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スノードロップ  作者: 白城縁
高校三年生 春
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病院にて 〜メールじゃなかった理由〜

//////////


 あれから数日が経ち診療の日になった。かれこれ一時間もかけて、不知火先生に診察をしてもらう為、病院へと来ていた。

「さて……藍とは仲良くやっている見たいだね。創君」

 診察室に入って早々不知火先生はニヤニヤしながら僕にそう言って来た。

「急に何の話ですか。不知火先生……」

 いきなりそんな話をされて僕は何と言えば良いか分からなかった。

「いやね。ここ数年たまにしか連絡のなかった藍から毎日のように連絡があるんだよ。創君の話題でね」

 不知火先生はとても嬉しそうに僕にそう言った。

「へぇーそうなんですか……僕は普通に会話しているだけなんですけどね」

 僕はそう言いながら気が付いた。毎日の様に橘先生と話をしていた事に……人と会話をしたり仲良くする事を今まで避けていたのに何故か、そこには橘先生と話をする事を楽しんでいる自分がいた。

「あいつは生意気な奴だとか基本的には創君の悪口ばかりではあるんだけどな……それに藍がここまで人と関わっている事、ましてやわざわざ連絡して来るなんてよっぽど創君を気に入っているとしか言いようがない」

 不知火先生は本当に嬉しそうな顔をしている。

「まぁそこに関しては僕も変わらないので自分自身驚いていますよ……」

 僕自身いまだに信じられないのだがもしかしたら橘先生と関わって行けば僕も変われるかも知れない……そんな風に思っていた。

「仲良くしてやってくれると嬉しい。ところで藍の家にはもう行ったのかい?」

 不知火先生は橘先生の事を本当に心配しているんだなと思った。いくら親友とはいえ他人の為にここまで想う事が僕に出来るのだろうか?

「一応明日行く予定ですけど……」

 僕はそんな事を考えながらも条件反射の様に不知火先生に言葉を返した。

「それは良かった。昼前に行くのであれば、何か食べる物を持って行ってやってくれないか? 藍の奴料理というか家事全般さっぱりダメなんだ。何なら食材を買って行って作ってやっても構わないが……押しかけ女房的な奴だな……」

 不知火先生は先程の表情とは打って変わって呆れている様な表情をしてそう言ってきた。

「何となく分かる気がします。まぁこれから暫く世話になるので、僕の手料理でもご馳走してあげますよ……」

 僕も普段の橘先生を見ていて納得していた。

「流石だな。右手の事もあるし半分冗談のつもりで言ったのだが……」

 不知火先生は笑いながらそう言って来た。

「冗談だったんですか? だったらもっと分かりやすく言ってくださいよ……まぁ、料理は作ってあげますけど」

 僕は一つ溜息を付き、少し呆れならそう返した。

「ははっ創君は面白いね……っと、そう言えば創君は機械は得意かい?」

 不知火先生は笑いながら、丁度今思い出したかの様に僕にそう訊いてきた。

「……急にどうしたんですか?」

 いきなり話題が切り替わった事に驚きながらも不知火先生にそう訊き返した。

「いや、藍の奴いまだにメールの使い方が分からないらしくてな……電話でも構わないのだが……私も忙しい身の上でな毎日出られるとは限らないわけだ」

 今の不知火先生の話で色々と納得してしまった。

「あーなるほど、物凄く納得しました。そういう事だったんですね。橘先生がメールじゃなく直接連絡先と住所を渡して来た意味がやっと分かりました」

 僕は一人で勝手にな納得して一人で頷いていた。

「何だそうだったのか、なら話が早い。藍の家に行くついでにメールの使い方を教えてやってくれ」

 不知火先生は橘先生を思い出しながらそ言ったのか少し呆れた様な表情をしている。

「了解です。僕も連絡する時、電話ばかりじゃ不便なのでしっかりと教えておきます」

 僕は先程と同じ様に悪戯好きの子供の様な笑顔でそう言った。

「その笑顔は気になるがまぁ、よろしく頼むよ。よしでは治療も終わった事だしお話はここまでとしよう。経過は順調の様だから次は二週間後で構わないよ。今日はその分多めに薬を出しておくから」

 今度は僕の笑顔に対して呆れたのか、少し苦笑いをしている。

「分かりました。では失礼します……」

 不知火先生が苦笑いしていた事には気付いていたが、僕は特に気にする事は無くお礼を言って診察室を後にし、自宅への帰路へとついた。

「明日は何を作ればいいかな? うーん流石に右手の事もあるし簡単な物が良いかな。それと普段あまり食事をしない事を考えて軽めの物の方が良いよね……うーん。あっそうだ少し気温が高くなって来たし、冷やし中華にしよう。さっぱりしてるし丁度良いや。よーしそうと決まれば買い物して帰らなきゃ、調味料も一応買って行った方が良いよね、無いと困るし……麺は自作じゃ無くても良いか……ハム、卵、胡瓜、トマト後は何が必要かなぁ……」

 僕はそんな独り言を言いながら明日の事を考えていた……


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