遊園地にて ~さり気ない気遣い~
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藍さんは特に明確にアトラクションの名前を口にして歩き始めた訳では無かったので、藍さんがどのアトラクションへ向かうのか戦々恐々としながら、僕は少し伏目がちで藍さんに手を引かれていた。
「全く……何をそんなにびくびくとしているんだ? 心配しなくても絶叫系のアトラクションではないよ」
藍さんはそう言うと、すっとメリーゴーラウンドの方を指差した。
「わぁーっ……藍さん、ありがとうございます」
僕は先程までの暗い表情は一変して、きらきらとした目をして満面の笑みを浮かべていた。
「勘違いするなよ? これは私が乗りたかったから無理やり連れて来たんだからな」
僕の満面の笑みを時折、ちらちらと見ながら藍さんはそう言ってきた。
「……はい。分かってます。藍さんのそういう所……大好きです……」
僕はそう言うと、抱き着くような形で藍さんの腕にしがみ付いた。
「……本当に分かっているのか? ……まぁ良い。そんな事よりまだまだ乗りたいアトラクションはあるのだろう?」
藍さんはしがみ付いた僕をそのまま引きずるような形でそう言うと、そのままメリーゴーラウンドの馬に乗り込んだ。当たり前のように僕たちは隣同士の馬に乗り、愉快な音楽と共にくるくると回っていた。
流石に休日という事もあり、子供連れが多くメリーゴーラウンドに乗っていたのは子供とそれに付き添う親ばっかりだった。その中で良い年をした大人二人が楽しそうにしているのだから、周りから見てみれば異様な光景だったに違いない。
それから数分が経ち、愉快な音楽が徐々に静かになり、ゆっくりとメリーゴーラウンドの回転が止まった。
「ふわぁーやっぱりメリーゴーラウンドは楽しいですねー凄く落ち着きますよね、藍さん?」
僕はここに来てからずっと乗りたかった、メリーゴーラウンドに乗ることができ、幸せそうな表情をした後、辺りを見回しながら明らかに挙動不審な藍さんにそう声を掛けた。
「あっあぁ、確かにその通りだが……はぁ、こんな姿知り合いにでも見られたら……」
藍さんは声を掛けても、若干上の空でようで生返事でそう僕に返した後、まだ辺りを見回している。
「うーん? そんなに周りばかり気にしてどうかしたんですか? あっ、さては次に何に乗ろうかと考えているんですねー僕も負けてられないぞー」
僕はそう言うと気合をいれ、藍さんと同じように辺りをキョロキョロと見回し始めた。
「……はぁ、何か私だけが気にしているのが馬鹿らしくなってきた……その時はその時で考えるとして。今は、楽しむとするか……」
藍さんは何故か急に大きな溜息を吐いてそんな事を言ってきた。僕はその行動の意図がさっぱり分からず、終始首を傾げていた。




