住宅街から橘先生の家にて 〜迷子の僕〜
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「えーっと、住所的にはこの辺りで間違いないはずなんだけどな……」
次の日、丁度お昼に差し掛かる頃。橘先生に渡された住所を元に橘先生の家を探していた。
「うーん……迷ったかも知れない。住所的にはこの辺りなのに辺りは林ばっかりだ」
困り果てた僕は一緒に書いてあった電話番号に連絡して見る事にした。
「……はい、橘ですが……こんな朝早くに連絡しないでくれ、小鳥遊君」
何コールかした後、橘先生が電話に出た。途中で僕だと気が付いた様で途中から口調が変わっていた。
「申し訳無いとは思ったんですが……って言うか、朝じゃないですよ。もうお昼です!!」
途中まで橘先生に圧倒された感じで謝っていたがよくよく考えると謝る必要は無かったかも知れない。
「そんな事はどうでも良い。何の用だ?」
橘先生はそんな事は特に気にする事なく僕に訊いてきた。
「何の用だって……今日家に行くってメールしたじゃないですか?」
昨日確かにメールしたはずなのに全く知らない様子の橘先生に驚いた。
「メール? あぁ……メールね……」
橘先生は歯切れの悪い返事を返して来た。メールを確認しようとしているのか携帯電話から電子音が聞こえてくる。
「もしかしてメールを見る事すら出来ないんですか?」
僕は橘先生の歯切れの悪い返事からその結論に辿り着いた。
「何でその事を知っている? ちっ、また響華の奴が余計な事を言いやがったな……まぁ良い。で、どうした?」
橘先生は舌打ちをした後、溜息を吐きながら僕にそう訊いて来た。
「道に迷いました。周りに林しかありません……」
僕は橘先生の反応に呆れながらもそう言った。
「あーなるほどな。ならその林を一周して見ると良い。入口が見えて来るはずだからな」
橘先生が悪そうな笑みを浮かべているような気がした。電話越しだったので実際そんな顔をしていたかは確かめようがないのだが……
「はぁ……分かりました。もう少し探してみます」
僕は電話を切った後、仕方がないので橘先生の言う通りもう一周林の周りを歩いて見ることにした。それから暫くしてそれは見えた。
「えーっと、まさかこれの事か? どっかのお金持ちの別荘かと思ってたんだけど……」
確かにぐるぐる辺りを彷徨っていた時に見えてはいたのだが、これがまさか橘先生の家だとは全く思わなかった。
「あーすまないね。驚いたかい?」
玄関の前でボーっと突っ立っていたら、目の前のインターフォンから橘先生の声が聞こえた。
「実はお金持ちだったんですねー橘先生」
かなり驚いていたが、それを悟られたくなくってあくまで冷静に言葉を返した。
「ふん。見栄を張りやがって……まぁ良い鍵は開けてある、勝手に入って来い」
見栄を張ったのがインターフォン越しだったのにも関わらずバレてしまい、少しふて腐れながらも玄関の扉を開けて橘先生の家の中へ入った。