保健室にて ~交錯する過去と現在~
「……何だ? 物凄く嫌な予感しかしないんだが……」
僕の方に視線を向けながらも藍さんは何処か心ここにあらずといった表情をしていたが、僕の言葉を聞いて少し怪訝そうな表情へ変わっていった。
「あからさまに表情変えないで下さいよ……凄く話し辛いじゃないですか……」
藍さんの徐々に変わっていく表情を見ながら、僕は呆れたようにそう言った。
「……そうは言っても、創君が真面目な話をするなんて滅多に無い事だから、身構えるし、嫌そうな表情をするのは道理というものだろう?」
僕から一瞬だけ視線を逸らして、さも当たり前のようにそう言ってきた。
「むぅーでも、まぁ確かにその通りなので何も言えないのが悔しいですね……さて、こんな茶番を続けていたらいつまで経っても話が進まないので、さっさと話を続けますね?」
僕は頬を軽く膨らませた後、気持ちを切り替えて話を続けた。
「単刀直入に言いますね……僕、『看護師』を目指します。本当は医者を目指せたら良かったんですけど、 流石の僕でも今からでは間に合いません。だから、せめて看護師にと……」
―――「ガタンッ」―――
僕が最後まで言葉を口にする前に、藍さんが机を思いっきり叩いた。
「……藍、さん?」
僕は一瞬何が起こったのか分からず、机を叩いて悲しそうな表情をしている藍さんに恐る恐る声を掛けた。
「……大方私の病気の事を知って決めたんだろうが、どうして、キミたちは同じ事を考える? どうして、私何かの為に自分の人生を犠牲にしようとする? 私にはそれが分からない……分からないが、どうしようもないくらい腹立たしいんだ」
藍さんは過去に莱霧さんにも同じ事を言われたんだろう。その時も今とと同じように怒って、悩んだんだろう。とてもじゃないが、今回の僕の言葉だけで、感情を滅多に表に出さない藍さんがここまで怒るとは考え難かった。
「……」
初めて見るここまで感情を露にした藍さんに、僕は言葉を掛ける事が出来なかった。
「……創君には私と同じような人生を歩んで欲しくはない……創君の人生だ、よく考えてから決めると良い……」
一つ深呼吸をして、気持ちを落ち着かせながらそう言った藍さんの表情は普段通りのやる気の無さそうな表情に戻っていた。
どうして藍さんはそんな事を言うのだろうか……この人の為に人生を使おうとする事は悪い事なのだろうか?
僕は何度も頭の中で繰り返し考えたが、今の僕には藍さんの考えと僕の考えのどちらが正しいのか判断をする事は出来なかった。




