シンコウホウコウイ
教国の首都である聖都セイントルス。巨大な都市の東西南北の8方向にある各入り口付近には国教の教会が必ずあって、そこに駐在する兵士が検問を担当している。
故に、
「はい、確認しました。大丈夫です。ところで十字架を着けていないようですがまだ敬う神をお決めに成られておられないのですか?それならば我がスカアワ神を崇めるスカアワ教への入信を……そうですか。気が変わりましたらお近くの教会へお越し下さい。では健やかなる時を」
「おっ、ここらでは見ない顔だね。新しいブロワーさんだね。どうだいスカアワ教へ入らないかい?1つオマケしてあげるよ?そうかい。でもこいつはサービスしとくから次もご贔屓に」
「すみません。スカアワの教会はどこでしょうか?えっ?わからないと。いえ、なんでもないです。いきなりじゃないですけどとりあえずアンケートしてもらえますか?こことここにチェックとここにお名前でサインをしていただくと洗剤と香水、あとこの系列のお店で使える割引券を差し上げます。え?この黒い紙は何かと。ただの台紙で、え?お連れの方?はい、はい。……っち、教会騎士を呼ぶまでの時間稼ぎでしたか。ペッ。覚えてろよ!」
「大丈夫だったかい?ここではあのような方法の勧誘は違法なので取り締まっているがいまだに後を断たない。とりあえず十字架を持っていると相手の方が避けるのでスカアワ教へと入信を勧める、……なるほど、わかった。これからも気を付けるように」
十字架を着けていないだけで門から何から至るところから勧誘を受け進めなくなるので、仕方なくベスタにもらった戦神の十字架を着ける。戦神の十字架は大きな鍔の大剣に短槍がクロスして付いている形。
これ最後の祈りと見せかけて不意打ちで殺せ的な意味合いじゃないよな?
「持っているのなら直ぐに付けたらよかったのではないか」
「いや~、門番から勧誘を受けたから中はどんな勧誘が犇めいているのやらと思ったのにゃ~。それに面白い勧誘が聴けるのか楽しみなとこもあったのにゃ~」
「アラバスターはお喋りが好きでしたね。よく胡散臭いお話も聞いてますし」
王国と帝国でも胡散臭い話は転がっていて、おちょくり混じりに話を聞いている。ねずみ講や金融、土地転がしから宗教まで様々なので暇している時は良い暇潰しになる。時々通報してごみ掃除も兼ねてるし。
「そう言えばこんなところにお二人はなんの用なのにゃ~?」
「あら、ご存じでなかったのですか?もうすぐここで大会が開催されますの。男女混合のブロワーもヒューマリアンも関係なく組んず解れつの乱痴気騒ぎのお祭りがあるのですわ」
「教国で神前試合ならぬ神前大会が開催されるのです。他にも使用目的がありますが、闘技場を使用しそこから伸びる回廊を踏破すると言うルールです。優秀な者には報奨がでるとのことです」
よくよく観察してみれば、あちらにブロワーの集団。そちらにブロワーの集団。あそこにヒューマリアンの傭兵団など戦闘が得意な連中が目につく。
「そう言う理由もあり馬車を借りた。王国で彼女らが此方に声をかけた理由も馬車に乗れなかったからだろう」
「そうです。殆どの馬車が予約で満席になっていまして、人数が少なかった貴方に声をかけました。帝国の方だとは思いませんでしたが」
「まあ、乗り合い馬車に帝国の鎧を着た人物が乗ってるなんて考えもしないにゃ~」
「そうですね。……あっ、結構です。そう言う方々は専用の馬車に乗りますから。……大丈夫です」
「ワニちゃん。取り敢えずこれ付けとくにゃ~」
キリストの代わりに上下さかさまに鮫と鰐が裏表に磔刑にされている首飾りを渡す。そう、こんなこともあろうかと、昔『鍛金のアトリエ ~黄金の穂は幸福を呼ぶ~』(略して『鍛穂こ』)で鍛えた彫金技術と彫刻技術の技を使って作成しておいた。まあ、実は同じのをベスタから貰ってた筈なんだが……。
「あ、アレですか?おいしかったですよ」
俺が貰う一瞬だけ目を離した時にすでに口の中で、聞いた時にはすでに胃の中にしまわれていた。十字架を食べるなんて発想はなかったよ俺。
