保健室にて 〜普段とは違う日常〜
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翌朝、藍先生に包帯を変えてもらう為、普段よりも早く登校していた。
「昨日夜遅くまで連絡待ってたのに、何で連絡してくれなかったんですか?」
僕は悪戯好きの子供の様な笑顔でそう言った。
「あーすまない。少し忙しくてね。すっかり忘れていたよ……」
藍先生も同じ様な笑みを浮かべていた。
「まぁ構わないんですけどね。休日になる前だったら……」
僕は特に気にせず藍先生にそう言った。
「本当に休日私の家に来るつもりなのか? 出来れば勘弁してもらいたいのだが……」
昨日の慌て具合とは打って変わって元の藍先生に戻っていた。
「藍先生が構わないって言ったんじゃ無いですか?」
僕はニヤニヤした顔で藍先生にそう言った。
「いや、私は学校の日だけだと思っていたからであって……ちっ思い出したら腹が立って来た」
藍先生はイライラしている様で、煙草を噛み潰していた。
「まぁまぁ、治るまでの期間だけなので諦めて下さい。藍先生」
僕はまるで子供をあやすかの様にそう言った。
「はぁーちっしょうがない。文句は響華の奴に言うとして……なぁキミ藍先生と呼ぶのは辞めてくれないか?」
藍先生は諦めた様で深い溜息を吐いた後で新しい煙草に火をつけた。
「えー何でですか? 藍先生って呼ぶ方が楽なんですもん。それに僕の事をキミなんて呼んでいるんですからおあいこです」
今度はまるで駄々をこねる子供の様に僕はそう言った。
「はぁ……分かった。小鳥遊創君。頼むから苗字で呼んでくれ」
藍先生はもう一度深い溜息を吐くと僕に視線を向けてそう言った。
「何でフルネーム何ですか……何か嫌なので僕も苗字で呼んで下さい」
わざわざ僕に視線を向けてから言ってきたので本当に嫌な事が伝わった。
「仕方無いな、分かったよ小鳥遊君。よしこれで大丈夫だろう」
橘先生は包帯を替え終わると満足そうな顔をしてそう言った。
「ありがとうございます。橘先生……それではまた明日お願いしますね」
僕はそう言うと教室に戻るため保健室を後にしようとした
「あっちょっと待てキミ。ではなかった小鳥遊君。ほらっ」
橘先生は近くにあった紙に何やら文字を書いて僕に渡してきた。
「何ですか? これ」
僕は何を渡されたか全く検討がつかなかったので素直にそう訊いていた。
「私の連絡先と住所だ。必要なんだろう?」
橘先生は煙草を咥えたまま僕にそう言った。
「あっなるほどありがとうござきます。別にメールでも構わなかったのに」
僕はてっきりメールか電話で連絡して来るものだと思っていたので、全く予想ができなかった。
「良いでは無いか。知る事に変わりは無いのだから……」
橘先生は既に僕から視線を外してまた新しい煙草に火をつけていた。
「確かに間違い無いですね。ではありがたく頂戴します……」
僕はそう言った後、今度こそ教室に戻る為保健室を後にした。
この時はただ面倒臭くて直接紙で渡してきただけだと思っていた。メールで連絡してこなかった本当の理由を知るのはもう少し後になってからの事だった……