ソウゾウカワル
用意した装備が何故か崩れ去ってしまった悲しい出来事から作戦会議が終わり、羊皮紙に書かれている所在地から割り出された会敵ポイントで象を待つ。
病毒耐性が無くなってしまった俺はベスタとナッツァーから譲って貰った面貌と護符を装備して手持ち望遠鏡を覗く。未だ遠く、とも言えないのか倍率がおかしいのか象の眉間辺りが眼前に見えるので上体をユラユラさせるが見える風景は変わらない。
「現実逃避なのか遊んでるのかわからねぇが、そろそろ用意しねぇと戦闘が始まんぞ」
「いや~、体高がか~な~り成長してるから何が原因なのか見てたのにゃ~」
「で、なにかわかったのか?」
「外的要因じゃないことはわかったにゃ~」
「つまりなにもわからないですね」
そうとも言うにゃ~。望遠鏡を目から外して目視でも確認できる【枯毒一丁】の接近と言う現実を受け入れる。
デカいな~。足元を見ると踏まれた雑草が茶色に枯れていく。あれがベスタが言ってた毒の効力だな。雑草のHPが一気に削れて行ったんだろう。治しても罹るっていうヤバい毒だ。
「あいつを倒さないと民に被害が出る。いやもう出ている。だから早急に討伐せねばならないのだ」
「そうか。だったら絶対ぶっ倒さねぇとな!」
「そうですね! 美味しい物が食べれないのは辛いですもんね」
「食べ物の話じゃないだろうが。武器を構えろよ!」
ベスタが両手剣、ナッツァーが鉄パイプ、ワニベロスが両手を構えていると完璧に嘗めてる感が凄いな。風船ヨーヨーとコルク銃の俺が言えたことではないがな。とりあえず屋台武器ではなく蟷螂剣の方を取り出して象を見る。うん、心許ない。
「じゃ、ナッツァー頑張るにゃ~」
「おい?! てめっ、どこ行きやがる!」
「ほら、足遅いじゃん? 邪魔になるからワニベロスと別行動にゃ~」
「はっ、そうでした。レベルが低い僕達だと足手まといになってしまいますね」
「攻撃するタイミングも全然違うからなガシュガシュ」
「力一杯走られると追い付けませんよねザシュザシュ」
到着を待つより少しでも近くに行って観察した方がいい。どんだけ早く動いても巨体の速さには勝てないから、先にどんな動きをしているのか見るだけでも違ってくる。
高レベル組の二人が走り出した後に回り込むように斜めに移動して象に近づいていく。その間に到達した二人が象の両前足に攻撃を仕掛けた。
『アナウンス:【枯毒一丁LV800】と会敵しました』
『勝利条件は勝利または生存です。頑張って下さい』
「なにかダメージが入っていない感じがしますね」
「そうだにゃ~。元々の象の皮膚は分厚いから増強した分更に分厚くなってるかもにゃ~」
「そうなんですか?だったらどうすればいいのでしょう」
「【波】系統みたいな中に浸透すればダメージが増加するかもにゃ~」
「そうなんですね!だったら早く加勢に行きましょう!」
「まだ無理にゃ~。ほら全然進行が止まって無いのにゃ~」
踏みつけられたら地面より強い(この地面とは言っていない)ワニベロスなら埋まるだけで大丈夫かもしれないが、いまだモンスターに触れられると壊れる俺が近づいたら死ぬだろうな。
「おおっと、焦れたナッツァー前足を駆け上り膝裏を攻撃ぃー!! だが効いた様子はない! だが、まだ殴る! 殴る! それに気づいたベスタも膝裏を攻撃! そして偶然にも象の歩みを妨害し転けたぁぁああああ!」
「僕達なにもしなくて良いのですかね?」
「こう見てるだけだとただの観客だなガシュガシュ」
「ええ、ただの物見に来た客ですねザシュザシュ」
「やべ、実況してないで戦闘に参加しろってメッセ来たのにゃ~。あんな状況でもよく見てるのにゃ~」
