病院にて 〜違和感の正体〜
「別に問題無いだろう。文化祭だし、少しくらいおかしな格好をしていても……おっ、そうだ何なら学生服でも来たらどうだ? どうせまだ持っているだろう? もし持っていないなら私のを貸してやろう。それなら違和感も無いだろう」
不知火先生はそう言いながら、後半になるに連れどんどんとニヤニヤと悪い笑みを浮かべていった。
「もしかして朝霞高校の卒業生だったんですか? 初めて知りました……」
僕は藍さん達が朝霞高校の卒業生だった事に、驚きはしたが何となくそんな気もしていたので何処か納得している自分もいた。
「そう言えば、言った事が無かったね。藍の制服姿みたいだろう? 創君」
不知火先生は今思い出したかのように手を叩いた後、僕に近づき耳元でそう囁いてきた。
「藍さんの制服姿、ですか……ごくっ」
何て魅惑的な言葉なのだろう。僕は藍さんの制服姿を想像して生唾を飲み込んだ。
「ちょっ、何で創君も乗り気なんだ?」
藍さんは僕の様子を見て、慌てたようにそう言ってきた。
「そーだ、口調も昔に戻して、髪も三つ編みにしてさ。それなら尚の事藍だとは誰も気が付かないさ。はっはっはっ」
とても楽しそうに笑いながら不知火先生はそう言った。
「昔の口調……ですか?」
ずっと気になっていて今まで聞けなかった事を、不知火先生は言ってきたのでこのタイミングならと思い、僕は間髪入れずにそう訊いた。
「あぁ、藍が昔はもっと内気な子だったのは知っているね? それでそれを変える為に……」
「はぁ……それ以上は言うなといっても無駄だろうから、せめて私の口から話すよ。響華に任せたら大げさに話を盛るだろうからな」
不知火先生がそう話し始めると、話している途中で不知火先生の言葉を遮るように藍さんは大きな溜息を吐いた後、そう言ってきた。
てっきり、以前のように無理にでも話題を変えて、話を止めると思っていた僕は少しだけ驚いていた。
「ちぇっ、バレたか……つまんないな」
不知火先生はまるで悪戯がバレてしまった子供のように舌を出した後、本当に残念そうにそう言った。
「……前にも話した通り、私は内気な子でずっと莱霧や響華の後ろでもじもじとして、ろくに話す事をしない少女だったんだ。それであの事件が起きた。その後から変わらなければと思い私はまずは容姿、そして口調を一番身近に居て手本になりそうだった響華の真似をする事から始めたんだ……」
不知火先生に視線を向けた後、一瞬目を瞑り、藍さんはゆっくりと話し出した。
「なるほどです。だからこんなにも話し方や雰囲気がそっくりだったんですね……ようやく、納得しました」
僕は二人と出逢ってからずっと感じていた違和感の正体を知ることが出来、しきりに頷いていた。




