ワザトラナイカラ
体が縫い止められ動けなくなったならアイツによってHP全損なのは火を見るより明らか、予想するまでもなく事実極まることなのだ。必死に距離を取って時間を稼いでいたのにこの様か。
「お礼参りじゃコノヤロー!!」
死ぬことが確定した瞬間にコルク銃と主要なアイテムボックスは外しておいたので消えてはないだろうが、あんなところに放置していたらいつか壊されてしまう。
死に戻ったした牢屋から即ダンジョンに飛び込む。毎回ダンジョンの入り口は入る度に変わっていたが、だいたい牢屋からの相対的空間軸の一定範囲内とこの数日で解明しているので、先ほどの広間の場所は脳内マップに記憶している。マップなし攻略は幾度もしてきているから脳内マップは朝飯前だ。あとはあれが敵対生物がいないとすく消えるのかだが、視界内にタイマーが表示されているので消えてはいないだろう。あとは速度の問題だが速度上昇の水薬を服用してダンジョン内に突っ込んでいく。
「邪魔だ小鬼ども道を開けろ!」
バシバシと何度も弾いたヨーヨーで最短ルート上の小鬼やら猪やら、小型は倒し大型はすり抜けてさっきの大部屋にたどり着く。
そこにまだ消えずに浮遊しているそれを尻目にまだ中に入らず周囲を観察する。再挑戦は可能なようでこちらからは謎の壁はない。
大部屋に入ると急いでデスペナで消えなかったアイテムボックスを拾い、中から石や剣等を投げて牽制する。直線的に飛んでいく武器群をコルク銃での防御を使用してガードしているらしく弾かれるがそのまま投げ続け、その弾幕を目眩ましにして死ぬ前に落としたコルク銃やアイテムボックスの場所に移動して回収する。
日が変わるまで当たり前に残り十時間以上。デスペナ逃れはもう使えないから死ねばこいつとの再戦はない。つまりいつも通り。
「これで最後っにゃ~!」
五指の間に挟んだ刀剣を投げて、さらにコルク銃を打ち出す。それらは当たる直前に弾かれ周囲に落ちて刺さったりしている。
「隙、有りだにゃ~」
その間に背後に回った俺はローリングソバットをお見舞いし頭を蹴り抜いた。だが、蹴った脚には当たった感覚がなく、頭の辺りのローブがへたりこんで空っぽの空間が現れた。
「まさか頭は囮!!」
「━━━━━━」
「ぎょあっ、中身がないってバレたから無軌道で剣振り回してきた!! 死んでしまうにゃ~」
前面だと思ってた方からIターンしてきた剣をかわして距離を取ったが、あの調子だと伸びるな。死に覚えゲーシリーズをバンバン放出する会社から出た『煉獄ムラマサ4』の第八ボスに槍使いの鬼神イゾーフォレストの槍を突く攻撃があるのだが、必須道中で敵を倒しているとランダムてイゾーフォレストにバグが起こり、5%の確率で射程三倍の突きが混ざってくるのだ。
そして一発食らうと残りの連続突きを全て食らってしまう鬼畜攻撃をしてくるときがあるのだが、最初は三連続だがHPが減ると十から最大五十に増える突きにそのバグが重なると追尾も付いてくるから本物の森伊蔵もビックリな挙動をしてくる。グラフィックの都合で連撃の纏まったエフェクトが蛇の様に向かってくるのだ。
しかもイゾーフォレストも伸びるのでその様相を界隈ではスネークイゾーだとかイゾーーーーーーーーーフォレストだとか、ユグドラシルイゾーなど言われて愛されている。
「だけど、ところがどっこい」
俺の目の前で剣先が止まる。ローブに繋がった柄に後ろからヨーヨーが剣に絡まっているからだ。俺の手から軌道操作で曲げて、地面に投げた後突き刺さったままの剣の柄に引っ掛かりUターンして時縫刻限劍の剣に絡まっているのだ。
失敗した保険で剣を止めるために飛ばしていたのだが中身が無いのならこのまま奪ってしまおう。
ヨーヨーのゴムを後退しながら縮めると地面に突き刺さった剣が抜けて倒れる。そして、時縫刻限劍の剣と一直線に俺の手と繋がった。
「うんとこどっこいせー! それでも奪えません!」
やはり生物由来の膂力となるSTRは無機物、または幽体準拠のSTRに勝てるわけはない。と言うか30倍のレベル差がある相手に使う手ではない。
と言っても他に手はないので綱引きを続ける。
「少しくらい力を緩めてもいいじゃないか。ほらひっひっふー」
「━━━━━━」
「って、体ないから呼吸法意味ないやないかーぁぁぁぁああ?!」
ボケた拍子にこっちの力が抜けて引っ張られ時縫刻限劍の上を飛び越えた。その先で上手くダメージが無いように着地するとヨーヨーのゴムを絞る。
「━━━━━━」
「はっはー、油断したにゃ~? 一瞬あればぐるぐる絡ませることは出来るんだにゃ~」
それくらいの技術が必須になってしまった簡単だったはずの別ゲーで、そこで条件反射の域に持っていった捕縛技術を駆使してローブを絡めとった。完全に潰れたことで中身が首なしか合成獣的ななにかだったと言う線は消えた。さて正体はローブか剣か。
「痛ったぁあ?! このゴム痛覚通ってんのかい!」
絡まっていたヨーヨーのゴムを布故の可動域で切って捕縛から逃げた。その瞬間に腕に通る痛みにHPを確認すると減っていた。
いや、その説明書いておけよ!
