藍さんの車にて 〜そうだハウに電話をしよう〜
「さて……どうしましょう? そうだこんな時はハウに訊いてみれば良いんだ。ちょっと待ってて下さいね……」
僕はそう言うとハウに電話をする為、携帯を取り出そうとポケットに手を突っ込んだ。
「ハウ? あぁ、創君とよく一緒に居る男の子の事か。知ってはいるが名前までは知らなかったから一瞬誰の事を言っているのか分からなかったよ……」
藍さんは少し考える素振りをした後、手を軽く叩いた。その後興味を失ったのか、窓の外を眺め始めた。
「あれっ? おかしいな携帯何処にいったんだろう? 藍さんの家に忘れてきちゃったのかな? 困ったな……」
何度、探してみても僕の携帯が見つかる事は無く、僕は困った表情で藍さんの方を見た。
「ったく仕方ないな。ほらっ」
藍さんはそう言うと、僕の方も見ずに自分の携帯を投げて寄越した。
「あわわっ。ふぅ、危うく落とす所だったじゃないですか? でもありがとうございます。少しお借りしますね?」
僕は慌てて携帯を受け取りそう言った後、悩む事なくハウの電話番号を入力して電話を掛け始めた。その様子を見て藍さんは少し驚いている様子だった。
「……もしもし? ハウ今電話大丈夫だよね?」
僕は電話にハウが出た瞬間、有無をも言わせずそう言い切った。
『……創か? 知らない電話番号だったから誰かと思ったぜ。それより大丈夫だよねって。ったく相変わらず自分勝手な奴だな……で、どうした?』
電話に出ても少しの間ハウが無言だったのは、藍さんの携帯で電話を掛けたので少し警戒をしていたからだろう。僕だと気が付くと、ハウは電話越しでも分かるくらい呆れた様子でそう言ってきた。
「今、藍さんと一緒に居るんだけど……」
呆れた様子だったが、気にせずそう返してくれた事に少しだけ感謝をしながらそう言った。
『それはいつもの事だろう?』
僕が言葉を言い切る前に、ハウはそう言ってきた。
「うん、確かに……で、『デート』って何をするものなの?」
僕は納得したようにそう言った後、ハウにそう訊いた。
『はぁ!? それを俺に訊く為に電話してきたのか? それじゃただののろけじゃねーか。はぁ……』
耳にしっかりと携帯をくっ付けて電話をしていたので、ハウの驚いた声で、危うく携帯を離してしまうところだった。
「別にのろけのつもりは無いんだけど……僕も藍さんも『デート』何てした事無かったからハウだったら『勿論』知っているかと思ってさ? 橘先生もそう言ってたし……」
僕は敢えて『勿論』の部分を強調して言う事で、ハウの機嫌を良くする作戦に出た。
『そっそうか? それは確かに知っているけど。うーん、創だけでは無く橘先生に頼まれたら仕方が無いな……へへっ』
随分と分かりやすい反応をしているハウを相変わらずチョロイ奴だなと、僕は心の中で思っていた。
「それで『デート』っていったい何をするの?」
僕はハウの喜んでいる表情を想像すると笑いが堪えられなくなりそうだったので、想像するのを辞め、改めてハウにそう訊いた。




