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スノードロップ  作者: 白城縁
高校三年生 秋
96/372

通学路にて ~『親友』の定義~

//////////


 休日も明け、僕の暗い気持ちとは裏腹に当たり前のように学校は始まった。

「……」

 僕は死んだ魚のような目をしたまま、歩き慣れた通学路を無言で歩いていた。

「……」

 僕のそんなオーラを感じ取ってか、登校の時間のピークだというのにも関わらず、誰一人僕の近くに人が寄って来る事は無かった。

「……よっ! 創、元気にして……無いみたいだな。はぁ、仕方ないちょっとこっち来い」

 そんな状態の僕に臆する事も無く声を掛けてくる人物がいた。僕は歩き慣れた通学路という事もあって、ほとんど無意識で歩いていた僕は急に声を掛けられ、驚く間も無く声を掛けて来た人物に引っ張られていった。


――――――


「……」

 僕は正直な話、考えたり悩んだりするのがもう億劫になっていたので、引っ張って来た人物を確認する事も無く、ずっと俯いたままだった。

「……はぁ、このままじゃ埒が明かないな、創。さっさとこれに着替えて出掛けるぞ?」

 僕はそこでようやく、顔を上げ声を掛けて来た人物がハウである事を知った。

「……ハウ……今日は放っておいて貰えないかな……」

 こんな状態の僕に声を掛けて来た事に驚き半分、嬉しさ半分といった所だったが、そんな事よりも放っておいて欲しかった僕は、それだけを口にしてもう一度学校へ向かう為歩き始めた。

「……まぁ、待てって……そんな状態のまま学校に行っても家に帰されるだけだぞ? 後の事は何とかするから今日は俺に付き合え」

 学校へ向かおうとする僕を声だけで制したハウは、せっせと何かを準備しているようだった。

「よし、これで良いだろう……創もさっさと着替えろ。俺の服だからちょっと大きいかも知れないが、そこの木の陰で着替えて来い」

 ハウはカバンから私服を取り出すと僕に渡して来た。何で私服がそんな所に入っているのかはいささか疑問だったが、こうなったハウは僕がどれだけ断ろうと諦めないのは分かっていたので僕は仕方無くハウの指示に従った。

「……大きい」

 着替えが終わった僕はそう言いながら木の陰から出て行った。ハウとの身長差は結構あったので、案の定、兄のおさがりの服を着た弟のような感じになってしまっていた。

「うーん。やっぱ大きいか……ちょっと待ってろ。ここをこうして、こうすればいけるか?」

 ハウは何やら僕の身体をペタペタと触りながら、手に持った針と糸であっという間に、違和感が無いくらいまで服の丈を調整した。

「まぁ、応急処置だけど一日くらいならもつだろう……問題は俺の方がバレ無いかだが……どう思う?」

 顔を上げると、いつの間にか制服だったはずの服をまるで私服のようにアレンジをして身に纏っているハウの姿が見えた。

「……ハウ。こんな特技があったんだね。随分長い付き合いなのに知らなかったよ」

 僕はハウの姿を見て、驚きが隠せなかったと同時に、ハウの事を『親友』と言いながらもハウの事を全く知らなかった僕に嫌気が差した。

「……まぁな、それよりやっと俺の目を見てくれたな。何があったかは聞かないが、俺たちは『親友』何だから遠慮無く頼れ。そういう時の為にいるんだろう? 『親友』というのは……」

 こんな僕の事を『親友』と呼んでくれた事に僕は、涙が溢れて来た。涙を流すなんて絶対にするもんか何て思っていたけど、そんな意地何かどうでも良くなるくらい、ハウの笑顔が暗闇の中にいた僕に一筋の光をもたらしてくれた。

「はははっ……ありがとう。ハウ……折角だからこれから遊びに行こうか? その為に服を着替えたんでしょう?」

 僕はいつもの表情に戻り、ハウににっこりの笑いかけると、ハウは満足したように頷いた。

「まぁ、折角着替えたんだし、これで何処にも行かないとか何の為に俺が服の丈を直したか分からないからな」

 ハウはそう言うと、僕と同じようににっこりと笑顔を向けてくれた。

 その後、僕たちはいつも通りカラオケボックスに向かう為、登校中の生徒たちの横を抜けて駅前へと向かった。

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