カチュウニクリ
ころころと戦場を転がっていたらしく喧騒騒々しい怒号が飛び交う中、幸運にも誰にも踏まれず地面を掴んで立ち上がることができた。
「こんなとこに雑魚がなんでいるんだ? まあ邪魔だから死んどけ!」
「きゃあ、怖いにゃ~」
「うわ、ぺぺっ!?」
立ち上がる拍子に握りこんだ土を【波】で飛ばして相手の顔にぶつけてひるんだうちにせっせこ逃げるとまた血気盛んな虎狩ヘアーな槍使いがこちらを補足したが、その一瞬で相手に首を狩られて光になった。
「うわー、やべぇわこれ。多分中心近くの右翼付近? 伸びてたら間違えてるかもだけど」
パッと見右側の方が人が少ないので逃げるならこそこそと大胆に人混みを抜けたいところだが、現状戦うにしても逃げるにしてもアイテムがランダムボックスのみだと危うい。ので、盾職のスクラムの影に隠れて開封する。
「回復アイテムが5個、蘇生確率アイテムが1個、煙幕2個、死亡回避アイテムが1個半、剣が1本。1個半ってなに?!」
お守りのようなアイテムが半分入ってたんだけど、半分では効果はないって書いてあるからゴミじゃん!! 待てよ! 待たないよ! 意味ないじゃん!
まあ、他は有用だからいいからゴミ入っててもいいし。死亡回避アイテムはアイテムボックスおよびストレージに入れてても発動するみたいだからぐう有能。沢山持ってたら無敵じゃんと思ってたけど注意書きにゲーム時間で日付変わるまで再使用不可って書いてあるから無理だった。
とりま剣と死亡回避アイテム━━安全祈願のお守り、回復の水薬をストレージに入れて、煙幕をすぐ使えるように両手に握って乱戦から逃げる準備を整えた。
「オラオラオラオラ! 退きやがれ!」
「煙幕!!」
横から出てきた大斧使いの顔面に潰して発生させた煙幕を【波】で指向性を持たせてぶつける。煙幕はタイマンだと撒くよりぶつけた方が逃げやすいのは『ラスト・サムライ・オブ・ニンジャ』で学んだからな。
そして、確認した人が少ない方へと走っていく。
ただし、知らない場所で爆発によって転がったことで方向が混乱した頭で判断した方へ。
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[ゼザイア砦:右翼]
「行け! 我らスパルタの力を見せつけるのだ!」
『オオォォォォォォォォォォォオオ!!』
「行きなさい。私がいる限り平等です」
『オオォォォォォォォォォォォオオ!!』
方や必要最低限の鎧と兜を身に纏い前に、方や裁判長が纏う様な服を着たブロワーが後ろで指揮をとりぶつかっていた。
ほぼ前衛構成の脳筋たちと前衛後衛バランスよく揃えた団体と戦うなかで、順次強化されている脳筋に対してカコーンッと音がなる度に均衡しだす者たち。
「やはり、あなたが来ますか。10バランス」
「いやはやレオニダス、あなたに対抗できるのが私だけと言うことですよ。全くバランスが悪い」
「私の『獅子奮迅の者達よ』と『ここを最期の砦とする』に対して他の人では無駄ですからね」
「ですが私の『個々に至れば平等』とも相性が悪く、どちらも疲弊するばかりです。なぜかバランスが取れてしまいます」
互いに話をするために投話の装身具をつけているので話はできるが、どちらも視点は違うが戦場を見ている。戦線に立って相手を倒している人物がレオニダス、後方にいて背後に姿の薄い巨大な天秤を背負って方々に指示を飛ばしている人物が10バランス。両方とも型が別物だが、戦いかたが似通って逆であるためお互いに千日手となる。
レオニダスの兵が減る度に残った兵が強化されると10バランスの天秤が傾きを戻す間に相手の兵を倒し、カコーンッと鳴ると均衡しだす。まさにいたちごっこであり、レオニダスか10バランス、または互いの兵が片寄るまで続く。
そして互いの似通ったEXTブロウのタイミングが決め手となる。
((次の強化のタイミングが決め手になるだろう))
投話の装身具を切り、そして兵が多数倒れた瞬間、レオニダス軍の強化が始まる。そのタイミングで互いのEXTブロウの発動を開始する。
「『我らが犠牲━━』」
「『偏りありし━━』」
EXTブロウ発動の瞬間、その戦場に異物が混ざり込んだ。
「ぶぅえっふ!? ゴロゴロゴロゴロピタッ!」
砂にまみれ転がってきた初心者丸出しのブロワーは急いで水薬を出すと飲み干した。
「ぶへー、危なかったにゃ~……。逃げた先で人にぶつかったと思ったら魔法で吹き飛ばされたにゃ~。……って戦場ど真ん中にゃ~?!」
明らかに場違いなブロワーの出現によりEXTブロウの発動が止まる。両方とも自陣、敵陣を焦点にする必殺技のため判別がつかない異物が入り込んだための遅延である。