よいしょと腰を上げて象の横に走っていく。草が枯れている範囲内に入ったがまだ毒は受けていない。だが確実に毒は受けると聞いているので注意しながら、横のワニベロスに視線をやるとこちらを見ながらなにか考えているようだった。
「どうしたのにゃ~? なにかおかしいのかにゃ~」
「あ、いえ。アラバスターの悪魔って骸骨の塊みたいですよね?アニメとかゲームで一部だけ召喚ってのを見たことがあるのでできるのかなって」
「はっは、そんなアニメやゲームみたいに出来るわけ……、できたにゃ~」
四文字技の【召魔術式】を色々弄ってみたら限定的に召喚が可能で、俺の意思が繋がってこっちで動かせるみたいになっているようだ。でも俺に召喚口が固定される訳じゃないようで、地面に向けて召喚したらその分移動できることは出来ないみたいだ。
『PAOoooooo!!』
「うわ、うるさいな」
「転けさせられて顔を叩かれてますから、ようやく敵認定された鳴き声なんでしょう。それでここからどうするんですか?」
「コイツを使うのにゃ~」
「それってコルク銃ですよね。それで攻撃するんですか?威力が弱いんですよね?」
「登坂に使うのにゃ~」
コッキングレバーを手動で引いて街で投げ売りしてた安い矢を入れる。その後に調整して出た鏃の根本に紐を結んで詰め物を入れると準備完了。
「映画みたいにカッコいいワイヤーガンじゃないけど届けにゃ~。【波】【波打】【強波打】」
コルク銃の空気弾で矢を飛ばして象の背にある棘に引っ掻け、紐を緩めると重さで矢が落ちてくる。鼻で暴れている象の揺れは気になるが落ちてきた矢を握り、グッと両側を引っ張ると切れない事を確認すると縄を繋いで紐を縄に変える。
「それどうするつもりなんですか?」
「これの先をわっかにして足を引っ掻けるにゃ~。すると簡易エレベーターにゃ~」
一番簡単で一番力がいる方法でゆっくりとだがワニベロスと二人で象の背中に到着した。象の背は歴代の挑戦者をはねのけた勲章としてなのか、それともただ放置しているだけなのかわからない様々な武器が突き刺さっていた。昇ってきたときに滑車にしたやつは円錐の突撃槍だった。紋章が入っていることから然る方の武器だったのだろう。
取り敢えず一番近くの武器を掴んで【放電】するが俺が痺れるだけで目立った効果はない。体格差で電池程度しか感じていないのだろう。水薬を被って減ったHPを回復するとワニベロスの方向を向く。
「ワニベロス、行けるかにゃ~?」
「やってみます」
グッと身体を伸ばして準備運動して右手を地面に向かって構える。
「【始食】【食前食】」
技文字を発動して象の背中にワニトロスを叩きつけた。その背中に大きく歯形を付けて肉を抉り取った。
エイジェンマ・フラグメント溢れ話
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|◎フ < メッセージ機能について
この世界では遠方のNPC同士で連絡を取り合う際、調教したモンスターを使ってやり取りをしている関係上、PLの方でポンポン情報交換することに違和感を持った運営が制限を設けた。
まあ、ネトゲで発言するときに「周り」か「パーティ」か「個人」かで行うチャットのようなもの。範囲制限は一般の視界限度の半径距離。とりあえず誰か判別できる距離が最大。
前にPLが限界距離で等間隔に並んで人力電波局をしようと試みたクランがいたが二十人繋いだところでテロPLに巻き込まれたり、一般通過上位モンスターによって蹂躙されたことから計画はおじゃんとなった。今そのクランは連絡用調教モンスターを育てているが、四割くらいの確率でモンスターが何かに倒されてしまうので強さか速さで育てる方針が二分化している。
ちなみにクランリーダーは擬態派で副リーダーは空間跳躍派。




