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スノードロップ  作者: 白城縁
高校三年生 春
6/372

保健室にて 〜まるで道場破り!?〜

//////////


 ハウと別れて僕は保健室の前にたどり着いていた。

「すみませーん、失礼しまーす」

 僕はまるで道場破りの様に、わざと思いっきりドアを開けて保健室へと入って行った。

「ったく何だよこんな朝っぱらから、調子悪いんなら学校来んなよ……」

 学校の保険医とは思えない言葉を発していた。まぁこの人らしいとは思うのだが……

「いや、体調はすこぶる良いんですが……」

 僕は呆れながらもそう言葉を返した。

「また、キミか今度は何か用事でもああるのか?」

 橘先生は僕の方に視線を向けることもなく、煙草に火をつけながらそう言った。

「またって……二回目じゃないですか、貴方に会ったの」

 どんだけ面倒臭がり何だよこの人は……僕は心の中でそう思った。

「あーそう言えば、そうだったな……」

 橘先生がそう言いながら一瞬悲しそうな眼をしたのを僕は見逃さなかった。

「あの不知火っていう先生といい、貴方といい、人の顔を見て悲しそうな眼をするのは気分が悪いのでやめてもらっても良いですか?」

 僕にそう言われて、橘先生は驚いた表情をしている。

「不知火響華に会ったのか?」

 先程の驚いた表情は悲しい眼をしていた事に気付かれたせいなのか。不知火先生の名前が僕の口から出た事で驚いたのかこれで分からなくなってしまった。

「ええ、偶々この手を診せに行った時、担当してくれたのが不知火って先生でした」

 僕は分からなくなった事は特に気にせず聞かれた内容に素直に答えを返した。

「なるほどな……ちっ、私といいあいつといい良い加減忘れてしまえば良いものを……」

 橘先生は少し呆れた様な表情をしている。

「まぁ……僕には関係ないのでどうでも良いんですが、それより今日はお願いがあってきたんです」

 僕がそういうと橘先生は訝しげな表情をした。

「まぁ用件次第だが……言っても基本的には全て断るつもりだが。聞くだけは聞いてやろう」

 橘先生はあくまでも断る気満々の様だった。

「はぁ……僕も乗り気じゃないんですから、更に頼む気力まで奪わないで下さい」

 僕は呆れ果てながらそう言った。

「あぁ……なるほど言わなくても大体の事情は理解したが、腑に落ちない点がある君の両親にでも替えてもらえば良いではないのか?」

 橘先生は僕が用件を頼む前に一人で答えにたどり着いた。

「流石としか言えない推理力ですね……不知火先生に言われて頼みに来た件はその事です。橘先生の疑問についての答えは僕の両親家にいないことの方が多いって事です」

 僕は橘先生の推理力に脱帽しながらそう答えた。

「あぁ……そういう事か。その事情を知って響華の奴は私にと……」

 橘先生は何か勘違いをしている様だったが、さして問題は無いのでそのまま会話を続けた。

「それでお願いする事って可能ですか?」

 お願いする立場なので一応下手から出てみたのだが……

「うむ……いささか面倒だが仕方あるまい。どうせ今断っても結局一人では替えられないと言って、泣きつかれては困るからな……」

 あまりにも下手に出てしまったせいか橘先生は気分が良くなった様で、断られると思っていたのにあっさりと了承してくれた。

「何かとても感じが悪いですけど。まぁ良いです。用件はそれだけなので失礼します。っと忘れていました。これ僕の連絡先なので後で連絡下さい。でも休みの日まで替えてもらえるなんて、思ったよりも優しい人だったんですね?」

 僕は先程のお返しとばかりに、ニヤニヤした顔でそう言って保健室を出て行こうとした。

「ちょっ、キミ!? そこまでは頼まれてないぞ? キミ思っていたよりも性格の悪い奴だな……」

 何を言われても、今まで全く動じなかった橘先生が初めて慌てて椅子から立ち上がって僕の方に視線を向けた。

「それはお互い様でしょう? ではこれから暫くの間よろしくお願いしますね。藍先生?」

 僕はそう言うとニヤニヤしながら保健室を後にした。

「はぁ……どうして私がこんな面倒な事に……後で響華に……」

 藍先生は何やら言っていたが、僕は気にせず教室に向かって歩くのをやめなかった為、後半はよく聞こえなかった。

 今思い出せばこの頃から既に藍さんに惹かれていたのかも知れない。あれだけ人と関わる事を避けていた僕が成り行きとはいえ会話を楽しんでいたのだから……

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