「「き、貴様(お、お前)はどっちだ!!」」
だから投話の装身具で問いかけた。
いきなり聞こえてきた言葉に周囲を見渡しているブロワーに同じ問いを投げる。
「「どっちだと聞いている!!」」
「えっ、あ! 無所属です! ……にゃ~」
「「無所属だと!?」」
装身具を付けていない声が聞こえるはずがないが、その答えが自らのEXTブロウの一時無効を招いたことでこの戦場の異物と言うことを理解する。
「そ、それじゃあお邪魔と言うことで……」
「その者の付近に居るものは直ちに排除しろ!」
「一部兵を割譲し、邪魔物を取り除け!」
「さよーなら!! 【波】!!」
そのブロワーは微妙な顔をしてガンガンと盾と籠手を打ち付け、そのあとに地面を殴るとその場所から土煙が上がり姿を隠しどこかに逃げ去った。
「くそっ、全員体勢を立て直せ!」
「陣が崩れたものは急いで戻しなさい。他の者は迎撃体勢、追撃に備えろ!」
消えたのならば目の前の相手に集中すべきと切り替え命令を飛ばし始めた。次にEXTブロウが発動するまでが勝負となることは明白である。
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[???:??]
うえー……。なんで初日なのにこんなことになってんだよ……。死ねば良いとか思うけど、ランダムボックスの袋がアイテムボックスになってるからラッキーと戦死したブロワーから拾ったアイテム詰めてるけどパーになるじゃん……。今腰に結んでるから引っ込めるタイミングがないじゃんよ。
「火事場泥棒ってやつだけど凡庸アイテムを1、2個パチッてるだけだから足は付かないよね?」
逃げてる時に擦った場所に水薬を掛けてHPを回復して、改めて見回すとあと少しで戦場から逃げられそうな位置に来ていた。
「ラッキー。そして、速度上昇の水薬も拾ってるからまたまたラッキー!」
水薬を飲むと周囲がちょっとだけ遅くなった。速度上昇の効力かね? とりあえず人混みを避けてそっちの方へ抜けていく。
「邪魔すんじゃねえ!」
「ぶぅえっふ?!」
数m進んだところで重戦士のブロワーに轢かれ弾き飛ばされどこかに転がり出た。まだレベル1(仮)じゃお手玉みたいにポンポン飛ぶなぁ。
「うげっ、またHPギリギリになった。水薬足りるかな?」
「貴様、どこから来た?」
水薬を一気に呷った瞬間にのど元に刃を突きつけられた。おや、ここは戦場外ではないのかな? とりあえずハンズアップしておく。
「通りすがりのルーキーピーポーですにゃ~。勘違いで放り込まれて一生懸命逃げて来たんですにゃ~」
「見え透いた嘘を吐くな。その見た目、どうせ敵陣に突っ込み自爆するつもりだったのだろう。その前に処理を行っておこう」
「い~やいやいや、本当に戦争も知らず友人との待ち合わせしてたら巻き込まれた哀れなレベル0にゃ~!」
「それはこちらが決めることだ」
「理不尽!!」
当たり前に当たり前な不審人物処理、突きつけられていた大剣を振り上げた。一回死ねるけどそのあと逃げるか? 勿体ないけどそうするしか……。
「待て!」
そこにいかにもジョーキューヨウトテモスゴイヨロイを着込んだ人物から停止の声が飛ぶ。
「ですが!」
「以前から言っているだろう。ここにたどり着いた者は私が相手をすると」
「陛下! それは存じておりますが、この者は使い捨ての者でありましょう。ゆえに陛下がお相手するなど━━」
「使い捨てだろうとここ、アテーシュ帝国の陣にたどり着けた者だ。私が相手をするにたると言うことだ」
「しかし陛下……」
「くどい! 私に同じ事を言わせるな。この意味がわかるな?」
「は、はい。承知いたしました」
振り上げられた大剣を納めると胸ぐらを掴んで引き摺られ、陛下と呼ばれた人物の前に投げ出された。見るだけで国宝国宝と自己主張が激しい装備品の数々に諸手を挙げて降参ポーズをとる。
「なるほど。運でたどり着いた様だな」
「陛下! このような吹けば飛ぶ様な輩を自ら試されるなどと」
「黙れ。お前は先程の私の言葉を忘れたのか」
「い、いえ」
「ふう……。でだ、ようこそ異境のブロワーよ。お前はどこの者だ?」
「え、えーっと……」
両側に控える鎧姿の人達に向けてた威圧が此方に来たので言い淀んでしまう。
「陛下。提言をよろしいでしょうか」
「よい。申せ」
「はっ! この者は我らが集った者たちの中には覚えがありません」
「真か?」
「はい。我が家名に賭けまして」
「はっはっ。面白い。貴様、アルマティの方から我がアテーシュの陣に来たのか。よほどのバカだな」
兜に手を乗せ大笑いする相手方大将。
ん? 俺はアルマティ王国のところから横に抜けて……? あれ? 間違えた?!
