表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リザードマン戦記  作者: 灰色 人生
第1章 ミナフルレア王国西部戦線編
3/11

第3話・ウェスタンド攻略戦・後編

 


 《ウェスタンド守備軍・隊長》


 最近魔王軍の動きが活発との事で、こんな辺境の街に沢山の軍が派遣されて来た。



 辺境の田舎街だが、この街ウェスタンドは結構な大きさを持つ。


 何せ辺境であるから、貴重な薬草や高価な魔物の素材が取れるからだ。


 魔族領に程近い場所だが、ウェスタンドには、警備隊600名と守備軍400名しか居ない。守備軍普段は、警備隊の手伝いをしている有様だ。


 何故魔族領に程近くあり、ある程度の規模のウェスタンドに、僅かな守備軍しか居ない理由。それはウェスタンドと魔族領の間には、広大な樹海が広がっており、多数の凶暴な魔物が生息している。


 その為に此処に魔王軍が、攻め寄せてくる可能性は極めて低い為だ。



 だが、状況が変わった。



 魔王軍はどんな手を使ったのか、あの樹海を突破して近隣の都市や街に攻勢を掛けて来た。



 その為に、徴兵を急遽実地して、取り敢えず数だけ揃えて2万近くが、此処ウェスタンドに派遣されて来た。



 数だけは立派だが、碌に戦った事もない農民の集まりだ。



 辛うじてまともなのは、魔法部隊と指揮官だけだ。


 ミナフルレア王国は、魔術師のレベルはそれ程高くないが、他国よりも数は多い。その為に魔法王国と呼ばれる事もある。



 はぁ。この街には攻めてくるなよ。




 2日後



 思いも虚しく、ウェスタンドの街に魔王軍が、襲来して来た。



 だが、見たところ数は五千強程度だ。


 もしかしたら、後ろの森の中にもまだ居るかも知れないが、そこまで多くはないだろう。



 これなら勝てるのでは?と隊長が思って居ると、王国軍の司令官に呼び出されたので、指揮所に向かう。


 中に入ると、指揮官が険しい顔をして居た。


「よく集まってくれた。見たところ何人かは楽観視して居るようなので、先に告げておく。

 確かに魔王軍は五千強から六千だが、侮る事なかれ。敵の軍旗と装備それに種族を見るに、敵部隊は黒龍将軍が率いる精鋭部隊だ」と告げて来る。


 黒龍将軍か。大層な名が付いた敵だな。と思った。


「対して此方は、数は多いが大半が徴兵で、集められた農民が殆どだ。なので攻勢には出ずに籠城戦をする。他の所へ援軍を要請して居るが、他の場所にも魔王軍が現れて居るので、望みは薄いだろう」



 どうやら不味い相手らしいな。



 その後は、簡単に作戦の説明を受けて配置に着く。



 敵がワイバーンなどを出して来たのに対抗して、此方もヒッポグリフ部隊を出すが、数は圧倒的に不利だ。



 それに敵の魔法部隊は強力で、此方の魔法部隊よりも威力・距離共に向こうの方が断然上だ。


 範囲内に入った敵に、矢を放つが全く聞いて居ない。



 そうこうして居るうちに、門が破られて敵が街内に侵入して来る。




 クソッ!こうなれば一人でも多くの部下達を無事に逃がしてやる!



 ■





 門を抜けて中に入ると、既にあちこちで部隊同士が鉾を交えていた。




 大通りでも、歩兵30人が横並びになるのが精一杯の大きさだ。


 街中では、集の力よりも個の力が、強い方が有利だ。



 それ故に特に抵抗らしい抵抗もなく、敵を次々と駆逐して行く。



 空を飛んで居る飛竜騎兵からの念話が届く。



『レンス様。敵が東門から撤退……いえ、逃亡を開始しました。追撃致しますか?』



『いや、そのままで良い。反抗して来る敵以外は無視して構わん。飛竜部隊は引き続き地上部隊の援護を、鷲獅子部隊は敵の増援が来ないかの、周辺警戒を怠るな』


『『了解』』


 二人の部隊長から、了承の返事が返って来る。



 敵の殆どは農民の集まりで、組織立った抵抗は殆ど無い。


 敵の指揮官を見つけて、鉾の一閃で首を切り取る。


 これで勝敗は決定的になった、守るべき街人を置いて、雪崩を打ったかのように、東門へと逃げて行く。



 うちの旅団は軍規が行き届いているので、街人に手を出す不届き者は居ないだろう。



 確かに俺自身、故郷を人間の軍に焼き滅ばされて、人間を憎んで居ない。と言えば嘘になる。


 前世が人であっても変わりはない。



 だが、無関係な人々を虐殺して、獣のように成り下がるつもりは無い。


 殺すのは軍人と悪人だけだ。


 それを旅団員全員に徹底した。


 納得が行くまで一人一人と、根気強く話て何とかみんなに納得してもらった。


 そういう経緯もあり、旅団員はレンスに絶対的な忠誠を誓って居る。


 レンス自身も彼らを、家族の様に大事にして居る。



 ウェスタンドの街は、黒龍旅団の攻勢から僅か四時間足らずで、陥落した。



 ウェスタンドに居る残党兵も徹底的に駆除し終えて、完全にウェスタンドの街は魔王軍の支配下に収まる。



 街の統治方法は、同じ魔王軍でも部隊ごとに異なる。


 残虐な性格の部隊長が治める街なら、阿鼻叫喚の地獄絵図になるだろう。


 理知的な部隊長が治める街なら、今まで通り。とは行かなくてもある程度の自由がある。


 と千差万別である。


 街に残った武装勢力は、警備隊と守備軍の僅か兵だけだ。


 増援として来た、ミナフルレア王国軍はほぼ全軍討ち取られたか、逃げ出したかのどちらかだけだ。



 それを見てレンスは、近隣の都市などにミナフルレア王国軍は自国の民を見捨てて、逃げ出した。とあちこちに噂を流して、敵の士気の低下と団結力の低下を企む。



 それに早期に街を落とした事で、他の魔王軍と戦っているミナフルレア王国軍は、此方側も気にしなければならなくなり、ますます苦戦を強いられて居る。



 此方に派遣された軍と違い、正規の兵が多数配属されて居るために、今しばらくは耐え凌ぐだろうが、それも時間の問題であろう。




 まあ、今はこの街の統治に尽力するか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