回復の水薬を被ってHPを回復させる。一撃で全損だから意味がないって? ただの条件反射だよ。
今手持ちの文字技能と技文字は近距離主体しか持ってないから懐に入る と何も出来ない。くるまれて黒髭が危機一髪してしまう。
「ならスキルのほうかにゃ~」
現在持っているのは【弾き】【奪う】【水魔法】【風魔法】【火魔法】【酵母促進】【握る】くらいしかない。【奪う】は直径(レベル×1m)以内の物を手に入れるくらいで、【酵母促進】は文字通りパン用、【握る】は握力を強くする程度。頼りになりそうな魔法関連は玉とちょっとした日雨風になるくらいなのと生活用の3つずつだからかなり頭を捻らなければならない。
「先ずはあの固定された刃かにゃ~」
見えないが触れると言うことなら、俺の手元に残ったヨーヨーのゴムを回すと近くに1つあった。あっぶな。時縫刻限劍をコルク銃で牽制しながらそれに【水の玉】をぶつけると水がかかった状態になり表面を流れる様子が見える。つまり肉体以外でも当たるし物がのるってわけだ。
「ならあとは簡単だにゃ~。【雨模様】」
周囲に弱い雨を降らせる魔法を使い水浸しにしていく。それによって浮かび上がった固定された斬撃が4つ。固定された見えない刃が見えるようになって回避がしやすくなったぞ!
5%だけな!
「【奪う】アンドリリース! 【奪う】アンドリリース!」
剣に絡まっていたヨーヨーの風船部分を回収して投げる。それを繰り返し行い距離を保つ。未だにローブなのか剣の方なのか本体はわからない。2回目死ぬまでとここまでの道のりで残り時間は20分になっている。若干何で時間一杯まで待ちをしなかったのか後悔が出だしたがここまで来たならやけっぱち、最後の最後まであがいて見せることにする。
エイジェンマ・フラグメント溢れ話
」]
┃◎フ < 限定召喚について
限定召喚とはその名のとおりに限定されて呼び出されることである。
とある術式の結果イレギュラーとなるものが引っかかった結果起こる現象であり、あまり狙ってできるものではない。しかし偶然それに会ったなら個人の裁量に任せることになる。倒すでも逃げるでもできる方を選べばいい。選べたらの話だが。
この現象が起こる術式はダンジョンや自然界の召喚、召集、招待の3つが特に高い。無作為に呼ばれたなら紛れ込んでいてもしょうがないじゃないか。遭遇した人物がブロワーならクエストという形で表示されるが、一部を除いたヒューマリアンなら災害に会ったと思って諦めるしかない。勝利条件がわからないから。
この現象で呼ばれるものは普通の世界に存在しているボスクラス以外のボスクラスモンスターである。いわゆるレイドボスと呼んでもいいものだ。一人ではまず勝てない。ましてやレベル50など路傍の石である。故に倒す以外の勝利条件が備えられる。災害には対策は必要事項だからね。
この限定召喚を乗り越えると対峙したモンスターに合わせて称号(ウインドウに表示されるだけのマスクデータ)を得られる。得たからと言って見せびらかすこともできない、ステータスに影響を及ぼさないものなのでたとえ遭遇した人物がいても気にしている人は少ない。たまにつまらない臆病者なんかの称号も生成されるから隠す人は大半である。




