ドクドクコドウトク
大抵のボス的強さを持つモンスターは何段階かに分けられる動作や変身を持っているが、この象は前者のようで武器が刺さっていた所から断続的に泡立つ紫色の血液が流れ出した。そしてそこからが本番かのように防毒装備の耐性を抜いて毒を示すアイコンが目の前に表示されると共に回復してほぼ満タンだった俺のHPが十秒に数%の減少を始めた。
「おおっと、剣の付け根から流れ出てるならワニベロスが危険にゃ~。触れてないのにこの継続ダメージなら浴びると危険にゃ~」
縛っているから急いで戻るが括って置いたはずのワニベロスの姿が見当たらない。場所を間違えたとかそんな手作り迷路以下のわかりやすい象の背中で迷子になるわけはない。その証拠にワニベロスをくくっていた武器が食いちぎられたかのように剣先と歯形がそこにある。
「うーん、自分から動いたわけだし探すって言っても見える所には居ないしにゃ~」
揺れる背中に刺さっている武器の柄を足場に尻尾まで行ってみる。暴れる度に行き先の足場がずれたり、立っている所がぐらつくが失敗する度に最初からになるサーカスゲームをクリアしている俺にとってはまだ序の口程度の難易度だ。まあ、それでもステータスが増強されているこの世界の身体だからできるという前提なのだが。
ちなみにそのサーカスゲーム『ダスター・アクション・スタント・サーカス』はサーカス団の団長であるMr.ダスターからの依頼でやってきた主人公(死に戻りの超能力保有設定)がスタントマンの様な無茶苦茶な芸を行い、ラストステージをクリアすることで団長になるストーリーなのだが、それはもう殺すつもりなのかと問いたいくらいの危険なステージや、そのインターバル中に入る突発的な猛獣脱走や大道具の滑落などのイベントから生き残らなければならないから大変だった。ギガントサウルスの脱走や脈絡もなく天幕から方天画戟とかなんだったんだよ。更にスタッフのいざこざから観客席から殺し屋やヤクザ者が乱入してくる中、這う這うの体で最終的にラストステージでダスター団長を事故死クリアをした。
あと話はそれるがこのゲームの制作会社は毎回ジャケ詐欺よくしており、のほほんとしたサーカスのジャケットが描かれ一目ではその狂気が判別できないようにしていて世に蔓延っているが、よく見ると表紙のサーカスの看板が古びて汚れていたり外れて回転していたりしていて、背表紙ではちゃんと表記されている英語の題名が表紙では『Destruction Stunt Circus』になっていおり、通販サイトの評価欄には正気度が削れたプレイヤーが和気藹々とした星5を投げつけている。
「一人になってしまったのにゃ~。こっちの攻撃の手札のワニベロスが使えなくなるとほとんど詰むにゃ~」
足場にしている剣の柄の上で暴れる勢いと重心移動を使ってくるくる回っているとサボるなのメッセが飛んでくる。でも攻撃手段が風船ヨーヨーとコルク銃、蟷螂の剣くらいしか持っていないのでダメージソースになるか不明である。
「あっ、そうだにゃ~。象に刺さってた武器を使う手があったにゃ~」
結んで抱えていた剣と槍を握り頭の上でクロスするように掲げる。長い月日で背中に刺さっていたからか刀身が紫色に染まっているがなんとかなるだろう。
「構えた瞬間に加算された毒アイコンを見なければな」
象の能力で罹っていたアイコンの他に三個加算され減少スピードが上がった。水薬を被って減った分を回復させて、取り敢えず毒液が噴出してない場所に降りて両手の武器を背骨に突き立てる。
「やっぱ堅いにゃ~。皮膚も堅けりゃ骨まで硬いって貧ステの妾のダメージ無理なんじゃないかにゃ~」
斬りつけたり刺したりしているが流れ出る血液の出口と量が変わるだけでダメージが入ったようには見えない。俺程度ではこの象に微々たるダメージしか与えられないことが分かったので武器を伝って血液が溢れ出る傷口がない象の頭に向かう。所々歯型のような傷があるのでワニベロスの調子が回復したのだろう。硬い剣もむっしゃりいくのだから元気にどっかで頑張っている事だろう。
『Baooooooo!!」
「相変わらず五月蠅いなこっち側。まあとりあえず、状況はっと」
俺たちが背中にいるからなのか象の真正面で戦っているナッツァー達はバランスよくスイッチして戦っていて鼻先や足先にダメージを与えていた。このクラスのモンスターにダメージを与えるためにはレベルが必要になることを改めて認識するとナッツァーに槍、ベスタに蟷螂剣を後ろの方に投げてやったらその意図をくみ取ったようで俺が投げた武器をスイッチのタイミングで抜いた。
「ごっはぁっ!?」
「あ、ごめ~んにゃ~。ナッツァーに渡したの象から抜いた毒槍だったZE」
「お前後でコロス」
握った瞬間に毒が回ったのか血を吐き出したナッツァーに詫びメッセを送ったら殺害予告をされた。その毒槍を投げ捨てたナッツァーは毒の回復を水薬だけにして何かのスキルを使ったのか速さと攻撃力が上げたみたいで若干攻撃の回数が増えた。
