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スノードロップ  作者: 白城縁
高校三年生 秋
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屋台にて ~初めての感情~

//////////


 後から聞いた話だが、俺たちが満面の笑みでお化け屋敷から出て来たせいか、あの後からお化け屋敷には長蛇の列が出来上がったらしい。

 そんな事はつゆ知らず、俺たちは今度は食べ歩きをする事に決め、校内にある屋台を全てコンプリートするような勢いで、急ぎ足で回り始めた。

「……全然美味しくない」

 途中で食べた焼きそばがあまりにも美味しくなくて、屋台のレベルが低い事に憤りを感じた俺、いや僕は口調を変えていた事も忘れ普段の口調でそう言った。

「すみません。ちょっと行ってきます……」

 僕はちょっと不思議そうな表情をした藍さんに頭を下げると、藍さんを置き去りにして屋台の裏に回って調理をしていた生徒に声を掛けた。

「あのーここの責任者って誰ですか?」

 僕は周りを見回しながらそう言ったが、何故か見覚えがある生徒ばかりだった。

「私だけど……どうしたの? 小鳥遊君。まさか、私たちのクラスがこの屋台をしているって知らない訳じゃないわよね?」

 クラス委員の一人の女生徒が僕にそう声を掛けて来た。申し訳無い事なのだが、名前は全く思い出せなかった。

「……なるほど、それなら尚更このままにして置く事は出来ないね……正直売り上げ良く無いでしょ? 調理場借りるよ?」

 僕はそう言うと大急ぎで教室に戻り、マイ包丁を取って来て支度を整えた。

「さて、別に手伝いはいらないから、よく見ててね。たまたまデートの途中で寄っただけだから後は自分たちで頑張るんだよ?」

 僕はそう言うと、物凄いスピードで焼きそばを作り始めた。僕がデートの途中といった事と料理を出来る事を知っている生徒はクラスにはいなかったせいもあり、かなり驚いている様子だった。

「……ふぅ、この材料や調味料じゃこれが限界かな」

 僕は出来上がった焼きそばを見ながら、少しだけ不満げにそう言った。

「さぁ、食べてみて」

 僕は小皿に分けた焼きそばをそこにいたクラスメイトに渡して歩いた。

「うまい……」「美味しすぎる……」等、口々に言っているクラスメイトを横目に、僕は藍さんと僕の分をフードパックに詰め込んでいた。

「じゃあ僕は行くから後は頑張ってね?」

 僕はここでやるべき事は終わったので、踵を返し藍さんに元に戻ろうとしたが、クラスメイトがそれを許してはくれなかった。

「……デート中に本当に申し訳無いんだけど、ちょっとだけで良いから手伝ってくれないかな?」

 クラス委員の女生徒に呼び止められた上、数人の男子生徒に両脇をしっかりと捕まれ逃げるに逃げれない状況だった。

「うーん……一時間、いや三十分だけなら手伝ってあげる。それ以上は流石に勘弁して」

 以前の僕なら間違い無く断っていただろう。たかが三十分でもクラスの為に時間を割くなんて考えられなかったと思う。

 その後、時間ぴったりで解放してくれたクラスメイトにも驚いたが、僕のクラスの屋台が、今日見てきた中で一番の長蛇の列になっていた事にはもっと驚いた。

 正直な話、高校に入学してから初めてまともにクラスメイトに協力したような気がするが、もっと早くから協力していれば良かった何て思わせるくらい、短い時間ではあったが充実感があった。

 そんな充実感をしっかりと心に刻み込み、すっかり冷めきってしまった焼きそばを片手に僕は藍さんの元に少し駆け足で向かった。

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