「わ、吾輩をどうするにゃ~。新人の新人だから戦闘力皆無ですにゃ~……」
「だっはっは! こんな奴陛下が相手するまでもなくあ奴らとは別の者でありましょう!」
「しかり、この様な者捨て置けば宜しいかと」
控える人達が笑い出す中で、数人が目線を反らしておらず、陛下の後ろにいる人は微動だにしていない。これは容易に逃げられないな。
「貴様たちは私に同じ事を言わせようとしているのだな。ならばもう一度言おう。私が、相手をする」
『…………』
威圧に押さえ込まれている様子だが、暗になにか演じているようにも感じる。
全員が黙ったのを確認したのか背後に控えていた人から剣を受け取り立ち上がった。
「なぜ私自ら試すのかと言った感じてあろう。なに、13年位前に我が宮中の占星術師の最期の占いで、戦にて異界より来るものを集めよとあったのでな、占いなど信じておらんが戯れにその通りに集めてみようと思ったのだよ。そして貴様で最後の1人になるか試すのだ」
「13年……。それって他の国とか同じ事を言われてない?」
「かもしれんが、我が帝国が力を持つなら戯れても良かろう?」
「……優しくしてにゃ~?」
「できれば、な」
こちらが立つのを確認してから、一足跳びに距離を詰め抜刀の斬りつけが飛んできた。
エイジェンマ・フラグメント溢れ話
」]
┃◎フ <エイジェンマ・フラグメントにある暗黙のルール
1つ、掲示板等で新人にダイマする際、名前が必殺技となることを話さない
1つ、リアルでの情報に黒星の欠片を載せない
1つ、攻略サイトで他人のFBワードを晒さない
1つ、和気あいあいとしてネタネームを勧めない
1つ、気楽にネタネームにしてしまい落ち込んでいる人には優しく
1つ、友人にダイマするときは個人の判断で
1つ、ブロワーが呼ぶエイジェンマ・フラグメントの複数あるうちの通称『自己紹介勝負ゲー』は専用掲示板以外では使わないこと
オマケ
『ラスト・サムライ・オブ・ニンジャ』
プレイヤーは壊怒に生きる最後のニンジャ・サムライとなって惡の征夷DIE将軍『涜皮贄庸』を打ち倒すゲーム。
ある時は刀を持ちサムライとして真正面から、ある時は暗器を用いニンジャとして天井裏から征夷DIE将軍を天誅する
しかし道中には様々な雑魚敵(Aチゴヤ、LAW忍)やエリアボス(惡DIE官、TEN愚)が存在しプレイヤーを(なぜか)殺しに来るので、それをスタイリッシュセイバイアクションで倒し、得られる零根を使い様々な技を覚えてステータス強化してボスをたおす
普通にプレイする分には死に覚えゲーとなるが、HPと回復量の二極ビルドにすると自滅技『ニニンバハラキリ(HP-(HP-1)ダメージを与える)』を使うとだいたいのボスが2、3回で死ぬ。(ラスボス含め)
あと敵の毒の自動回復がないので吹き矢でチクチクしてたら時間がかかるけど全員殺せる。(ラスボス含め)
ぶっちゃけ強化に対してラスボスが強化されるので未強化で毒チクしてラスボス到着したらワンパンで相手は死ぬ。
現在RTAで最初のマップに存在する城に向けた大砲に最も高価な炮烙を詰めて放つと2発で全クリする仕様がナーフされ、なぜか回復アイテムの転ポーラを200打ち込むと全クリする仕様になった