キシタイスルシ
KANーSEN、ピザコラボ、周回、周回
足りない、足りない
[地下水道内増水設備室]
あの裏切り者、ミルマラクネと言った奴が作り出したこの状況で、互いに足場から移動できないことが幸か不幸か膠着した状況を作り上げている。
私の魔法は練度の低さから威力が出せず、奴は更に上の、私を殺すだけの魔法が使えるのだろうが、協力者の条件として私の身柄があることから損壊させることを避けている事で私でも弾ける程度の魔法しか放ってこない。
「ふむ、この程度では仕留めきれないか。もう少し威力を上げても……まあ少しくらい傷が付いても大目に見させるか」
「くっ……」
奴の攻撃が激しくなる兆しが見えた。足場が限られているここでは先程までの引き延ばしが最善だったのだが。とアラバスターから何かがこちらに放られるのを視界の端で見つけ、その届かなかった物を剣を使うことで拾う。その瞬間に威力を上げられた魔法が放たれた。
「ギャァアア!!なんだよこっちもこっちでアブねぇ奴じゃねえか!」
「助かった。確かリヒャルドだったな。少しばかり私に手を貸してくれ」
「ちっ、俺はアイツのせいでそんなに強くねえぞ。わかってんのか?」
「足場を増やすだけでいいさ」
死霊術師から放たれた魔法はリヒャルドの現れた手で防がれた。以前は人の顔をしていたが、今は髑髏の状態の彼に話しかける。手助けをしてくれる事を確認すると紐で彼を腰に結び、そして今の足場から跳び中空を行く。跳んだことで死霊術師から魔法が放たれるがリヒャルドの手で防がれ、新しく現れた手のひらへ着地するとまた中空へ跳ぶ。。
「ちょっと待て。いくら悪魔でもダメージが通っているならHPが無くなると保てなくなるぞ!」
「そうか。なら消える前に回復すればいいことだな」
「そう言うことじゃなくて!!いててて!?」
マジックポーションを飲みながらヘルスポーションをリヒャルドにかけ、魔法防御の上昇と魔法防御をかけ死霊術師に詰める。
「おっと、危ない危ない。まったく、傷を気にせずに一気に気絶させておけば良かった。私は近接は苦手でね」
「そうか。なら良かった。私は得意だ」
切り付けた瞬間に物理防御の壁で剣が阻まれた。これは私も使うスキルと判断できるのだが、死霊術師は使うことが出来ないはずであり、世界の職業の仕様によりなることが出来ない。だがなぜそのスキルが使えたかなのだが。
「そこか!」
予備の剣を取り出し水面に投げ入れると弾かれ一旦水上に飛ぶとそのまま沈んで行った。死霊術師はイタズラがバレたかと言った子どものような笑みで水面下に潜ませていたそれを浮上させる。姿は1つの球の表面に鈴生りになった人の顔が複数付いた物。所謂悪趣味な死霊だ。顔それぞれに付いた口から漏れる言葉は呪詛であり、詠唱であり、見た限り様々な効果を己に付与している様だ。
「ヒヒ、さすがに王族の末と言っても精鋭騎士の1人。この仕掛けを数瞬で気づくとは拍手物ですよ」
「誉めていただき光栄だ。後の言葉は牢の中で他の者と共に聞こうではないか」
「それは辞退致しますよ。私、これでも忙しい身ですので」
顔だらけの死霊がまた水中に沈み込むと魔法攻撃が再開された。あの死霊は防御をすると共に、魔法の補助もしているようで先程は同じ高さから放たれていた魔法が水中から襲ってくるようになった。
魔法の数は同じに威力が上げられた魔法を防御スキルで受けつつ、時にはリヒャルドの手で弾いてもらっている。だが、奴の防御を突破できるスキルを使用するためには絶え間なく行われている攻撃の中、少しの溜めと十分な魔力が必要になるが、それが常に削られ行う事が出来ない。
「ヒッヒ、先程見せた物は私の補助をするように作った物でして、守りが得意な戦士二人と補助魔法の魔法使いが三人、攻撃が得意な魔法を使いと魔力が多いだけの職業の人間を使って造ったのですよ。それをいつ仕込ませたかと言うと━━」
「あの首無しを呼び出した時なのだろう。首と首無し。そう一纏めにする事ができれば見えないところで呼び出したのならあの首無し一体だと見せかけ不意を打つ。そう言ったことだろう」
「さすがですねぇ。一目でカラクリを解き明かすその頭の回転。ぜひ素体にしたいところですが」
自慢らしき説明を行ったかと思えば、首無しの死霊と縺れ合っているワニベロスとは反対側でミルマラクネと戦っていたアラバスターの方へ視線を向ける。いやアラバスターの方へ向けたのは私の主観か。共犯のミルマラクネを見ているのだろう。彼は私の体を狙っている。故に死霊術師は諦めているのだろう。
水面下からの魔法をリヒャルドに任せ、牽制でもなれば良いのでもう一度斬り込む為に死霊術師に目を向けるとその先、噴水に乗っていたアラバスターが何かに絡み付かれ水中に沈んでいくのが見えた。反射的にリヒャルドを叩くが反応をしない。




