藍さんの家にて ~見てはいけない光景~
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藍さんの家に初めて来た時から、思い返してみればもう半年近く経つ事に内心驚きながらも、それ以上にほとんど入った事の無い部屋ばかりだった事に驚きを隠せなかった。
「改めて見るとこの家流石に大き過ぎるよね……藍さんが帰ってくるまで全部回れるか不安になってきた……」
探検を始めて早々、あまりの広さと部屋数に僕は出鼻を挫かれる形になった。
「まぁ、いーや。掃除するとなると流石に間に合わないけど、ただ部屋を見て回るなら間に合うでしょ」
僕は自分に言い聞かせるようにそう呟くと、気持ちを切り替えて意気揚々と家中を回り始めた。
予想していた通り、あまりにも部屋の数が多過ぎて途中から数えるのを諦めてしまった僕は、肩で息をしていた。
ここ最近、藍さんといる時間が多くなっていたせいか、運動をするという機会がめっきりと減ってしまっていた事に僕は気付かされた。
「はぁ、はぁ、流石に今度の休みは藍さんを誘って、何処かスポーツ施設へ行こうかな……よしっ多分この部屋で最後だと思うんだけど……って事は、ごくりっ」
料理を作って待っている予定だったが、僕が思っていた以上に部屋の数が多過ぎて、何もしないまま外の景色はすっかり茜色に染まっていた。
僕自身、無意識に避けていたのか、最後に残った部屋は恐らく藍さんの寝室であろう。僕は部屋の前で、立ち尽くし生唾を飲み込んだ。
「……それでは、失礼、します……」
僕は誰もいないのにも関わらず、しっかりとお辞儀をして恐る恐る部屋の中へと入っていった。
部屋の中へ入ると、僕が想像していたよりも可愛らしい装飾の部屋が目の前に現れた。
脱ぎっぱなしの服が転がっていたりするのは、予想通りだったが、それに混じって可愛らしいぬいぐるみが至る所に転がっていた。
「何だが見てはいけないものを見てしまった気がする……バレたら殺されそう……」
僕はこの状況を藍さんに見られたら間違い無く、殺されそうだったので、何も見なかった事にしようとしたが、僕の視線はある一点で止まってしまった。
「……薬の山?」
僕は枕元の机に乱雑に置かれた薬の山を見て、血の気が引いた。
「……いや、まさか、ね」
医療の知識が無い僕でも、この薬の量を見れば藍さんが何かしらの病に犯されているのははっきりと分かった。
僕の見間違いであって欲しいと思い、目を閉じては開け、閉じては開けを繰り返したが、目の前の光景が変わる事は無かった。
僕はその光景を目の前にして、まるで金縛りにでもあったように身体を動かす事が出来ず、ただただその場に立ち尽くす事しか出来なかった。




