カミカミガミガミ
[レヌネア国 坑道ダンジョン第二出入口]
「あれ?今揺れませんでした?」
「おお、揺れたなガシュガシュ」
「はい、揺れましたねザシュザシュ」
アラバスターと別れ別の入り口を探していた僕たちは、正面の入り口の他に二つの入り口を見つけました。1つは二人が横並びで入れるので、もう1つは潜って通らないと行けない大きさの物です。ロゥリコンさんが言うには二手に別れて入りたいって言いましたから、小さい方を小柄な僕が行くことになり這いずって侵入中です。
「中に入ると小柄な大人一人くらい通れそうだなガシュガシュ」
「もしかして女性と一緒に居たいから坊ちゃんをこちらに行かせたのではザシュザシュ」
「それは無いですね。アラバスターが言うには名前の通りのロリコン紳士さんらしいですから。ネットで良く聞くYESロリータNOタッチを掲げているおかしな人だと思いますよ」
もぞもぞ這っているから進みが遅いみたいで中々出口に着かない。
「そうだ!ワニトロスを召喚して潜っていけば良いんだ!」
「そうだったそうだった。こんなめんどくさい匍匐で進む必要はねえもんなガシュガシュ」
「そうですよね。こんな狭く暗い場所なんて早く出ましょうザシュザシュ」
パペットを外して目の前に投げると、ワニパペットが次第に大きくなり巨大なワニがみっちりと通路に詰まってしまっている。でも、その次の瞬間にはワニトロスの身体が地面に沈み込んでいきます。
「ライドオン、って言った方が良いってアラバスター言ってましたよね?」
「あの人の言葉は3割位で聞き流していたんほうがいいですよザシュザシュ」
ぐるっと回ってきたワニトロスが口を大きく開けて僕を飲み込むと、視界が共有され身体の操縦も僕に変わる。そこからはスイスイ泳ぐように地中を進んで行き、出口の光を見つけると速度を上げて飛び出します。
「到ちゃ~ぁいたぁっ!?」
通路の出口から出た瞬間に背中に鈍い痛みを感じました。敵がいるかもと注意を受けていましたが、僕の防御力に勝てる人はいないと考えてましたが、まさかこんな早くにダメージを入れれる人がいるとは思ってもいなかったです。しかもワニトロスの身体にしがみついてます。
「離れてくださ~い!」
ワニトロスの身体を半回転させると地面に敵を叩き付けようとしたけど、その前にワニトロスから離れて行ったのでひっくり返っただけの状態になりました。敵も離れたのでワニトロスから吐き出されて、パペットに戻しながら周囲を見渡すと一人の女性ブロワーが離れたところに腰を上げて手を地面に付けた体勢でこちらの様子を伺ってました。
「なんや、ワニ肉でも紛れ込んだと思ぉたが同業かいな。しかもへんなマズさやと思たら紛いもんやないか」
「あなたは敵ですね!攻撃特化型で僕と同じ特殊強化型!」
「ほほう、よぉ気づいたな」
「ワニトロスにこんな歯形残したら誰でも気づきますよ!」
パペットに戻したワニトロスの背にはがっつりと人間の歯形が残っていたので、僕と同じような咬合力強化型だと判断します。前にアラバスターが一部分を特段強化することで不意を突いた必殺の攻撃手段とする輩がいるって言っていました。黄金の右足しかり、幻の左しかり、のしかかり……最後のは流れで言ってたことでしたが、不意の一手は怖いものとPKを使ってわかりやすく説明してくれました。
「僕の防御力に対してダメージを与えられたのはすごいですが、それとわかってしまえば容易く避けられます。さあ行きますよ【始食】」
「久々の珍味やと思うて噛んでしまったのは間違いだったかもしれんが、噛み付きだけとは思わんこっちゃな!【噛追】」
そのブロワーは後ろに一回転するように回るとその足に付けられたトラバサミが二つ僕に向かって飛んできた。彼女の噛み付きだけ注意すればいいからあとの攻撃は防御力でどうにかなりそうだけど、拘束されるのは今の僕には難しいので弾いて対処をした。
