グラウンドにて ~いつもとは逆の二人~
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朝霞高校の文化祭が放つこの熱気は、その名の通り大きなお祭のようなもので、屋台や出し物何かも至る所にあった。
手に持った校門で配られていたパンフレットに載っていない、非公式の出し物や屋台も恐らく沢山あるのだろう。風紀委員や生徒会があちこちで取り締まりをしていた。
僕たちはそんな風に忙しそうに学校中を回っている生徒たちを横目に、文化祭をまるで本当に学生同士のカップルのように、辺りを気にする事無くイチャイチャとしながら文化祭を満喫していた。
「藍、今度はどこに行こう?」
僕は文化祭のパンフレットを見ながら、藍にそう問い掛けた。
「創が行きたい所なら、創と一緒にいれるならどこでも良いよ?」
藍は本当にそう思っているようで、何の迷いも無く僕の目を真っ直ぐ見ながらそう言ってきた。
ここに来るまで、ある程度出し物や屋台には寄ったがどれもパッとするものが無くて、拍子抜けしていた僕は藍にそう言われ更に悩んでしまった。
僕は辺りを見回していると、グラウンドの中央にある一際異彩を放つ装飾が施されたテントが目に留まった。
「あれっ……パンフレットには載っていないけど、何か楽しそうだね…お化け屋敷かな?」
僕はグラウンドの中央にあるテントを指差しながらそう言った。
藍さんを『藍』と呼ぶ事に慣れてきて、それと共に敬語で話す事も少なくなっていった。
「うっ……お化け屋敷? 本当に行くの?」
藍さんは僕の指差した先にあるお化け屋敷を見て、普段のなら考えられないような、泣きそうな表情をして、終いには目の端に涙まで浮かべていた。
「あれっ? この前の遊園地の時は怖がる様子一つも無かったのに……っていうよりも、むしろ僕の方が怖がっていた気がするんだけど……」
僕は先日の遊園地に行った時の事を思い出しながらそう言った。
「あ、あの時だって怖かったんだもん……でも、創も怖がっていたし、私の方が年上だし」
藍はうつむいたまま恥ずかしそうに、そう言ってきた。
「あーもう、可愛すぎるな……今日は僕が、いや、俺がついてるから安心しろ」
藍の演技にも似た口調と仕草に僕は感化され、普段なら絶対に使わない、一人称を『俺』と言って、口調も少しだけ男らしくした。
「……何かそういう創も良いかも……普段は可愛い系だけど、それはそれで格好良いな……」
藍は僕の口調に少し驚きながらも、口元をは緩んでいた。
「じゃあ、今日はイメージチェンジって事で……さぁ、俺に着いて来い!」
僕は、いや俺は藍にそう言うと、手をしっかりと握ってお化け屋敷へと向かった。




