コウサギシズカイナ
強制的に与えられた『詐欺師』の職業。上昇率がTECとINT、SPにかかるのはいいが、やはり犯罪職系が加わるのは動きづらくなりそうだ。
「ちょっとあんまりにゃ~。詐欺を働いたことは無いのにゃ~」
「嘘です」
いきなり皇帝の背後に控えていた騎士が声を発した。虚偽の看破を行うスキル持ちなのだろう。それでもこの世界で詐欺に頼する行為はしていない。
「ふははっ、貴様自体詐欺の様なものだろう。新人だろうが弱者ではないだろう」
「いやいや、弱々の雑魚雑魚のブロワー捕まえて何を言っているにゃ~」
「そうです陛下! こんなレベル50程度の奴に下手に出ては他の雇っている奴等に示しがつかぬでしょう!」
両手を上げて降参していたら武勇が多そうな鎧の騎士が声をあらげ出した。
「そもそもこんな奴を拾わずとも他にも目ぼしい連中が居たはずでしょう。その中でも弱くて卑しいこんな雑魚を選んだことがわかりません」
「リンドス卿」
「黙れブラスタル卿! 私は陛下に申しているのだ。陛下! 其奴を捨て新たに雇った方が早いと思われます!」
おお、良いこと言うなあの鎧。俺はお前を押してやるぞ!
「ふむ、リンドス卿は私のしたことに不満を持つか」
「恐れながらも陛下、こればかりは口を出させていただきます!」
顎に手を当て考える仕草をする皇帝だが、予測の内だという雰囲気だったので良く部下を見ていることがわかる。いや、俺もこいつくらいなら半日で理解できそうだ。
「ならばお前が叩き出したらどうだ? 雑魚なら簡単に放り出せるのであろう」
「陛下の許しがあれば」
「出来るならするがよい。先に言っておくアラバスター。ここはまだ城の地下にあるダンジョン内であり、お前にかかっていたペナルティの緩和は解除している。それと」
含ませるように一区切りを置いたあとすごく嫌なことを言いやがった。
「復活地点はここではなくお前が居た町、ペナルティでの所持品のロストは最大にしてあるゆえ注意しておけ。リンドス卿はお前を殺して叩き出すつもりだからな」
「ファッキンエンペラー!!」
通常のペナルティなら甘んじて受けようと思っていたのに、全ロスって聞いたらはやる気を出さざるをえないぞファッキンエンペラー。
ダンジョンで得た武具の中から籠手、五角と六角の盾を両手に着けて剣を構えると文句を言っていた鎧が皇帝との間の場所に体を置く。
「泣いて逃げ出すのは今のうちだ」
「うえ~ん、ママ~ってか? 逃げ出したら後ろから真っ二つの癖に良く言うにゃ~」
「わかってるじゃないか。なら大人しく斬られることだな」
「降参って言ったら優しくしてくれるかにゃ~?」
「ゆっくり殺すなら出来るな」
「チッ」
腰に佩いた体格にあった大剣を抜くと正眼で構える。なんか粗暴なやつだけどきっちりと騎士してるんだな。
「それはそれとしてパンチ!」
「ふんっ」
タイミングを外して殴りに行ったが剣の腹で受けられた。なんで粗暴なんだよ。
「騙し討ちとはやはり卑しい奴だ。それしかできんとみる」
「騙し討ちとわかってるなら騙されろにゃ~。そんな強い鎧着てるハンデじゃないかにゃ~」
「騙せない方が悪いのだ!」
「そやにゃ~」
「なっ?!」
首をかしげると背後に現れる黒い影。こそっと後ろに取り出して蹴りあげていた蟷螂の頭だ。それを背後に回した剣で相手の顔目掛けて弾いてぶつけると、中に残っていた体液が飛び散り兜を汚した。
「なっ、なんなんだこれは!」
「蟷螂の頭なのにゃ~」
「そう言う意味では! 卑怯だぞ!