反対に切れ味がすごい蟷螂剣を掴んだベスタは自分の剣と合わせて二刀流で盾でガードしていた時よりも滑らかに切り裂いて傷口を増やしていく。だがしかしさすがに罹っている毒の状態異常がつらいのか回復の時に躊躇っている節がある。
そういえば治したのにまた毒の状態異常になったという話を思い出したので毒消しの薬を飲むが状態異常が治らない。おかしいと思い一段階強めの毒消しを飲むが武器から受けた毒しか消えなかった。もったいないがそれ以降にさらに強力な薬を飲んだが最上級の薬でようやく最初の毒のアイコンが消えたが二十秒経過するとアイコンが復活してHPを蝕んでいく。あれれ~、おかしいぞ~。
「明らかにこれは毒ですって面して座っているのに最上級を使わないと一時的だけど消えないって、お前まさか毒の振りをした別の何かだな!」
『Baooooooo!!」
「うわああぁぁぁ!?」
頭の上でくるくる回って考えていたのが邪魔になったのか鼻で頭をなぞって俺を叩き落とした。サボりながら考えていたから反応はできなかったのでそのままギャグマンガよろしく地面に孤独なシルエットを残しに落ちていくが、俺の紙装甲では補正が効かずに落ちた瞬間にお陀仏になってしまうだろうな。ワニベロスならきちんと穴が出来そうだよな。硬さ的にも。
っと、そんなこんな考えてる暇じゃなくて生還に必要な手段を取らねば。
「左腕1召喚。アーンド、ターン!」
召喚術式の内の部分召喚を行い巨大なガシャドクロの腕を地面に着かせて、腕を支柱にくるくると地面に降り立つ。落ちてしまったのは仕方ないが背中や頭の上というサボ……優位性をなくなるのはやばいので早急に戻る方法を考える。
しかし、あの象の能力が強化されたからなのか枯れている植物がドロドロに溶けあって足元がぬめるので気持ちが悪い。しかもあの象が暴れているからわからないが若干このドロドロが増えている気がするのでさっさと上に戻る方法を考えないといけないが……、閃いた!
「右腕1召喚。肋骨召喚。ドッキ~ング、アンド、変形!」
新たに召喚した骨が合体した後に変形し、両手は丸められ回転しており鎖骨部分を握って搭乗するとそれはまるで骨で形成されたいびつな自動二輪車のようにも見えるものになっていた。まるでと言うかなんというか一番簡単なのがこの形だったからしただけであってもう少し時間があればドローンみたいな感じで空も飛べるはずな感じに仕上げられたけど、即席だから是非もないよね!
エイ――『Destruction Stunt Circus』溢れ話
」]
|◆フ < ダスター・アクション・スタント・サーカス
本文で紹介したとおり、サーカス団の団長であるMr.ダスターからの依頼でやってきた主人公(死に戻りの超能力保有設定)がスタントマンの様な無茶苦茶な芸を行って全20ステージ(インターバル含む)のクリアを目指すゲーム。
フルダイブの上に一切変わらない身体能力なので大抵の人間は5ステージ以内で投げるほど難しい。そのうえインターバル時に配置されるNPCの身の上の話を把握しなければ5ステージから出現するイベントキャラに対応する行動を起こさなければならない。死んだら1ステージからやり直しになる。
Mr.ダスター
このゲームの進行役。メインの役者が不慮の事故で死んでしまったため新しく雇い育てるまでのつなぎに不死身の通り名を持つ主人公に依頼を出した。特異な芸はジャグリングと猛獣の調教。小太りの常にピエロのメイクをしたおっさん。おしゃべり好きでインターバル時に現れると聞いてもいない情報をペラペラしゃべってくれる。
実は主人公が雇われるまでに7人団員が死んでおり、少しばかり不穏な空気を纏っている。
最終的には主人公の行動によってどう事故死するか変わる。どこの世界線でも主人公が必ず関わりそして死ぬ。
主人公
父にサーカスの元団員(無名だが超有能)、母に魔女と呼ばれた手品師を持つ普通のフリーのサーカス芸人。ある日芸が失敗したことで命を落としたがその死の原因が解決できるくらい前に生き返ったことで自身の能力に気づいた。そしてその能力を使って原因を取り除いたり、力づくで回避してきたことから不死身の通り名が付いた。
今回はきな臭い感じがしたから受けない気だったが、とあるサーカス団に調査を依頼されいろんな意味で断れなくてしぶしぶダスターの依頼を受けた。
この会社のジャケ詐欺ゲームは他にアメリカンなスーパーの店長で運営をしていくという皮を被ったゾンビゲームや、旧友と湖畔に行っていちゃらぶ恋愛ゲームの皮を被ったサイコホラーゲーム、メルヘンな二足歩行の動物と村を開拓していくファーミングゲームの皮を被ったサバイバルホラー(PLがキラー)などが発売されており、コアなファンが一定数ついている。




