ワニナリオドロ
前回ログアウトした地点の森の中にでる。そんな鬱々とした森ではなくモンスターが出るだけの木漏れ日が踊る森林である。
「やっぱりソロだとテントは置くもんじゃないな」
テントに潜ってログアウトしたのだが、夜警もいないので当たり前にモンスターによって見るも無惨な姿で転がっていた。一番安いので良かった。
「さて、今日で森を抜けるか」
残骸を放置して森の中を方位磁石を手に街へ向かう。街道よりも出てくるモンスターの強さは上がっているがまだ手応えはない。それでもなにもない街道よりはモンスターの頻度やアイテムが転がっているので足も速くなるってものだ。
「ある~日ッ、森の中ッ、熊さんにッ、出会~ワニだぁぁぁぁぁ!!」
「ひやぁぁぁぁぁ?!」
がさごそと木が揺れたのでそちらに向けるとワニが見えたから叫んでみた。するとソプラノかアルトボイスの悲鳴が聞こえたので覗いてみるとワニパーカーの少年ブロワーがしゃがんでいた。
「おい、びびってんじゃねぇぞガシュガシュ」
「敵か味方かわからない時に蹲ってたらダメですよザシュザシュ」
「そんな事言ってもしょうがないじゃないか~」
右手のサメパペットと左手のワニパペットがワニパーカーの子に文句を言いながら体を叩きつけていた。なんだろう、そう言うアイテムなのだろうか?
「ハローハロー、ぼくの名前はアラバスター。何処にでもいるパン屋だにゃ~」
「は、初めましてアラバスターさん」
「おいおい、そんな警戒心無くて良いのかよガシュガシュ」
「距離を取っておきましよう。不意打ちが危険ですザシュザシュ」
「そんな警戒しなくてもいいのにゃ~。わたぁしは危険なブロワーじゃないにゃ~」
「にゃ~にゃ~言ってて胡散臭い奴だぞガシュガシュ」
「取って付けたような語尾で信頼が置けませんザシュザシュ」
「…………」
帝国の上層部連中が気にしてなかったから忘れていたが、取って付けた語尾キャラ付けのプレイヤーはかなりの確率で変な奴だよな。うん、胡散臭い。
「えっ、でもぼくは信頼できると思うけど……」
「そんなんだからよく騙されるんだぞガシュガシュ」
「きちんと人を疑うと言うことを覚えてくださいザシュザシュ」
「でも少しばかり話を聞いてもいいと思うんだにゃ~にゃ~」
「そうですよ。一度くらい話を聞いても……うわぁ?!」
「痛って!?」
屈んでいる背後にそっと回り後ろから会話に紛れ込んだら鼻に後頭部をぶつけられた。俺も気を付けていたがこんなに大きくリアクションを取るとは思わなかった。減ったHPは少しだけなので放置する。
俺の顔に頭をぶつけた少年は、ぶつけた頭を押さえて擦っていた。痛覚を普通に設定しているのだろうか。現実と同じように痛みが引くのを待っていたので回復の水薬を頭にかけてやった。
「ごめんなのにゃ~。まっさかあそこまで驚かれるとは思ってもみなかったのにゃ~」
「いえ、こちらこそ回復アイテムを使っていただいて有難うございます」
礼儀正しく頭を下げる。その横で両手のサメワニがなにか言いながら体当たりをしている。もしも毒だったらとか痺れ薬だったらとかどうこう言っている。
「とりあえず話をきいてくれないかにゃ~。そうやって先々から嫌を向けられていると誰だって話ができないにゃ~」
「ほら、初めてのフルダイブオンラインゲームだからって疑いすぎだよ。僕だって本来の姿とは違うんだから」
「ちっ、わーったよガシュガシュ。おいてめえ、俺らになんかしようものなら腸食いちぎってやるからなガシュガシュ」
「坊ちゃんに免じて話をしてあげるよザシュザシュ。坊ちゃん裏切ったらその首が胴体から消えることになるからねザシュザシュ」
「いや~、よかったにゃ~。もう二、三度問答したら諦めてたとこにゃ~」
両手の二匹が落ち着いたところでようやく会話ができそうだ。それでも警戒はしているみたいでパペットの視線をこちらに向けている。
「じゃあまず自己紹介にゃ~。俺っちはアラバスター。敬称やあだ名はいらないから気楽にアラバスターって呼んでにゃ~。ちなみにレベルは50のまだまだ新人にゃ~」