「卑怯千万、騙される方が悪いのにゃ~」
必死に兜に付いた体液を取ろうとしているが粘性もあり籠手を付けた手では拭い取れていない。その間に後ろに回り込んでから肩へ乗ると、開いている目の隙間に煙幕を叩き込む。すると中でも弾けた煙が関節や継ぎ目の隙間から吐き出される。
「うごほっごほっ……。き、貴様ぁ!」
「攻撃してもダメージが通りそうもないからしかたないよにゃ~」
「貴様も剣士なら正々堂々戦わんか!」
「え? わちし剣士じゃなか~よ。ゆるりとしようとしてたから職業はパン屋なのにゃ~」
周囲から若干のざわつきが起こる。それもそうだ。パン屋がこれ程戦えるなら別の職業だったらと言うのもあるだろうが、前見たブロワー自主職業アンケートでは戦闘、生産の順の人気だが生産のさらにニッチな飲食系を選ぶ人はかなり少なかった。つまりブロワー人気が無いものを選ぶブロワーが居るとはと言った感じなのだろう。どこ調べかわからないが。
「ま、しかたないのにゃ~。【波】【波打】【音響波】【大音響擊】、にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ」
「ぐぁぁぁぁぁああああ!!」
目を体液と煙幕で潰され、見えない状態から大音量で鎧を響かせる。四重強化の音のバーゲンセールでビリビリと鎧が震えている事から中が悲惨なことになっているだろう。
反射的に耳を押さえているが兜がある事を瞬間的に忘れていたのだろう。触れたことで思い出したようでむしりとる様に兜を放り投げ、中からはいかにもな厳つい壮年の男性の顔が出てきた。
「へいへーい、散々見くびってた雑魚に兜を奪われるなんてとんな気持ちにゃ~? 聞かせてプリーズにゃ~」
「ぐぐぐっ……。陛下! エクスカリバーの許可を!」
「ならぬ」
プライドを傷つけられたからかなぜかエクスカリバーの使用を皇帝に求めた。ダンジョンだからと言っても城の地下だからだろうか? その訴えは拒否された。
「私はお前の力でと言った。だが、貴殿に与えたエクスカリバーは身体能力でもスキルでもない。使用はゆるさん」
「くっ。…………ふぅ」
「どうしたのかにゃ~? 騎士様自慢のエクスカリバーが使えなくて意気消沈の沈なのかにゃ~?」
「この私としたことが見くびり過ぎていたようだ」
肩や腰などに手を回し鎧を外し始めると技能書を読み耽っている俺に視線を向ける。鎧を外すことで自らの油断を無くすつもりなのだろうか? まあ、鎧なしだとこちらの攻撃が通りやすそうになるのだが。
「だが、これで私は油断をせん。行くぞ、【スラッシュ】【パワープラス】【スピードプラス】……」
「ひゃー、もりもり強化しているにゃ~。怖いにゃ~」
「この一撃で終わらせてやる。【大破砕……」
「だからもう終わらせるにゃ~」
未だに技能書のスクロールを開いていた『俺』が揺らめいた瞬間にガクッと騎士が膝を着いた。驚いた顔で気絶した騎士を見ながらコルク銃の銃口に息を送る。
「準備が遅すぎてこっちの準備が整ってしまったのにゃ~。スキル【次前準備】【姿写し】【状態沈殿】にゃ~」
べらべら喋っていたから『詐欺師』に就いたことで覚えられるようになったスクロールを開いて習得する時間があった。そしてスキルを習得してから発動するまでも簡単に行えた。
最初に発動したスキルは【次前準備】。次に使うスキルをその前に発動したことにするスキルで、性能はレベル✕2秒まで遡ることができる。そして【姿写し】――行動したことがある行動をレベル✕2秒間ループ再生のようにその空間に残し発動した本人の影を薄くする――を【次前準備】で発動してスクロールを読んでいる姿を残していた。そして状態異常の副作用、気絶なら目眩を抑える【状態沈殿】を使用し、背後からコルク銃から気絶弾を手に取って守るものがなくなった頭へコンコンと気絶を引くまで叩き続けた。言葉にすればそれだけである。
コルク銃を使ってないので銃口に息を吹きかけたのは要するにポーズである。
「う、う〜ん……」
「うわっ、寝てろにゃ〜。【放電】あばばばばばば?!」
「うわばばばばば」
簡単に起き上がってきたので別に習得していた【放電】を使って痺れさせたが、自分も感電してしまう欠点があるスキルなら取らなかったよ。
水薬を取り出してHPを回復して、起き上がった騎士を見る。
「くくくっ、やはり詐欺師ではないか!」
「わおっ、詐欺師だったのにゃ~? 天狗じゃ! 天狗の仕業にゃ~!」
「くっ、き、貴様……このような……」
「卑怯とでも言うのか? お前も良く言っているではないか。戦場で死んだあとに文句を言うのかと。ならば既に死に体のお前は文句を付ける権利はない」
なにやら言いかけたがそれを噛み砕いて呑み込み、不承不承の表情で黙った。そこは弁えるんだね。
なので勝者の権利として思いっきり不愉快な勝利の煽り表情を向けておいた。どやどやぁん。
エイジェンマ・フラグメント溢れ話
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|◎フ < 周囲の騎士について
アテーシュ帝国の皇帝直近の部下たち10名からなる十剣と呼ばれる近衛騎士。
それぞれ騎士団を擁しているが、十剣は皇帝の命令が第一なのでそれぞれ城内の雑務だったり強大な魔物だったりを大隊長、中隊長、小隊長ごとにいろいろしていたりもする。と言うか作ったはいいが運営は大隊長以下数名で行っているので十剣の数人は部下の顔を覚えていない人もいる。
今の代になって十剣は年齢で引退したり、前皇帝に恩があった者が辞めたりしてそこそこ入れ替わりがある。が、ブロワーを雇って裏十剣を作っていたりする。
今の皇帝によって雇われた裏十剣のブロワーはヒーローだったり、均衡を求めてたり、愛の伝道師だったり、常に間が悪かったりと問題児ばかりなので十剣からはいい顔はされていない。まあ、ぽっと出がしゃしゃり出やがってこの野郎的な意思を向けているのが過半数を超えている。
強さは十剣(10人)≦裏十剣(現在8人)だが1対1だとまだ十剣の方が強い。対人戦闘経験の差と限定技文字所持者が三人の力量なので追加メンバーでどうとでもかわる。
ちなみに裏十剣の所持して限定技文字は【超】【裁】【愛】。クランには所属してたりしてなかったり。




