バケノカハガレル
そうしてゴトゴト揺られ、野宿で一夜を明かした次の日に目的地のレヌネア国に辿り着く。国とは言ってもやはり連合国家の首長国なだけあって王都、帝都、聖都とは比べ物にならないくらい小さく、ある程度の港町くらいの広さ。それに加え一応の様な壁を越えると一面全てが花街、いや花とか可愛げがある表現ではなく完全にエロスの国だった。
「ここはもともととある国の━━今亡き小国の隠遁先の隠れ家の様な場所であった。そしてよくある国同士、……同士と言えば聞こえは良いが小国対大国に近い国との戦争は一方的な物だったと言う」
ピンク色のネオンが無いにしても車窓から見える景色がピンク。建物や道が区画ごとに完全に別になっていて店の格子窓から手招きしていたり、花街で有名どころの吉原だったり、騒がしい町の歌舞伎町だったり、荒廃したスラム街の様だったり、夏の田舎の田んぼ道だったり右左の車窓で異世界を行ったり来たりしている気分になる。
「そして、結果敗れ幼い血縁の子を匿った場所である。と聞こえは良いが、お前たちが訪れる五年も前の話だ。ケツァセ・ヤ首長国の5つの国の内の1つの大元となった大国だが、見ての通り大国の姿は失い小国の隠れ蓑となっていたこの地が国として残った」
「いや~、世知辛い世の中なのにゃ~」
「そしてこの国のトップである後継者の幼子の骨を抜いて国を乗っ取った者がジュリア・チャンジュアなのだ」
「最後の一文で歴史がくるったな、おい」
国主として君臨しているジュリアと言う人物の心象がブロワー間で下落した様な気がする。まあ、そんな事を言うが国のトップを骨抜きにした程度で乗っ取れる訳もなく、後継者云々より前から運営してきた者たちがどうするか等もあっただろうが、それも骨抜きにしたのだろうか。
「あやつはそれほど抜け目ないようにしている奴であり、……アラバスターはここから少し街を見てくるがよい」
「あれ?文章が繋がってない気がするけど了解にゃ~」
「あ、美味しいものお願いします!」
「ずりいぞおい!ワシも行きたい!ロリっ娘店がさっきの通りにあったあべっ!?」
煩いロゥリコンに吹き矢を放ってから走る馬車から降りる。吹き矢と言っても【波】で打ち出すから吹いて無いけど。
俺を下ろしたってことは俺以外ができないからしなくちゃいけないって事だろう。だが、情報が足りないので、
「パンパパンパン、パパンがパン」
「あんパン、食パン、カレーのパン」
「じゃがバタ、チーズ、ベェッコン」
「パン売りパン売りチンドンテン」
珍妙な格好をした分身を作り馬車が走っていた道を真っ直ぐ進み始める。目立ってなんぼのチンドン屋作戦だ。
最初は訝しげな視線を向けていたが、死んでもどうとでもなるブロワーが数人買ってからは売れ行きが上がり始めた。現実の個人店のパン屋並の普通の味だとしても、『鍛穂こ』で突発的に起こる職人勝負を全てクリアしたことがある俺にとっては一般大衆向けならいくらでも作れる。そう、大衆向けで高級嗜好でない故の手軽さと共にワニちゃんと俺しか消費しない作ったは良いが売りに出せなかった大量在庫が普通に売れていく。学校の売店レベルの価格だが、大量に売れるってことは大量にお金が入ってくるのが通り。懐が暖まったぜ。
「おにーさんっ。ここで何してるのかなっ?」
「おにーさんはサボタージュしてるのさ」
「サボってるなんてリアと一緒だねっ」
情報収集用の囮の1つ、誰もが避けるサボりの中の上美形の青年に話しかけた一人のブロワー。その容姿は異様と言うべきか、その系統の性癖を固めたかの様な姿。
そんなブロワーを見ながらパンを一つ口に運ぶ。
「あんた異様な姿だな。ロリ超乳とは恐れ入った。さすがにそれをするブロワーが居るとか聞いてねえ」
ロリ超乳が性癖の絵描き主に頼んだかの様な体型に、ドピンクから若葉色を経由して桜色へグラデーションを掛けた髪色に、『こざとへん』と『おおざと』で線対称を作った髪型に、サイズ一つ大きいシャツにオーバーオールと言う狙った服装。完璧に客を狙って揃えてきているあざとさに沸騰するほどの混沌を掛けたキャラデザに胸やけしそうなくらいだ。
「そうだね、リア以外見たことないもん。それであそこの人たちから隠れてサボっていいのかな~」
「いいんだよおにーさんは。こうやってることが仕事なんだから」
「ええ~、変なの~。じゃ~ぁ、リア一緒に良い事、……しない?そうしててもお仕事になるんでしょ?」
「そうだな。そんな甘言に惑わされてても仕事になるから大丈夫なんだけど」
「だけど?」
「さて、問題だにゃ~」
「誰もが目も向けない、気にしない、気にもかけない美形のサボり男性に声を掛けれた」
「パンはパンだけに理由はナ~ンだ」
「がっしん」
美形囮君がそのブロワーの手を掴んだと思ったら一瞬にして手錠の様に変化したかと思うと周囲の人たちから一点に視線を受ける状況へと変貌した中で、さすがに小さいが国を乗っ取ったブロワーなだけあって即座に身構え【技文字】を発動させようとしていた。
だけどその判断は十手以上遅く、【技文字】を発動させようと開いたその口にはワニちゃんの咬合力でやっと嚙み千切れるくらいの弾性と硬さを持つバケットが嵌っている。変わった風景から今まで対応して会話していた状況までの風景は話しかけられた瞬間から全て俺の幻に変わっていたのだよワトソン君。
「この方向性で合ってて良かったのにゃ~。俺が道中で降ろされるってことは誰か、何かを探すか情勢を引っ掻き回す他に必要な殺しを行えってことだろうからにゃ~。いやあ、最初の考えが外れてたら上司を待たせるところだったのにゃ~」
「もがもがもが!!」
「なんでわかったか聞かれたから応えるにゃ~。あっしの幻影はちょっと難しく作ると見える条件を指定できるのにゃ~。それに引っかかっただけなのにゃ~」
「もごもごもごっ!?」
「そうなのにゃ~。その条件はわかっている通り、国主しか見えない罠なのにゃ~」
条件はさらに緩く、この国を支配しているとか考えているや~つ的な風に設定しているから若干残像気味にチラついてい見えてた奴が何人かいた。そして俺はそれを観察できる場所で隠れて居たってわけ。
そう説明を始める前に縛り上げていたので、米俵の様に担ぎ上げると馬車が向かっていった豪勢な建物の方へ
「それでは皆様シートベルトのご確認をお願い致しますのにゃ~。これよりウチの上司行快速ライナー発射いたしますにゃ~。ジュリア・チャンジュア様、快適な旅路をにゃ~」
「むごごご~!!」
【波】系統による急発進および急発進を行い、音と同速度で空中を跳んでいく。今の俺のステでも音速の壁にぶち当たると血を見ることになるから音を置いてけない。友達だから。
そして予想外が一つ。ジュリアの腹を肩に乗せて担いでいるため、背中をバンバン叩く暴れ超乳に軽いダメージを受ける。俺のお嬢様レーダー(弱体化)の一部の数値がマイナス判定を出しているので全く嬉しいダメージではないので不愉快だったのをここに記しておく。閑話休題にゃ~。




