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wonder hole -last player Chain-  作者: にゃこ
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流れ行く日常-2


AM3:30

タイノス戦前線に到着。

水を断たれ、混乱する軍部に攻め込んだタイノス。生き残れたこちらの兵はごくわずか。

前線はかなり後退し、森深くに拠点が敷かれている。生き残り兵たちもほとんどが負傷している。まずはその兵達を国へ送る任務が通達されそして同時に驚くべき命令が下された。


「残りのお前たちの任務は記録だ。この戦、私と直属部隊のものだけでかたをつける。」


静まり変えた場がざわめき立つ。

それもそうだろう。俺たちですらその事実は知らないでいた。この場にいる兵士たちをこの一言で黙らせることなどできない。恐れを抱きながら、俺は確認する。


「女王。良いでしょうか?」

「なんだグビド。」

「女王が戦の前線に出られるということでしょうか?」

「そうだ。」

「恐れながら…タイノスの軍勢は二千は超えています…」


ニタリと笑う女王。

その表情は俺の口をふさぐ。


「問題ない。私一人でやる。これより進軍を開始する。親衛隊は私の援護に勤めろ。」


そう言って、女王は兵士の隊列を割って歩く。

その顔は恐ろしく美しく、そして幼い子供のように無邪気だった。


先ほどまで乗っていた移動用ヘリに乗り込む女王に遅れを取らないよう、俺らは急ぎ駆け足でヘリへ向かった。燃料補給は到着と同時に指示されたのか完了していた。


AM3:50 離陸


この時間なら移動は容易いだろう。

タイノス軍に奪われた、前の基地があったドストボの近くまで行き、忍び寄り基地襲撃を起こすのだろう。誰もがそう思っていたが違った。


「このままドストボまで飛びなさい。」


誰もが驚き止めにかかた。

けれども女王は笑って何も聞こうとしない。


AM 4:00 敵陣レーダー範囲内に到着


ヘリの扉を開けるよう指示がなされる。

突風が皆を襲う。

女王の顔は高揚し笑っている。

味方だというのに恐怖が俺を襲う。


打ち込まれる銃声に皆がどよめく

同時に女王の声が響く。


「皆の者!!!観ておけ!!!」


振り上げられた右手が勢いよく振り下ろされる。同時に放たれる閃光。

あたり一帯は火の海へと化した。


たった一振り。


見たこともない力に圧倒された。

誰もがそれを恐怖していたはずなのに、瞬く間に歓喜へと変わっていった。


事態を受け止めれない。

俺がおかしいのか?

いや。違う。

ジョシュアやゼティアも同じ反応をしている。

狂っているのは思考を止めた他の仲間だ。


女王万歳が注がれるなか、震える手を必死に隠すことしかできない。


AM 4:50 タイノス軍中央基地 ヘイツィ上部


ドストボへの攻撃が瞬きをする間に終わってしまったので、タイノス軍は我らに気がつくのが遅れ行動が後手になっていた。


けれどもタイノスもバカではない。

我らのヘリを撃ち落とすために必死に攻撃をする。けれどもそのどれもが無駄な足掻き。

女王から繰り出される炎は何者をも焼き尽くす。


上空の攻撃が止むと女王の声が久々に聞こえた。


「降りるぞ。」


敵陣の中に降りるという滅茶苦茶な行動を誰一人止めるものはなかった。


下降するヘリは一機。

浴びる銃弾は炎の壁によって守られ、煙が辺りを埋め尽くす。

銃声が止み、煙が引く前に女王は動いた。


「こい。他のものは後方援護に回れ」


そう言って、ジョシュアを呼びつけ、ヘリから降りたった。

俺たちもそれに続き降り立つ。

まっすぐ進んで行く2つの影。

響く聴きなれない声という声。

放たれる閃光。


それは女王だけではない。俺たちにも注がれる。流れる玉は自分が戦場にいることを思い出させる。

悲鳴があちこちで響く。

後方支援だからといって、安心はできない。

女王の後ろを守らなくてはいけない。彼女は全てを相手などしていないのだから。


魔法を扱える数人にゼティアは防御魔法を指示する。この状況下でも的確に臆することなく仕事ができるゼティアの才は天性のものだろう。

ゼティアは俺に視線を送る。その意味はわかる。俺は俺の仕事をするのだ。


「皆!!女王の後ろを守るぞ!!!怯むな!!」


AM5:25

それは突然であった。大地が突然揺れだし、敵味方共に立ってはいられなくなる。

空から流れ落ちる瓦礫から身を守るのに必死だ。何人かはやられている。

大地の揺れの中、ジョシュアが女王をおぶりこちらにむかっていた。

そしてその後方に見えるのは天高く揺らめく降伏の旗印。


歓喜が響き、声なき声が地を鳴らした。


たった数時間で1ヶ月も続いた戦いが幕を閉じた。そんなことあるのか?

言いようのない不安が渦巻く中、俺の心のどこかが笑った。


だからこそここにきたのではないかと



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