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スノードロップ  作者: 白城縁
高校三年生 秋
59/372

病院にて 〜現世に現れた鬼〜

//////////


 僕は藍さんが物凄く心配そうにしていた事をすっかりと忘れてしまったように、普段と同じように診察室へ入っていった。

「失礼しまーす。不知火先生お待たせしましたー?」

 僕は普段と同じように診察室へ入った事に、今更ながら後悔した。何故なら、直ぐ目の前に鬼のような形相をした不知火先生が仁王立ちして待ち構えていたからだ。

「ほぉー一時間近くも遅くなったというのに、その程度の謝罪とは良い度胸じゃないか」

 不知火先生は僕を見下ろすように、上から睨みつけながらそう言ってきた。

「ひっ……すっすみません……」

 僕はその目を見て、つい短い悲鳴を上げてしまった。以前の僕なら、そんな事をされてもただ冷たく目線を向けるだけだっただろうが、藍さんと出逢ってから僕も変わったのか素直に感情を表に出せるようになっていた。

 そんな事を頭の中で冷静に思いながらも、この状況をどう抜け出そうか頭の中で考えを巡らせていた。そんなタイミングで不知火先生の携帯が鳴った。

「ん? 何だこんな時に……ふむ、ふむ……なるほどな。藍の奴も同罪って訳だな? だがあいつは逃げたと……」

 どうやら藍さんからのメールが届いたようで、そのメールを確認した不知火先生は僕の方を見てそう訊いてきた。

「……こくこく」

 僕は有無を言わせない不知火先生の様子を見て、まるで操られたようにただただ、頷く事しか出来なかった。

「そうか、分かった。そこでしばらく待っていろ」

 不知火先生はそう言うと、もう一度携帯に視線を戻し電話を掛け始めた。

「……藍か。今すぐ私の所に来い。私から逃げられると本当に思っていたのか? 来なければ創君がどうなっても私は責任取らないからな?」

 僕にとっては不穏過ぎる言葉を口にした不知火先生は、一瞬だけ視線を僕の方に向け、そう伝えると電話を切った。

「さて、待たせたね。恐らく藍はすぐ来るだろうが、その間に診察を済ませてしまおう」

 不知火先生は無表情のままそう言うと、僕の診察を始めた。診察をしている間、そして診察が終わって藍さんが来るまでの間、終始無言で空気が重かった。ようやく藍さんの言っていた意味が分かった気がして、たまには人を信じてみようと、せめて僕が大切に思っている人たちの言葉くらいは信じようと、心の底からそう思った。

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