カラオケボックスにて ~大人なハウ~
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「……という訳なんだ……」
カラオケボックスで気持ちを整理する為に叫び続けた僕は満足して、ドリンクバーから持ってきていた、溶けきったソフトクリームを食べながらハウに事情を話した。
「そっか……辛いよな……創」
僕の纏まっていない話を最後まで相槌を交えながら、丁寧にハウは聞いてくれた。
「……ごめん。愚痴みたいになっちゃって……しかも、ハウまで学校サボらせちゃったし……」
高校生には相応しくないくらい、落ち着いた様子のハウに驚きながらも、僕は頭を下げた。
「なーに言ってんだよ? 俺とお前の仲じゃねーか。そんな事くらい気にすんな」
僕があまりにも素直に謝ったのが珍しかったのだろう。ハウは一瞬だけ驚いた表情をした後、僕にそう言ってきた。
「うん。ありがとう……でも、何だろう今の僕には不安しか無いんだ……自分にどれだけ言い聞かせても、最悪の未来しか見えないんだ……」
僕はぎこちない笑みを浮かべながらそう言った後、直ぐに俯いた。
「創……」
ハウは僕のそんな様子に何も言う事が出来ない様子だった。
「……今から話す事は創にとっては酷な事だとは思うけど、怒らないで聞いてくれ……」
ハウは姿勢を改めて正すと僕の目を真っ直ぐ見てそう言ってきた。
「実は俺、知ってたんだ……橘先生が病気かも知れないって事を……創には悪いと思ったが、嫌でも俺の耳に入ってきてな……あんなに幸せそうな創を見て、言う事が出来なかった……」
ハウが藍さんの病気を知っていたというのは驚いたし、怒りも沸いてきたけど、ハウの辛そうな表情を見て僕は何も言う事が出来なかった。
「詳しい病名までは知らないが恐らく、そう長くは持たないだろう……」
薄々分かってはいた事だが、本人では無いとはいえはっきりと言葉にされると流石に堪えた。
「……怒らないのか?」
ハウは辛そうな表情をしたまま、恐る恐る僕にそう訊いてきた。
「……確かにどうして、ハウが知っていて僕が知らないのか……怒り沸いてきたよ……でも、藍さんもハウも僕の事を思って今まで黙っていたんでしょ? そんな人たちに対して怒ってなんかいれないよ……」
僕は黙っていた事に対して怒りが沸いてきたのでは無く、仲間外れにされていた事に怒りを抱いていたんだと話ながら気が付いた。
「すまない……創」
ハウはもう一度、僕に頭を下げてきた。
「良いよ……このままもやもやした状態で藍さんに本当の事を聞いても、心の準備も出来て無かっただろうし。また、藍さんを傷付けてしまったかも知れない。だから、ありがとう」
僕はそう言ってハウに満面の笑みを向けた。
「創……」
「よーし。そうと決まれば今から学校行こうか? 午後の授業には間に合うだろうし、早く藍さんに逢って謝らないと……一秒でも無駄に何かするものか……」
僕はそう言うと、鞄にしまっていた制服にあっという間に着替え始めた。
「ここは僕の奢りだから、支払いを済ませたらハウも学校に来るんだよ?」
僕はハウにそう言ってから、机にお札を数枚置いて、カラオケボックスから学校へと向かって走り出した。




