タビノサナカ
ガタゴトとサービス開始時と同じ音を立てながら、乗り心地は天と地ほど違う少しだけ豪華な乗り合い馬車で街道を行く。取り敢えずワニちゃんを拾える街までは一週間と少しかかるが、俺のリアル睡眠時間や食事などで二週間近くの移動になる。俺がいない間フェリックスは帝国の工作軍が用意した場所で休息を取っている。
そうして街に着いたのでワニちゃんを探すためにメッセを飛ばす。近くに居れば反応してくれるはずなので数分探してはメッセを飛ばす事を何度か繰り返すと、範囲に入ったのかログインしたのか返事が帰って来たので迎えに行くと皿がうず高く積まれていた。なんかお前のツレなのか、払えるのかと言う顔を向けられたので値段を聞いて、千単位で纏めた金額の袋を渡した。
「すみません。こちらの馬車はスカアワーン教国へ向かいますか?」
そして、馬車に戻った時にメイド姿の眼鏡っ子が声をかけてきた。察するに俺らが乗ろうとした馬車がただの教国行の乗合馬車だと思って声をかけたのだろう。さて、メイドがいると言うことは、っと。やっぱりと言うかもう一人いた。臍出し肩出し、鎖骨出し。更に太もも二の腕を眩しいほどに露出してはいるが、鎧から装飾品からの雰囲気でどこぞの姫騎士かくやと言う装備を着ている女性、……多分プレイヤーだろう彼女はメイドの後ろで俺らを見ている。露出大装備が存在するとはやはり人間は愚か。
「とりあ~えず教国には向かうのにゃ~。でもこれお偉いさんからの貸し切り馬車だから中の人に尋ねてみないとわからにゃ~い」
「そうですか。ここから教国へ向かうルートの馬車はすでに予約がいっぱいでして、もしよろしければと思ったのですが」
「それは災難です。アラバスターダメもとで聞いてみましょうよ」
「行けるかにゃ~?」
護衛が俺らと言うこともあり鈍行の旅になるがそれでも若干急いでいるのでフェリックスから許可が出るかどうか……。
と考えていたが。
「よい。その者たちは我らの邪魔をする者たちではなかろう。私も女の身故女手は欲しいところだ。そもその者たちが裏切った場合お前が取り押さえられるであろうし」
「いや~ん、買い被りが過ぎてシンデレラになっちゃうのにゃ~」
「買い被りと灰被りってわけかガシュガシュ」
「そういう説明は無作法ですよザシュザシュ」
ダジャレを解説したワニトロスを叩いておく。
しかし、女手か……。べつに俺が発情するわけないが、女性からしたら男が近くにいるときに無防備になるのが怖いのだろう。俺が気にしなくても相手が気にするわけで。
「ご厚意ありがとうございます。さあ、お嬢様お手を」
「はい。あ、この度はありがとうございます」
「なに、畏まらずともよい。それより道中の助けを借りたい。勿論依頼料は出す」
一瞬お嬢様と聞いてお嬢様レーダーが駆け巡ったので停止させようとしたがが、発動したのだからもったいないとお嬢様レーダーを働かせ二人の様子を観察した。
メイドの方。お嬢様度30%。見た感じの性格、所作などから女性であり若干のお嬢様学校的な雰囲気を読み取れた。多分現実女性二十代半ば仕事は……営業系かな?
お嬢様の方。お嬢様度20%。現実女性で家事が得意だが男性慣れ、と言うか社会慣れと言うかなんか現実に擦れてない感じ。メルヘン気質でフワフワとした雰囲気のおっとりお姉さん?
くそっ。俺のお嬢様レーダーは国家公認工作稼業の腹黒お嬢様からの全て、現在地からどのような用事か、何を欲しているかを瞬時に読み取ることに特化させているからお嬢様度のパーセンテージで判別できない。だが、現実女性ブロワーなのはわかったのでここはいいとしよう。マイナスから0%は確実に男なのは間違いない。
「何をしている。あとはお前だけだぞ。早く搭乗しろ」
「了解にゃ~」
ぴるぴるぴぴるぴるとレーダーを使用していた間にワニちゃんもすでに乗ってしまっていたので急いで乗り込むと、俺の着座を待たずに馬車は走り出した。なんだか立ったままになってしまったので集まる視線の雰囲気を紛らわせるためにアイテムボックスから吊革を取り出して上に向けておく。
「なんでそんな小道具を持っているんですか?」
「それはねワニちゃん。こう言うこともあろうかとものボケの為に作ったのだにゃ~。まあ、職人じゃないから完成度はお察しだけどにゃ~」
吊革を見ているので握るかとワニベロスに聞いてみるが身長差で若干届かない位置みたいなので断られた。その代わりにお嬢様が立ち上がったのでゆっくりと座らせた。
「そう言えばお二人の名前聞いてないにゃ~。偽名でもいいから呼び名を教えてにゃ~」
「そうでした。これから一緒なので自己紹介をしなくてはいけませんね。私の名前はオルキンティ・マックリーン。こっちはうーちゃんです」
「ウテルスです。気軽にメイドかウテルとでも呼んでください」
名前が飛び出た瞬間「みょっ!?」っと声が出そうになったが他の二人は気づかなかったようなので幻影を張り付けて表情を隠した。それからこちらも自己紹介をしてからフェリックスから今作成した依頼書を渡されそれに二人が記入した。
「さてさて、つまらない事は終わった様だし次の場所に行くまで暇潰しするにゃ~」
アイテムボックスから巻物を取り出すと、不思議な顔をする4人の前で机を取り出しそのうえに広げる。その中に描かれていたものは連なる升目の所謂双六と言うと奴だ。もちろんブロワー製品の特別製である。さあ、楽しもうね!




