ウツシミテナイ
「と言う訳でこの変態が仲間になったのにゃ~」
「ちょっと待てぇ!?」
首と生き別れた胴体が椅子に座り、俺が掲げる鳥籠に入った首が批判の声を上げる。
ここは来るときにも使った馬車の中で、胴体は床に転がされている。
「なんでいきなり首を斬る必要があった!?てかなんでワシ生きてんの!」
「なんでって上司が『少し煩わしいが肉盾程度にはなる様だから大人しくさせろ』って仰ったから一番楽なほうほうを取ったのにゃ~。ちなみに」
「イテッ!?何すんだよ」
「胴体を小突いてもちゃんと反応するのにゃ~」
テーブルに置いた鳥籠の生首がやいやい言うのでカーテンをして遮音すると、改めてメンバーが揃ったのでこれから行く場所と目的の説明を始める。
皇帝陛下から預かった依頼書に書かれていたことは大体ベスティリーベ某君から言われていた通りで、属国のレネヌア国の国主ジュリア・チャンジュアの要請を叶えるために帝国が遣わせたのが俺とメリーと言う訳である。ワニちゃんは俺のバーターで変態は完全なるおおまけにまけたオマケである。
「国主ジュリアからの救援の目的はレヌネア国を度々襲撃する賊の討伐、及び財貨の奪還となっている。故にこの選抜である」
「少なくない?少なくなくない?」
「少なくはない。手紙によると百人規模の盗賊団と言うが、此度はアラバスター、ワニトロス、メリッシティアルマの三人で十分と判断した」
「あー、はいはい。ワシは蛇足ってわけだ」
なにやら卑屈な感じを出しているが演技だとバレバレなので全員が無視をする。
「まあ、さらに一人居たのは予想外だったがな」
「えっ!?もしかして見えない誰か居るの?きょわいぃ……。あっ、ところでアラバスター、話の最中ワシの方を一回も見なかったが無視か?無視なのか?」
「あ、それ僕も思いました。なんでずっとメリーさんの方を向いているのかと」
「えっ?フェリックスさんの方を向いていますよね?」
「って、あれ?ワシカーテンされてるのになんで視界が開けているんだ?」
「おやおや~?今頃それに気づくのかにゃ~?」
常日頃から【姿映し】でだまくらかしていた事が今さら発覚した。日頃色々な事を影で行っていたのだが、狭い空間で談笑していると簡単にバレるみたいだ。設定の問題かな?
「さて、妾の本当の姿はどうなっているでSHOW!!」
学芸会で使うような手持ちの鈴をしゃらしゃら、ゴムの送風部分を着けた小型のラッパを等間隔で鳴らす。いきなり手の形が歪んだ後に現れた楽器にも驚きながらもワニちゃんとメリーは真面目に考える。
「フェリックスと同じように全身鎧を着ているとか?」
「もしかして女性の姿だったりします?」
「わきゃった!!姿が見えないってことは、つまり全裸で座っている変態だな!」
「ブー。違いまーす。ぷすり」
「ぐわっ、痛ってえ!」
変な解答したロゥリコンの膝に取り出した待針を突き刺し、二人には残念賞の飴ちゃんを渡す。扱いの差に対しロゥリコンが声を荒らげるが刺したところに唐辛子の20倍のカプサイシンを持つペーストを塗り込むとフェリックスの方へ視線を向ける。
「フェリックスは何だと思うにゃ~?」
「……ふん、馬鹿らしい」
「ど~してそう思うのにゃ~?」
「どうしても何も、お前はそこに居ないではないか」
「んふふふふ……」
「「「えっ?」」」
「そこの愚か者を馬車の中に積み込んでから馬車の中に入らず屋根の上に上ったではないか」
「あ~らら、フェリックスにはバレバレだったのにゃ~」
【姿映し】には元々使っていた奴の能力程度しかないので実態を持たないが、それに加えて【偽殼欺肉】を使って幻影を受肉させて操作していた。まあ操作と言っても脳波コントロールなのである程度滑らかに動くのだ! それでもアイテムを取り出す際はダミーから出せないのでどこかの誰かに手伝ってもらって道具とかを運んでもらってたけど。
「ちなみにこの鳥籠の中身は幻を纏わせた占い用の大きなガラス玉だったりするのでぇ、首は斬れてないし動かそうときちんと脳を稼働させたら肉体は動くのにゃ~」
「マジかよ。動けワシの体!うぉぉぉぉぉ!!」
「煩いなガシュガシュ」
「黙ってザシュザシュ」
「ガリゴリガリゴリガリゴリ」
「これなに味の飴なんですか?柑橘系の匂いしますけど」
「柑橘類の香りのミルク飴にゃ~」
そこからのほほんと談笑タイムに移行して行くが、毎回フェリックスに俺の偽装がバレるから上位鑑定系スキル持っていてさらに高レベルなんだろうな。さすが帝国騎士の一人。
そして漸く体の操作を行えるようになったロゥリコンだけど、首を消していた幻を解いてないのでデュラハン状態になって暴れていたのでガラス玉を使って静かにしてもらった。なぜかガラス玉は割れてしまったので目的地に着くまで断面を手作業で磨いて時間を潰すことにする。