「大会までまだ日にちはあるんですけど、先についておかないと屈強な逞しいモノに囲まれた場所で寝泊まりをする羽目になりますわ」
「そう言うことですので我々は安全な宿を探しに行きますのでお別れです」
「ああ、実に有意義な旅であった。少ないがこれは依頼金だ、縁が合えばまた会おう」
「そう言えば僕たちの目的は違いましたね」
「さよならにゃ~」
二人は別れの挨拶をすると商業区の方へと消えていった。かなりお嬢様度が高かったけど上流の女子高の出だったのだろうか。それにしても気を抜くとケツバットされそうな雰囲気だったぜ。
「それでアテクシ達の目的の人はどこで落ち合うようになっているのにゃ~?」
「待ち合わせの場所は決めておらん」
「えっと、それでどうやって会うつもりだったんですか?」
「ふん。待ち合わせ場所を決めずともわかる」
そう言うと街を回り始めるフェリックスの後に静かに着いていく。彼女はNPCの道具屋、防具屋、武器屋を回ったあとにプレイヤーメイドの露店や店舗を見ていく。そこで数点購入したりしなかったりしていると1つの店舗から無骨なプレイヤーが大きな音を立てて飛び出してきた。近くに行って聞き耳を立てるとなにやら窃盗行為を働いていたらしい。
「貴方たちには『愛』が足りません!!」
「うるせえ!何が愛だ。このゲームでそんなもの要らねえんだよ!」
「金払って買うとか、奪っても変わりないじゃんよ!」
「変わります!この世界では武器も防具も道具でも『愛』を込めて作られたものが売られています。それを略奪するだなんて、誰かが許してもこの私が、私の『愛』が許しません」
「くそっ!こうなりゃテメェを殺して補填してやる」
それぞれの武器を抜き構えた瞬間、周囲の戦える人達が構えるがそれよりも早くその女性プレイヤーは先頭の人物の懐に飛び込んでいた。
「ならば容赦しません。私の『愛』で悔い改めなさい!【愛故鉄拳】!!」
技文字が発動すると敵対していた全ての人達が直上に吹き飛び地面に墜落した。
「あら?そこにいるのは」
「帝国から手紙が届いている筈だ。迎えに来た」
「あらまあ、もう少し遅いかと思いましたよ」
人混みから現れた衛兵によって捕縛されていくのを背景に、女性プレイヤーが此方にやって来てフェリックスが声を掛けた。彼女が目的の人物らしい。
「そちらは初めましてですね。わたしはメリッシティアルマ・イテルルクトゥス。メリーとでも呼んでください」
「初めまして。○イアン・○イノルズです。こっちはクロマグロです」
普通に嘘を吐きました。殴られました。
エイジェンマ・フラグメント溢れ話
」]
|◎フ < 『鍛金のアトリエ ~黄金の穂は幸福を呼ぶ~』(略して『鍛穂こ』)
【打てば響く鉄の音の
豊穣祝う舞あれど
飾る色彩欠けあれば
総ては虚ろの蜃の溜息】
(OPでの一節)
『クソゲー ランキング SLG』と検索すると上位に出てくる上級クソゲー。
鍛冶師の息子or娘の主人公が周囲の依頼を聞いて物を作っていろいろ発展していくストーリー。その最終目標にとある鉱石を使った武器を作り厄災に対処すると言うものなのだが、通常の鍛冶師としてストーリーを薦めても目的の鉱石の入手方法が全く知ることが出来ない。
しかも、鍛冶の技術、鍛金、彫金、研ぎ。次に日々の食事、洗濯、片付け、掃除。そして人物交渉、資材、食料、情報の入手。さらには魔法、戦闘、調剤、錬金、釣り、農業、狩り、移動。極めつけは日用品、食料、水質の傷みなどなど。その全てがリアル準拠になっていて、時間加速以外は誤差程度のシステム補正で己の現実技能によって作業を進めなくてはならず、職人気質な人間以外プレイし続けられないと言うクソさ。
納品物に対してのクレームもあり、宇宙人からのクレームもあり。下手すると地上げや借金取りにまで追われることが出来る。がんばって全クリしようね!
そしてクリア目的の鉱石は錬金術と調剤の果てに作れるものであり、主人公の住んでる町の錬金術師と調剤師、鍛冶師の仲が見下し合いのどん底スタートなので普通に話し合いに行くと次の日に川に浮かぶこともしばしば。
がんばって楽しもうね!!




