藍さんの車にて 〜何も知らない僕〜
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そんなおかしなやり取りを続けていたせいか、出発したのは予定していた時間よりも大幅に遅れてしまっていたようで、藍さんは溜息を吐きながら車を運転していた。
「はぁ……完全に遅刻だ。これじゃあ響華に何を言われるか分かったもんじゃないな……さて、どうしたものか」
再度溜息を吐きながらそう言った藍さんは、本当に悩んでいるようでひたすら溜息を吐いていた。
「そんなに悩む事じゃないですって。行って謝ればそれでお終いです。ですからそんなに溜息を吐かないで下さいよ……」
本当に悩んでいる藍さんを横目に、僕はそんなに心配する理由が全く浮かばなかったのでお気楽そうにそう言った。
「……響華の事をよく知らないからそんな事が言えるんだ。ああ見えてあいつ昔から時間にだけは厳しいんだよ……どれだけ文句を言われるか」
藍さんは一瞬僕の方を見て、また溜息を吐きながら呆れるようにそう言ってきた。
「へぇーそれは意外ですねーでも今回は僕もいるんですし……というか僕の用事なんですから大丈夫なんじゃないですか?」
僕は藍さんの言葉で不知火先生の意外な一面を知ったが、やはりそんなに気にする事では無いと思い、先程同様お気楽そうにそう言った。
「はぁ……まぁ、良いか。私は別に用事があるから創君一人で行って来ると良い。うん。それが良い」
藍さんは僕のそんな様子を見ながら一つ溜息を吐いた後、まるで今決めたかのようにそんな事を言ってきた。実際藍さんの様子を見ていると本当に今決めたばかりなのは容易に想像できた。
「何か、いまいち腑に落ちない所だらけですけど、藍さんがそう言うならそうしましょうか」
僕は藍さんのまるで怯えにも似たような様子を不思議そうに眺めながらそう言った。
「まぁ、何をしても無駄だろうが念の為、私の方から謝罪のメールを送っておくさ。それでも水に油を注ぐだけになると思うが……」
これから起こるだろうその状況が、頭に浮かんでいるかのようで藍さんは頭を抱えたまま車を停めた。
「まぁ、了解です。何も問題なかったって電話しますから。藍さんは何も気にせず用事を済ませて下さい」
僕は車から降り、藍さんに手を振りながらそう言った。一度軽く手を挙げたあと、そのまま藍さんは車を走らせ何処かへ行ってしまった。
そんな風に楽観的に考えていた僕が、藍さんがここまで心配していた理由を知るのにそう時間は掛からなかった。




