第10話・師団会議
翌日
ヴェネラが居る交易都市サンカウレに、第1師団の主だった面々が集結する。
-会議室-
「さて、みんな良く集まってくれたわね。これより迷宮都市ルトラードの攻略会議をするわ」とヴェネラが宣言すると、集まった面々の前に資料が配布される。
資料にはルトラードの防衛戦力の詳細が記されて居る。
「資料から分かる通り、数はそれ程多くは無いけど、質は高い事が予想されるわ。それにルトラードの領主は、王都に援軍要請を既に送って居るとの情報を入手したわ。如何にルトラードが魔王軍の手に落ちれば、どのくらいの損失になるかを、きちんと数値化して更に魔王軍が、ルトラードを襲撃する確率も同時に提示したそうよ」
かなり有能な領主の様だ。
「でも、今の王国軍にそこまでの余裕は無くて、援軍を送るとしても、3週間後に僅かに5,000が限界だそうよ」
確かにミナフルレア王国も、ルトラードの重要性は理解して居るが、先の戦いで手痛い被害を被った。
更に、魔王軍第3軍団の第1師団以外は、ルトラードがある場所とは、正反対の場所に進軍する動きを見せて居る。
其処はミナフルレア王国の西部と南部の境目にある、比較的大きな城塞がある。
其処を落とされれば、西部と南部は切り離せて、南部からの援軍を押し留める事が出来る。
勿論それだけが理由では無い。
南部の方には、魔王軍第4軍団が船に乗り海からやって来る手筈になって居る。
城塞を落とせば、南部は魔王軍第3軍団と第4軍団に挟まれた状態になる。
更に南部には、一大貿易都市があり此処を落とされれば、ミナフルレア王国に大打撃を与えられる。
「それでも、5000もの数がルトラードに加わると面倒だわ。なので私達は3週間以内に落とす必要があるけど、何か言い方法はないかしら?」とヴェネラは会議室に集まった面々を見回す。
「籠城戦の構えの敵に、正面から策もなく攻めるのは愚策ですな。兵糧攻めにしようにも、彼処は迷宮がありますからな。近くの衛星都市などを落として包囲しても、意味はありませんかな」
「いや、孤立させれば、心理的圧迫は与えられるだろうから。近くの村などを攻めるのもありでは?迷宮があると言えども、それだけで賄うのは限度があるでしょう。増援の5,000も旅団を一つ当てて、それ以外で包囲しとけば問題ないのでは?」
「いや、ルトラードが攻められていると分かると、すぐに大部隊を投入して来る可能性があるぞ?」
「ならば、ミナフルレア王国は飛行部隊が少ない。上から攻めれば良いのでは?」
「防空設備も充実しているらしいぞ。何でも、100年近く前に迷宮の一つから魔物が溢れ出したらしいが、その時出て来た魔物が、飛行型の魔物らしくてな。その対策に大弩を大量に設置したらしい。今でも空だけでなく。地上の敵にも当たる様に場所を移動させた。と聞いている」
「ならば、狙いは甘くなるが大弩も届かない高高度から、油樽を落としてから火炎瓶を使って燃やせば言いだろう?」
「それだと都市に甚大な被害が出るぞ。ルトラードを落とすだけなら良いが、その後は我々が占拠して使用するのだぞ?それに万が一それで迷宮が暴走して魔物が溢れ出したらどうする?」
色々な意見が飛び交うが、どれも決定打に欠け、中々決まらない。
そこでレンスが此処で初めて口を開く。
「もし仮にルトラードの門を開け放つ事が可能ならば、攻略は容易出来るだろうか?」と周りに問いかける。
それを受けて旅団長の1人が「無論だ。我々ケンタウロス部隊が、開け放たれた門から素早く侵入して門を確保する。その間に他の部隊が市街地を確保してくれれば良い」
ケンタウロスは市街戦が不得意であるので、門の確保を優先する様だ。
他の面々も門さえ開けば後は問題ない。と答える。
「ならば、我々に任せてもらおう。必ず門を開け放つので、後の事は任せても良いだろうか?」と自信たっぷりに告げる。
「ふ〜ん。何やら自信がある様ね。なら任せるわ。他のみんなは門が開いた後の事を話しましょう」どヴェネラが話を纏める。
作戦決行は明後日の深夜に決定した。
それまでにルトラードに到着して包囲する方針である。
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