校門にて ~ギャップ萌え~
僕がしばらく唸っている間に、藍さんは僕が近くまで来ていた事に気が付いたようで、捨てられた仔猫の様な目で僕を見てきた。
「おーその目も中々良いですね……襲いたくなっちゃいます……えへへ」
僕はそう呟くと、まるで変質者のように口元を緩めながら藍さんに近付いていった。
「すみません、お待たせしました。さぁ、行きましょうか? 野次馬さん達は散った散った。この人は僕のものです」
僕は藍さんの元に辿り着くと、藍さんの手を握った後、周りにいた野次馬達に向かってそう言いながら、逆の手で払う動作をした。
「……」
藍さんは僕の表情があまりにも気持ち悪かったか、それとも恥ずかしさからか、何も言わずうつむいたままだった。
「……うーん。まぁ、いーや。行きましょうか……」
僕は未だに口を開かない藍さんに向かって少しだけ困ったようにそう言うと、気持ちを切り替えて上機嫌で歩き始めた。周りにいた野次馬が口々に「何であいつ何かが……」とか「羨ましい……」とか色々と言っていたが、どれも藍さんの可愛さに対しての事だったので僕は誇らしげな気持ちになっていた。自分が思っていたよりもその事が誇らしかったようで、知らない内に何時もよりも強く手を引いていたようだった。
「……あんまり引っ張らないでよ……引っ張らなくても創に着いていくから」
ようやく口を開いた藍さんが僕の事を呼び捨てで呼んだ事にも驚いたが、何よりも普段の口調では考えられない程可愛らしい口調だったので、一瞬戸惑ってしまった。
「……? 本当に藍さんですか?」
僕はついつい反射でそう訊いてしまった。
「私だけど……やっぱりおかしいかな?」
普段の藍さんなら不機嫌な表情を浮かべる所を、不安そうな表情を浮かべながら僕にそう言ってきた。
「……可愛すぎる……持って帰ってそのまま襲いたいくらいですよ」
これが『ギャップ萌え』というやつなのだろう。僕は何とか理性を保っていたが、ここが学校でなければ間違いなく襲い掛かっていた自信があった。
「創も今日は私の事も『藍』って呼んで? その方がばれる確率も下がると思うから……」
藍さんは尚、恥ずかしそうに僕にそう提案してきた。
「藍さんが……いや、藍がそれで良いなら喜んで……」
僕は一瞬悩んだが、藍の頼みを断る理由も無かったのでそう返した。
「じゃぁ、早く行こう? 創」
藍はそう言うと、視線を上げ僕ににっこりと笑いかけた。
「う、うん。行こう藍……」
僕は藍の子供のように無邪気な笑顔を向けられ、少しだけ恥ずかしくなりながらも、手をもう一度しっかりと握り返した。




