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新撰組異聞


一章 新撰組来る


近藤勇以下隊長助勤たちは真夜中の四条通りを西に歩んだ。酒に酔ったとは言え、不覚を取る一行ではなかった。徒歩で壬生村まで行こうと言い出したのは永倉新八だ。祇園から壬生村までは少し距離がある。今では面影も無いが当時はのどかな田園地帯だった。一同それが良しとし、下駄を鳴らしながらゆっくりと歩いた。行く先には居酒屋の明りもあったが進むにつれて道は暗くなっていった。新撰組一同の頼りは提灯のみである。先頭は高下駄を派手に鳴らす沖田総司。つまらない冗談を飛ばしながら歩く。続いて近藤、土方、永倉、原田、井上、山南、監察方の吉村、最後に斉藤一が着いた。茹だるような夏を過ぎ、秋に差し掛かる心地良い時期だ。

「おやあ?霧が出て来ましたね、局長」

「うむ。総司、油断するな」

ごく稀に濃い霧が出ることはある。しかしいつになく濃く、重い霧だった。壬生村の八木家まであと少しだ。

山南は1人疑問に囚われていた。

「おかしい。山間ならまだしも壬生村でここまで霧が出るとは…」

山南も酔ってはいたが冷静さは欠いていなかった。家屋もまばらで刺客に襲われる心配はないだろう。しかしなにかが違う。山南は吉村に聞いてみた。

「確かにこの霧は事の外濃いですね。辺りに気を付けます」吉村貫一郎は監察と剣術師範を兼ねていて、性格も良く、剣の腕も確かだったので隊士たちからも信頼を置かれていた。酒の席でも酔う程飲まない。辺りに気を配る。原田はしこたま飲んでいて上機嫌だった。この後自分たちがどうなるなぞ気にも止めなかった。


一行はいつしか深い霧に包まれていた。酒を飲み過ぎたか土方は言った。

「けんどもこの辺りはこんなに霧が濃かったかね?永倉君」

「さあ、わかりません。今日はたまたまでしょう」

皆が一様に異変を感じた時にはもう遅かった。酒の為だろうか地面がふわふわと感じる。酒が回っている…沖田が何かを言ったのは聞こえたが皆の意識は眠りに誘われていた。吉村が叫び、刀の鯉口を切ると同時に皆が意識を失った。強烈な眠気が襲ってきた。


洋子は道場の異変にいち早く気がついた。泥棒の類いだろうか?下駄が沢山玄関にある。剣道着姿の洋子は忍び足で道場まで進んだ。そつと覗いてみると袴姿の男達が寝転がってイビキをかいているではないか!泥棒というより疲れ果ててここまでたどり着いたという風だ。朝練どころではない。あわてて家に向かった。丁度朝食で皆が集まっていた時だった。

「ちょっと聞いてよ道場になんか変なやつらが寝てる」

「お前昨日帰る時戸締まりしたのか?」

兄の将太が答えた。

「お前いつも居合するとき道場に最後になるじゃないか。どこかのオッサン連中じゃないのか」

洋子は反論した。

「それが違うのよ。和服だし刀腰に差してるのよ」

「新手のコスプレ集団じゃない?」 

次女の遥が答えながらご飯に箸をつけた。

「わかった。父さんが見てこよう」

私も私もと結局、家族一同で道場の様子を見に行く事にした。90歳のお婆ちゃんも一緒だ。

念の為に父が木刀を持つ。将太と洋子も持った。

時計は6時を差していた。中村家の朝は早い。家族総出で道場に向かった。すると驚きの光景が飛び込んできた。刀を腰から抜き、右に置いた男達が正座していたのだ。角ばった顔の男が話かけてきた。

「そこもとはこの道場の主ですか。私は新撰組局長、近藤勇です。ここはどこでありますか?」

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