回想 ショッピングモールにて ~『タチバナ』のネックレス~
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「あははっ、店員さん面白い人ですねーふぅ、さてと、何かおすすめの物ってありますか?」
それからしばらくの間店員さんとの会話をしていたが、すっかりと忘れていた本来の目的を果たす為一息吐いた後、話題を変えた。
「そうですねーおすすめですか。因みに予算ってどれくらいです?」
店員さんはいつの間にか、話す事に夢中になっていた事に気付いたようで頬を赤く染めて、少しだけ慌てた様子を見せた後、先程のフランクな感じからほんの少しだけ口調をかしこまらせて、そう言ってきた。
「うーん。特に決めて来ていませんが……流石に十万超えたりはしないですよね?」
僕はポケットに入れていた財布を取り出し、中身を確認しながら恐る恐るそう訊いた。
「……あれっ? 私の勘違いだったらすみません。お客様ってまだ、学生ですよね?」
少しの間お互い無言の時間が続いた後、店員さんも先程の僕と同じように恐る恐るそう訊いてきた。
「ん? そうですよ? 高校三年生ですけど……何か僕おかしな事言いました?」
驚いたというよりはポカンとした表情をしていた店員さんに向かって、僕は不思議そうにそう返した。
「い、いえ……確かにそういう方もいらっしゃいますけど、私は初めてでしたので、少し驚いただけです。おすすめでしたね、こちらなんてどうでしょう?」
店員さんはよく分からない事を言っていたが、僕は少しだけ首をかしげただけで特に聞き返す事はせず、店員さんの後に続きアクセサリーを見て回った。
その中でも目に留まったのが、綺麗な花の装飾が施されたネックレスだった。
「ネックレスか……藍さんに似合いそうだな。店員さん、これって因みに何の花がモチーフなんですか?」
他のアクセサリーとは異なり、そのネックレスだけ個別のショーケースに入っていた事もあり、何となく気になったのでショーケースを指差しながら店員さんにそう訊いた。
「あっ、やっぱりそれ気になっちゃいますよね。『タチバナ』って花見たいですよ? 珍しいですよね」
店員さんはお客さんによく尋ねられているのだろう、あまり驚く様子は無かった。
「『タチバナ』……それって、確か柑橘類のですよね? 確かに珍しいですね。でも、うん、これにします」
僕も花の名前を聞き、珍しいとは思ったが、花の名前が藍さんの名字と同じ『タチバナ』と言う花をモチーフにしたアクセサリーが、何となく気に入ってしまい、僕は値段も見る事もなくそう言った。
「本当によろしいのですか? こちらはオーダーメイドに近いものでして、学生さん同士の贈り物にしては結構高額な品になりますが……」
店員さんはまさかこの品を買う人が現れるとは思ってもいなかったようで、しかも学生の僕が買おうとしているのだから、尚の事驚いているようだった。
「うーん。別にさっきも行った通り、お金の事は心配しなくても問題ないですよ? それと『学生同士』じゃなくて、『生徒と先生』ですから……」
僕はそう言いながら支払いをする為、呆気に取られたように呆然としている店員さんを横目に僕はレジに向かってゆっくりと歩き始めた。




