第8話・6人のステータス
これは2話目です。
ゴドリック大司教の後に続いて、中に入った6人は謁見の間の、豪華さに驚いた。
しかし女神と名乗る人物の居城を見たおかげか、それほど衝撃は受けなかった。
赤い絨毯の上を進む。
赤い絨毯はふかふかで、今にも横になって寝たい。と衝動に駆られる程である。
だが、そんな事は出来ない。
前を向いて6人は進み、ゴドリック大司教が止まった場所より、二歩分後ろで止まる。
「ランギルト国王陛下。見事勇者様の召喚に成功致しました。これも女神様の思召しかと存じます」
ランギルト国王陛下と呼ばれた人物は、金髪碧眼の40歳頃の男で、立派な玉座に座って居て、身長は正確にはわからないが、隆之と同じぐらい、つまり180cm代であろうと予想される。
顔も整いダンディな雰囲気を持ち、髭も綺麗に整えて居る。
「……うむ。ゴドリック大司教殿。貴殿を疑うわけではないが、彼らが本当に勇者殿なのだろうか?文献に載っている記述だと、勇者は一人だと聞いて居たのだが?」と意を決してランギルト国王はそうゴドリック大司教に質問する。
ランギルト国王も敬虔な女神教の信者である。
なので、女神を疑う様な事は言いたくはないが、聞く必要があった。
「はい。ランギルト国王陛下の疑問を仰る通りかと。小生もいささか混乱して居ります。なので、此処でお集まりの諸侯の皆様方も、さぞ興味があるかと存じます」と言い辺りを見渡せば、列席者の貴族達は頷く。
「ですので、鑑定石を使いまして疑問を払拭致しましょう」と宣言した。
鑑定石は希少なもので、持っているのは貴族以上である。
鑑定石にもランクがあり、下の階級だと、名前と年齢・性別しかわからなかったりするが、上位の鑑定石だと、その者の名前、年齢、性別は勿論のこと、職業やレベルと呼ばれる物まで判別出来る。
「此処に、上級の鑑定石をご用意致しましてございます」とゴドリック大司教は懐から鑑定石を取り出す。
「「「おお!」」」と感嘆の声が聞こえる。
上級の鑑定石はその数が少なく、大貴族中の大貴族で無ければ、持っておらず。
持って居たら家宝に相当する物である。
更に懐から転写版を出す。
これは鑑定石に表示された物を、周りの人達にも見えるように、空中に鑑定石の内容が浮かび上がる、これまた希少な物である。
一見ただの水晶の様に見えるが、その色合いで鑑定石のランクは決まる。
水晶の色が濃い色程ランクは高く、薄い色程ランクは低くなる。
因みに色は青である。
「では、此処にどちらの手でも構いませんので、手を置いて頂けませんか?」とこれまで置いてけぼりにされて居た、6人にゴドリック大司教が振り返り、お願いする。
まあ、この状況では断ることは難しいだろう。
「わかりました。手を置けば良いんですね?」と隆之が最初に自ら進み出た。
「はい。手を置くだけで十分です」
それにゴドリック大司教は答える。
隆之が鑑定石に手を置くと、一瞬だけ光、転写版により空中に鑑定の内容が投射される。
『タカユキ・イガキ
職業:勇者
Level:1
年齢:17歳
-スキル-
光剣lv1
-称号-
女神の加護
異世界人』
と表示された。
「おお、やはり勇者様であったか」と周りの者達は安堵の息を漏らす。
ならば、他の五人も勇者なのでは、と期待が膨らみ。期待の視線を残りの五人に向ける。
「なら次はうちがやるわ」と朱音が名乗りを上げて、水晶に手を置く。
『アカネ・イイクラ
職業:従魔師
Level:1
年齢:17歳
-スキル-
支配lv1
-称号-
女神の加護
異世界人』
「おお!勇者ではないが、希少な職業である従魔師ではないか。あれなら魔物を捕まえて従わせれば、戦力の底上げにもなる。それに魔物が魔族に操られているかどうかも、判別出来るぞ」
魔族の中には従魔師が数多くおり、野生の魔物を誘導して嗾けてくる事がある。だが、従魔師が居れば、それを事前に察知出来たり、逆に手懐けて反撃も可能になる。
「では、次は私がします」とアメリアが、宣言して一歩前に出て水晶に手を置く。
『アメリア・シバハラ
職業:戦乙女
Level:1
年齢:17歳
-スキル-
絶対防御lv1
-称号-
女神の加護
異世界人』
「おお!戦乙女とは、女神様の使徒に相応しい職業ではないか!」と此方も感嘆の声が聞こえる。
「では、次は私がしますね」凛とした声で奏が宣言して、水晶に触れる。
『カナデ・スズラ
職業:|巫女
Level:1
年齢:17歳
-スキル-
祈りlv1
-称号-
女神の加護
異世界人』
「ん?あれは何だ?初めて見る職業だな」と此処で初めて周囲の者達が、困惑の声を上げる。
だが、新しい職業と言うことで期待も高まる。
次に水晶に手を置いたのは勉である。
『ツトム・ヤマダ
職業:|賢者
Level:1
年齢:17歳
-スキル-
四元素魔法lv1
-称号-
女神の加護
異世界人』
「おお!賢者だ!魔法職の最高位職だぞ!」
「ああ、凄いな」と再び周囲に活気が戻る。
最後はヒサシである。
無言で水晶に手を触れる。
『ヒサシ・ゴウダ
職業:|簒奪者
Level:1
年齢:17歳
-スキル-
奪取lv1
-称号-
女神の加護
巻き込まれた異世界人』
「また見たこともない。職業だな。それに称号も少しだけ違うな」
「だが、強力な職業だろう」と次々と隣の貴族と、意見交換を始める。
「如何でしょうか?国王陛下」とゴドリック大司教がランギルト国王に問う。
周りの貴族も静まり返り、ランギルト国王の答えに耳を澄ませる。
「うむ。勇者殿は一人しか居らず、残念ではあるが、他の者達も優秀な職業であろう。2名ばかりわかりかねるが、此度の召喚は成功である」とランギルト国王が答えると、周囲の貴族達もホッと安堵の息を漏らして、ランギルト国王の勇者召喚の英断を口々に賞賛する。
そんな中、隆之が手を上げる。
「何かな勇者殿?」
隆之に周囲の視線が集まるが、当の隆之はそれを気にせずに答える。
「先ずは、此処がどこで、僕たちが何のために呼ばれたのか。を説明してはくれませんか?」
「ん?ゴドリック大司教殿は説明しては居なかったのか?」
「はい。陛下の口からの方が、より良いと判断いたしました」
「ならば、余の口から話そうではないか。そう貴殿らを召喚した訳それはーーー」
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