悪役令嬢は、長き眠りにつき王子を待つ。
ああ、そういうこと。
道理でいくら努力しても、皆に嫌われる訳だ。
―――ここは乙女ゲームの世界で、私は悪役令嬢だったのだから。
私は別に転生者というやつではない。
自分の運命なんて知らなかったけど、多分、別に悪い人間ではなかったはず。
公爵家令嬢として生を受け、貴族として教育を施され、立派な淑女として、孤児のための寄付を募るために綺麗な刺繍を何枚もハンカチに刺したし、孤児院にもよく慰問で訪れた。
リンネル王子は幼馴染で、大好きだった。
好かれる努力は足りなかったかもしれないけど、そんなの政略結婚なら当たり前だし、王子妃になるためにその分努力をしないといけないので、恋愛にかまけている時間はなかった。
でも世間一般の、理想とする王子の婚約者は演じられていたはずである。
―――なのにどうして!?
上位貴族として礼儀に関して、何度か注意くらいはしたけれど、別にヒロインを虐めていた訳でもない。
なのに、気が付いたら、そういうことにされていて、いつの間にか友人も味方もいなくなった。
そして、なぜだか分からないけど、処刑されることになっていた。
家族ですら味方になってくれない。
本当は絞首刑の予定だったが、元婚約者として、幼馴染として、リンネル王子の温情だろうか、処刑は毒入りのワインを煽るというもの。
―――何が悪かったの?私は何も悪いことをしていない!
仄暗い地下牢で、私は最悪の生を終わらせようとしていた。
そんな私の心からの叫びを聞いて、神様が気の毒に思ってくれたのか、毒入りワインを煽った私に神様が種明かしをしてくれた。
この世界はとある異世界の乙女ゲームの中の世界で、私はそこで悪役令嬢であるということ。何度リセットを繰り返しても、どんなに足掻こうと、悪役令嬢は決して幸せになることはできないということ。
そんな理不尽なことってある!?不公平すぎる!
次の世では神様が幸せにしてくれるというが、私の魂は転生できないとのこと。
結果、リンネル王子に見守られながら、私は、毒入りワインを煽り、そのまま神様によって、コールドスリープさせられてしまった。
毒入りワインを飲んで、眠るように死んだはずの私が、突然クリスタルに覆われて、さぞやみんな驚いたことだろう。
私はクリスタルに覆われて、300年もスリープする。眠りながら、何度も何度もゲームの世界を夢見た。悪役令嬢としてではなく、プレイヤーとしての視点で。
攻略相手をいろいろ変えながら、こう答えたら攻略できて、素敵なスチルがゲットできるとか。
ああ、こんなマニュアル通りの男、何で好きになったんだろう?私の人生無駄だったなと思いながら。
次に目が覚めた時は、今度こそ真実の深い愛を知ることができるだろうか?
そして300年後、ついに私は目覚める。
どうやら王国は発展したらしく、魔法と科学が進歩した世界になっていた。
私が夢の中で見た、プレイヤー達が住む世界と前の世界を融合させた感じ。どうやらヒロインは異世界転移者だったらしく、魔法の世界に科学を取り入れたらしい。まさかこれもゲームの続編だったりするのだろうか。
ゆっくり目を開くと、黒い髪に蒼い瞳の青年。300年前、最後に見たリンネル王子の顔があった。
あ、でも髪の毛の色と服が違う。
「おはよう、クリスタ嬢。私はファウラ国のラクトだ」
「……っ……」
音にならない声を出す。どうやら眠り過ぎて、声が出ないようだ。
ラクトと名乗る王子と同じ顔をした男が、私を抱き起こして、水を飲ます。
「……あ、あなたは、リンネル王子でないの?」
「リンネルは、私の祖先になる。リンネル王は死ぬまで悔やんでいたと言う。幼馴染のあなたを追いやったことを。結局、リリア王妃は妃教育が不十分で、王妃としての責務はきちんと果たせないし、異世界の文明に未練があって、なんとかこっちに科学文明を根付かせようとしたけど、なかなか上手くいかず、ついに子を産んでしばらくした後、異世界へ戻ってしまったそうだ」
「私はこの世界で、これからどのように生きればいいの?」
「好きに生きればいい。そのために君を眠らせたんだ」
「えっ?……神さま?」
――――――――
美しい紫色の瞳を大きく見開き、君が呟く。
私はずっと願っていた。君の幸せを。
10歳の時に、初めてクリスタルに包まれた君を見た時から、運命の人だと分かった。一目惚れだった。
金糸のように美しい髪に、透き通るように白い肌。その瞳は開いたら、何色だろうかとずっと想像していた。
君を目覚めさせるために、科学と魔法の勉強を必死にして、コールドスリープの謎を解いた。同時にコールドスリープさせる方法を編み出した。
その時、僕は悟ったんだ。
僕が過去の君を助けに行かなければと。
ヒロインのリリアはこの世界を去る時に一冊の日記帳を置いて行った。王族に伝わる、禁断の秘密の書。
そこに書かれていた事実。それはこの世界が乙女ゲームの世界で、自分はヒロインで、異世界から転移してきたということ。
僕は必死に学び、時空を科学と魔法の力で渡ることを可能にした。
そして、君を殺させないために、君の処刑の前に髪の色を金に変え、リンネル王子のふりをして、君に毒入りワインと偽り、コールドスリープさせた。
そこで、初めて起きた状態の君に出会い、君の瞳の色が、綺麗な紫色だと知ったよ。
君にリリアの残した日記を基に、ここが乙女ゲームの世界を教えたのも僕。
君は何もしなくていいよ。
今度は僕が君を振り返えらせよう。僕のお姫様。
読んでくださり、ありがとうございます!
別の連載途中ですが、流行りもの?の短編にトライしてみました。
思いつくままに書いたので、あとで改稿すると思いますが、よろしくお願いします( ^ω^ )