「よろしくお願いしますアラバスター。僕の名前はワニベロスです」
「ワニ……ベロス?」
「はい! 僕がワニベロスで左手のワニがワニトロス、右手のサメがワニナノカ。全部繋げて一つの名前です」
「ワニベロス・ワニトロス・ワニナノカか。ワニベロスで区切るってことでいいのかにゃ~? ぼ~くの名前みたいに。……あ、ファミリーネームはザット・ワンにゃ~」
「アラバスター・ザット・ワンですか。かっこいい名前ですね」
「うちのマーブルカラーの管理AIから連想したからそれほどでもないにゃ~」
「こいつ普通に名前言いやがったぞガシュガシュ」
「危機感が足りないよザシュザシュ」
のほほんと自己紹介をしたワニベロスに気苦労が見えるワニトロスとワニナノカ。というか俺と会話しているのに普通に動いてるなこのパペットども。何かのスキルなんだろうか。
「んあ? おいおいなんだぁジロジロ見て。喧嘩なら買うぞこのデコ助がガシュガシュ」
「はんっ。奇異な目で見る人に教える義理はありませんねザシュザシュ」
目くじらを立てながらこっちに食って掛かる二匹。いやワニとサメだけど。つーか匹でいいのかこいつらの数え方。
と互いにメンチを切っていたらワニベロスがそのままの様子で説明をし出した。
「ワニトロスとワニナノカのことですか? これ僕の【与】でワニトロスたちの人格を映しているんですよ。一応僕の意思でも動かせるんですけど普段は彼らとの会話のため極力動かしてないです」
「うおおおおい!? なに喋っちゃってるのお前!! ガシュガシュ」
「はぁぁぁぁああ? 坊ちゃん、技文字は喋っちゃだめだよザシュザシュ」
「減ることもないから教えるくらいいいじゃん。まったく、僕だって人を見る目はあるんだよ」
「「そういうことじゃなくて! ザシュザシュ(ガシュガシュ)」」
「なるほどにゃ~。つまりはエイリアンハンドみたいに動いてるってことか。で、攻撃とかどうすんのにゃ~?」
「それは――むぐむぐっ!」
「だから喋んなってのガシュガシュ」
「これ以上情報をもらさないでくださいザシュザシュ」
口が軽すぎて両手の謀叛により物理的に塞がれたワニベロスがモゴモゴと反論している。これって俺が悪いよな?
「ごめんにゃ~。もう聞かないから解放してやってにゃ~」
「もごもご……ぷはっ。そうですか。でも直ぐにわかると思いますよ?」
「なんでにゃ~?」
「なんでって一緒に森から抜けるんですよね? 早速フレンド登録してパーティも組みましょう!」
「にゃ?」
「え?」
「おいおい、ただの知り合いになるだけじゃなかったのかよガシュガシュ」
「だってこんなに仲良くなったのにさよならは悲しいじゃないですか。ってあいたっ!? なにをするんですかワニナノカ。痛いっ!? ワニトロスもなんで殴るの!」
危機感も警戒心もないワニベロスの頭をパペットの手でバシバシと無言で叩き続ける2匹に、逃げることも隠れることも出来ないので頭を降りながら文句を言っている。演技じゃないとしたらエイリアンハンドをここまで再現出来てるなんて凄いなーこのゲーム。
エイジェンマ・フラグメント溢れ話
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|◎フ < レベルの上がり方
技文字のレベルは使っている文字に経験値配分量が多く、その戦闘時に一番使っていない文字には基本配分しか入らない。ぶっちゃけいうとポケットのモンスターの学習装置の配分。昔より楽に育てられるようになっててすごく楽。
戦闘の時に使えば使うほどに経験値が溜まっていきレベルが上がるほど二文字以降に使える文字の関連が遠い文字が使える。
【剣】なら最初は切とか鉄だけど、鋭や削、磨などの工程の部分から鍛、鉱、砕などの原料系などの文字も使える。限定文字の文字も出てくるが限定文字持ちではないためただの飾りくらいにしか使えない。と言うか限定文字取った方が早いほどレベルが必要。個別のではなく合計レベルが必要になるから。




