにアラバスターが作ったこれを出してから喧嘩が始まったわけだ。まあ、あの様子だとジャレ合っているだけだろうがな」
「そうなんですか。と言うことは名称についてですか」
「そうなんです。お互いに呼び方に愛着がある様にしてからの喧嘩です。遊んでいるのでしょう」
お茶請けにと言うことなら出ている焼き菓子、円柱形であんこやクリームなどを中に入れて生地で焼き上げるポピュラーなお菓子です。と言いますか、パン屋のアラバスターが作れる物の種類多くないですか?もしかして小麦粉使って焼いてたら全てパンとか言い出しませんよね?
「それにしても普通に美味しいな。アイツのリアルは回転焼きが実家とかか?」
「そうですね。この満月普通にお店で出せる味ですし」
「そう言えば料理系スキル持っていないのにこの味って凄いですよね」
「えっ!?アイツ料理スキル持ってないのにこんなこと出来るのか!」
「みたいですよ?試しに作ってみたらスキルいらない出来上がりだったらしくて、料理系技能書は全部売ってますよ。需要が有るみたいでかなりお金になるとか」
「マジでなんなんだアイツ。最初合ったときはレベル0だったのに。適合者かよ」
「いやいや、錬金術ギルドと魔術ギルド、薬草に調理、狩人、商人等のギルドを期間内に最低限協力し合う関係上にするために必須スキル(リアル)がメキメキ上昇したのが目に見えたのにゃ~。一回二倍速半日による174回の世界線の果てにノーマルEND、3079回の果てにトゥルーEND。ハッピーENDは実況動画視聴だったのにゃ~」
あ、アラバスターが会話に混ざってきました。その隣にはたぶん喧嘩していた人がいます。……あれ?じゃあ
あそこの土煙の中で手足が出ているのはいつもの幻ですか?
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いやぁ~、『鍛穂こ』のパンアイテムは使用期限無いからいつでも使える上に倉庫は無限収納。リアルスキル求めるのにここは雑なんだよな。
それで、とりあえずNPCの思考的に各個人の好みパンを村人、ペット、職人、商人にランダムで訪れる冒険者などにある一定の順番でパンを叩き付けて行けば好感度と関係改善クエストが発生する。だから最初の一ヵ月はパンを作り続けて本来の鍛冶も何もかも無視して平均評価、多種多様なカンストスタックの大量のパンが鍛冶小屋の倉庫を圧迫するという状況を起こして二ヵ月目の開始から各家庭、ギルド、商店、ペットに至るまで顔面にパンを叩き付けることを開始してたのはいい思い出だ。
だけどランダムで訪れる冒険者の中にいる重要NPCの好みのパンがバックストーリーから低評価パンだったことはこの鶴城の目をもってしても見抜けなかったよ……。
「え?それってあのクソゲーの話じゃないよな?」
「え~、どうだったかにゃ~。その時は腐るほど時間あったからのめり込んでたけどにゃ~」
「えっと、お二人が思い浮かべている物が何かわかりませんが、技術が習得できるなら素晴らしいものなのでは?」
「実況を見るのはいいけどプレイするのはお勧めしないぞ。プレイしていた友人が日に日に痩せ細っていくのを見てて、小声で怨嗟呟いてたからな。あれは完璧に予習してかかるか、技術習得専用に使うくらいでやめとけ。目標をセンターに入れるだけで済まなくなろんだからな」
「そうだにゃ~。あんなのクリアする方がイかれてるのにゃ~」
「えっ?でもアラバスターはクリアしたんですよね?」
「イかれてない奴がにゃ~にゃ~喋る成人男性してるわけないにゃ~」
全員がなるほどと言う顔を一瞬だけしたが、改めて脇の知らない顔に視線を向けた。先ほどまで喧嘩していたエルビスが用意した菓子を食べている。
「消息不明になっていたのはお前だったかエルビス」
「あ、クラマスち~っSU。いやぁ、お金稼ぎで遊び歩いてたらいつの間にか借金をしてしまってNA。それでどうこうしてたらあのロリ超乳の敵に雇われたってわKE」
「借金の踏み倒しが出来るって事かよ。まあ、ワシらが来たことで出来なくなった訳だが」
「いやいや、こっちの頭はそれも想定済みDA。今頃制圧部隊が100人程で突撃しているはずだYO」
「マジか。ん~……、おいアラバスターあの使者の騎士はどのくらい強いんだ?」
「ん?ああ、フェリックスならたぶんそのくらい一捻りにゃ~」
「そんなわけねーだRO。カンスト勢100人がヒューマリアンの騎士一人に負けるわけがないだRO」
「まあ、普通の騎士だったらその勢力じゃ焼石に水だろうけど、普通の騎士じゃあないからにゃ~」
「な!?どういうことDA!」
ポンポンポンと大回転を消費するワニちゃんのペースで焼き上げる最中にフェリックスの装備を思い出す。まあ、あの人なら大丈夫すぎるな。
「ところでワニちゃんはコレなんて呼ぶのにゃ~?」
「え?コレですか?」
「クラマスは「回転焼き」そっちのお嬢さんは「満月ですね」でこの嘘つきが「大回転にゃ~」で坊っちゃんはなんて呼ぶんだ?」
「えっとですね……」
ワニベロスは積んでいた焼き菓子の最後の一個を飲み込と、
「錦焼き「月餅ガシュガシュ「サークルベイクザシュザシュ」」ですかね」
「ふむふむ……って、なんでやねーん!そのパペットもワニベロスだろう。それでいて分かれるのか?」
「うーん、三者三様じゃなくて五者五様な感じだNA」
「いやぁ~、文化圏の拡大は凄いにゃ~」
「そう言えば皆様、依頼の方は行わないのですか?」
呼び名の多さに感心しながら団欒しているとメリーが切り出してきた。と言うか交渉したからあとこのエルビスが投降すれば終わりなんだよな。
「んまあ、じゃあワニちゃん」
「はい!」
「どうぞにゃ~」
「え?」
「はい!!【補食攻撃】!」
一瞬の会話にて自分が食べられるとは思ってもいなかったエルビスは上半身を食い千切られ消えた。
これで依頼完了だな!よし!




