チョーサシタク
ガンガンと金槌の音が響く工房に連れてこられた。凄い一等地に建っていて見るからに上位人種御用達の高位の職人が詰めていることはわかる。俺がここに連れてこられたことがわからない。
「おお嬢ちゃん!注文してきたもんできとるぞ!」
「わかった。あとで払うから用意しといてくれ」
「リーダー、誰すかその白いの。新しい生産職の団員ですか?」
「親切の押し売りだ。生産職のあてがないって言うんでうちのもんを使わさせてやるんだよ」
代わる代わるに話しかけられるブラッドマリーからポイっと投げ捨てられて転がり、自然な感じに立ち上がり竈に到達すると造りを確認する。パン屋なのに竈持ってないから生地までしかできてないんだよ。正式にパン活したいんだよ。本格的に詐欺師になる前に。
「おいお前!アンタいったい何なんだよ!クラン外の人間がうちを使用できるだなんて」
「それはこっちが知りたいのにゃ~。ただのパン屋だってのにあっちこっちに遣われてほとほと困ってるのにゃ~。ところでここ携帯できる竈作ってないかにゃ~?」
「はぁ?パン屋だと?そんなやつがうちを使えるわけないだろうが!冗談らしい冗談くらい言えよな!」
突っかかってくるブロワーを鼻で笑って工房のカウンターに向かう。聞いてみると携帯式の竈はあるが小型のキャンプ程度のものなのでパンが上手く焼けるかは保証できないとのことだが、小さいやつでもいいから購入した。一体型の竈で今のステで若干重く感じる程度のもので落とさない限り壊れそうもない。
一通り確認した後にストレージ内のアイテムボックスに収納して、今回連れてこられた用事を済ませることにする。
「なんかブラッドマリーに今日連れてこられたのは防具が初期装備なこれらにひとことモノ申されたからだにゃ~。てなわけでどの素材で装備が作れるのかにゃ~」
素材用のアイテムボックスから帝国地下ダンジョンで入手した素材を一種類ずつ出していく。今所持している中で服に使えそうな素材、皮や羽、甲殻に骨を取り出すと受付をしている人の顔がいろいろと変わっていく。まあ、この火吹き猪とかクソデカ蟷螂とかここら辺では見ないからわらわら集まってくる。
「ほお、珍しいもん持ってるじゃないか」
「この虫の羽とかしなやかだけど脆くない性質なんてここらでは見ないヤツじゃないか?」
「Year! all right!」
「おい貴様!聞いているのか!」
「おい、この素材はまだ持っているのか?」
ごちゃごちゃと集ってくる職人をゆらりゆらりのかわしながら胡散臭い英語を使う黒光りのマッチョの頭を叩いて、個数の少ない素材を収納してそこそこな素材を取り出して今着ている装備と同じ種類の物を作ってもらう。某社のアラビアンの服装が最初違和感丸出しで存在してたが、地下ダンジョンと象との戦闘ですでにこの装備がデフォルトになってしまったので同じ服装にしてもらうことにした。
「だからお前程度が!」
「そんなキリキリしない方がいいにゃ~。そんな力入れてると目に毒だにゃ~」
さっきから突っかかってくる若いのに向かって煙管の煙を吹きかける。
「ゴホッゴホッ、何しやがる……ってなにも見えねえ!?てめえ何しやがった!」
「さぁ?人を睨むから目の血管でも切れたんじゃないかにゃ~」
「ちっくしょう!どこだ!治しやがれ!」
「……ぶっちゃけ治せないから無理」
状態異常にかけるのはできるがアイテムを使わないと治せないのでこの馬鹿には使いたくない。ついでに回復阻害の状態異常を十個くらいかけておこう。煙に巻かれてそいつ自体から煙が出ているかのような状態になって燻されている。
「おいおい、そいつをあまりイジメないでくれよ。それでもうちの職人なんだからよ」
「しょうがないにゃ~。突っかかってくるほうが悪いにゃ~」
「そうだがな。……うん?なんだと。あの迷惑なカボチャ共が初心者を狩りやがって、何人か呼んであいつらを叩くぞ!」
報告にやってきた団員からの連絡を受けてブラッドマリーが足早に工房から出ていった。ブラッドマリーがいなくなったから後ろから素材を出せと言った圧力がかかってきたので俺も足早に工房から退出した。あそこにいたら身ぐるみをはがれそうになりそうだ。
「っとと、そう言えばひょいと抱えられてきたから道順がわからないのにゃ~。しかたないから適当に進むかにゃ~」
風の向くまま気の向くままに路地という路地をグネグネ曲がって、時々胡散臭い露天商を冷かしながら歩いているとひったくりのような怪しい奴が横から現れてレベル差で吹き飛ばされ用水路に落ちた。くっさ!?用水路の水くっさ!?なんで?用水路の水って普通奇麗な状態であるべきだろう!
近くの洗い場的なところに上がってダンジョンで拾ったクソダサい布の服に着替えて服を乾かす。なんか本気でくさいなこの用水路。あとでどぶさらいのクエストでも探してみようかな?なんか詰まってるとかあんのかな。
軽く乾いたところでバサバサとゴミを落として着なおすと近くの門から出て新しく得た技文字の経験値集めでもしておこう。そろそろ自分でも何かあっても動けるように。