「それでなんとかできるシロモンじゃないで!ウチのリチョウとリシュウは狙った獲物は逃さへん」
「え、曲がった!?」
弾き飛ばしたはずのトラバサミが強制的に曲がって僕をまた追いかけてくる。
「なら壊すまでです。【噛飛撃】」
「その程度で壊れるモンちゃうで【嚙大包室】」
「えっ、うわぁぁぁ!?」
「【叩き付け】からの【大回転】、そして【叩き付け】」
アラバスターの真似事をしているのに意外と硬い物を使ってます。飛んでいく代わりに威力も落ちる【噛飛撃】だけど鉄程度なら砕けるんですけどそれ以上に硬い材料のようです。
左腕と脇腹を噛まれてあちこちに叩き付けられますが、ダメージにはならないので落ち着いてトラバサミに噛み付きますが中々嚙み切ることができません。
「無駄や。見た目からウチと同じようなタイプやろうけど、そのリチョウとリシュウに使った金属はウチが全力で嚙み砕いて漸くのモンを加工してもろたんや。その程度で壊せると思わんことやな」
「そうですね、僕の素の咬合力じゃ壊せないみたいですが、これも叩き付けても僕のダメージにはなってないですよ」
「はあ!?なんやねんその防御力!」
何度か彼女が技文字を使用するが一向に服すら貫かないトラバサミ。それに対して少しもったいないけどアラバスターから分けてもらったカマキリさんの剣を二本取り出してワニトロスとワニナノカのパペットで掴む。
「今さら武器を出しても無駄やと「【食前食】」……は?」
『バキッ ゴリゴリ ボキッ ゴクン』
口を動かす毎に剣先から消えていく剣に対して気の抜けたような声を出す彼女だけど、いまはそんなことよりトラバサミのほうをどうにかする方が先。
振り回さるる度にトラバサミに繋がっている鎖が撓んで重なるタイミングで二本同時に咥えることに成功。そのまま技文字を発動させます。
「【飽食一撃】」
僕の技文字、【食前食】は直近に食べた物の力を僕に加算する能力で、【飽食一撃】は加算された能力値を使用することで使用した能力値の倍を次の攻撃に乗せることができる能力。つまり同時に食べたカマキリさんの剣二本の鋭利さと攻撃力の倍の力で鎖に噛み付いたと言うことになります。つまり。
「な、鎖も同じ素材やで!なんでそんな簡単に噛み切れるんや!」
「知らないんですか?ワニは何でも噛み切れるんですよ」
「リチョウ、リシュウ!」
彼女は鎖を操り、千切れたことで僕の身体から落ちたトラバサミを器用に回収していった。
でも、なんで意識のない物に人名をつけているんでしょう?
「……くっ、やるやないの。その顔覚えたからな。名乗りぃ」
「うーん……、そう簡単に名乗るなって言われてますから。あっ、そうか。アラバスターみたいに名前だけでいいんだ」
「何ごちゃごちゃ言うてるんや!はよ名乗らんかい!」
「そうですね。僕はワニベロス。無所属です!」
「そーかい。ウチはアンパシュガー。個人的な依頼で雇われとる」
修復スキルを持っているらしく、噛み千切った鎖がトラバサミに繋ぎ直されていて準備万端とになっていました。名乗り合いは時間風ぎだったんでしょう。ちょっと考え足りませんでしたがこの人を倒して早くアラバスターと合流するために先に進みましょう。
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[一方その頃]
「おいおい、なんで全然当たんねーんだYO!さっきのは完璧当たってただRO!」
「そんなの簡単な話だにゃ~。技文字の相性が悪いのにゃ~。いわゆる【音】だとノリが違えばヒットしないのにゃ~」
「同じ系統の技文字なのKA。なら、【弦楽器】【打楽器】【管楽器】」
「ちょ、ちょちょちょ手数増えすぎだにゃ~」




