病院にて 〜これぞ『親友』〜
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あれからどれくらい時間が経っただろうか……一時間? それとも数十分? 時間の感覚も無くなってしまうこんな状況に置かれ続けた僕は、早く藍さんが来てくれる事を必死で心の中で祈っていた。
―――「ガチャ」―――
そんな僕の祈りが通じたのか、ようやく藍さんが診察室へと入って来た。そこで緊張が解けた僕は時計を見ることができ、まだ三十分も経っていなかった事に恐怖を覚えた。
「すまないね、創君。やはりと言うべきかこうなってしまったか……」
藍さんは診察室へ入って来ると、僕に視線を向け呆れながらそう言ってきた。
「おい、藍。謝る相手が違うんじゃないか?」
ようやく口を開いた不知火先生は。やはりご立腹の様で普段よりも更に口調が尖っている。
「あのなぁー響華。たかが数十分遅れただけだろう? 昔から言っている通り、時間に厳しすぎるんだよ」
藍さんはようやく不知火先生に視線を向けると、僕に言葉を掛けた時と同様に呆れた表情をしながらそう言った。
「たかが数十分だと? 実際は一時間近い遅刻じゃないか。そう言う藍は昔から時間にルーズ過ぎるんだよ」
不知火先生はまだ怒っているようだったが、段々言っても無駄だと分かっているのか呆れた表情に変わっていった。
「まぁ、確かに遅れたのは悪かったよ。だが今回は十対零で創君がわるいから許してやってくれ」
さも当たり前にように自分は全く悪くないと主張しているのは、流石藍さんといったところだろう。
「それなら藍が来る前に、創君をあれやこれやと虐めておくべきだったか……」
そう言った不知火先生からは先程までの空気は消え、普段の状態に戻っていた。
「それはダメだ。創君は私のものなのだからな。虐めて良いのは私だけだ。いくら響華でも渡せないぞ?」
不知火先生の言葉を聞いて藍さんは少しだけ慌てたように、僕を守るように手を広げて立ち塞がった。
「ははっ冗談だよ。ようやく進み始めた藍の時計をもう一度止める事なんて、私には、いや誰にだって出来やしないからね」
不知火先生は藍さんが少し慌てた様子を見せた事が、本当に嬉しかったようで軽く笑った後、感慨深そうにそう言ってきた。
「心配かけてすまなかったな、響華。ようやく私はあの時から動き出す事が出来たのかも知れない。莱霧も喜んでくれていると良いんだが……」
藍さんはそう言うと、何処か遠い目をしながら窓の外を眺めた。
「莱霧なら喜んでいるさ。ただ遅すぎるって文句は言ってそうだがな」
僕はそんな二人の様子を見て、これが本当の意味での『親友』というものなのかも知れないとそう思った。いつか僕にもそんな人が出来るのかな、何て思いながら始めに浮かんだのが『ハウ』の事だったのは僕しか知らない。




