屋上にて 〜心配されてるらしい〜
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「おいおい創。もう引っ張んなくても着いてくから、流石に痛いからやめてくれ」
骨折してない腕の方で引きずりながら屋上に向かっているとハウがそう言ってきた。
「ほんとに着いてくる? 逃げたりしない? そう言って何度も逃げられてるから軽いトラウマ何だけど……」
昔その言葉を信じて何度も逃げられたのを思い出して、僕は訝しげな表情をした。
「ほんとに痛いから勘弁してくれ。それにこのまま首根っこ捕まれたまま引きずられながら廊下を歩いていたら、流石に恥ずかしいわ……」
ハウはほんとに痛いらしくて顔が少し赤くなっていた。首が締まっていたらしい。それは痛いよね。流石に窒息死されても困るのでその場で手を離してあげた。
「いってー離してくれたのはありがたけど急に離すなよな。尻餅ついたじゃねーか」
ハウは急に離した反動でその場で床にお尻を叩きつけていた。
「あーごめんごめん。許して許して」
僕はさして悪びれる様子なくハウにそう言って笑っていた。
「ったく相変わらずなんだからお前は。あの頃と何も変わってねーじゃねーか。ちっ心配して損したぜ」
ハウはそう言うとおとなしく僕の後を着いてきた。
「珍しいねハウが素直に言うこと聞くなんて? それに心配って何さ僕は何も心配されるような事したつもりは無いけど?」
ハウが珍しく言う事を聞いた事にも驚いたが、『心配』と言う言葉が引っかかった。
「お前のクラスの連中から、毎日誰と会話もしないで近付きづらいって聞いていてな入学してすぐの事を思い出して、心配で見に来たってわけだ」
割と真面目に心配してくれていたらしい。流石の僕も少し驚いた。
「なるほどね、でもクラスの連中と話をするメリットってあるの?」
僕は本当にそう思っていたから素でそう返していた。
「ったくその辺は全くあの頃と変わってないんだな。俺がいなかったら三年間、
誰とも会話しないで卒業したんじゃねーの? だから心配だって言ってんだよ」
ハウは屋上へと入る扉を開けながら、そんな恥ずかしい台詞を全く臆面もなく言って来た。
「へぇ、そんなもんなのかな? 僕にはよくわからないや」
ハウの言葉に対してさして興味ないように僕はそう返していた。
「まぁ、いーけどさ……ところでその手どうしたんだ? ずっと気になっていたんだが」
そろそろだと思っていた。話をしながらしきりに視線を僕の右手を気にしているのは流石に気づいていた。
「この間立ち眩みを起こして、階段から転がり落ちた」
僕はこの間起こったことを簡潔にまとめてハウに話した。
「なるほどな……だと包帯は誰に替えて貰ってんだ?」
流石ハウ、両親の出張が多い事を知っている事もあり話しが早い。
「実は……橘先生に毎日替えてもらえと医者に言われた。休みの日も……」
不知火先生に言われた事をそのままハウに伝えた。
「そいつは面白い事になっているな。只でさえ面白いのにあの橘先生だからな……」
ハウは笑いながらそう言っていた。
「笑い事じゃないってば……はぁ、言うんじゃなかった」
僕はハウに話した事を今更ながらものすごく後悔した。
「じゃ俺も一緒に頼んでやるよ。一人で頼みに行く気なんて最初からなかったんだろ? 無理でも自分替えようとしただろうしな」
割と真面目に言っているように聞こえるが完全にこいつは楽しんでいるのは間違いがなかった。
「ハウには敵わないな……分かった自分で頼むからいい。ハウに頼んでもらうと余計面倒な事になりそうだし」
僕は諦めてこの足で保健室まで行って、橘先生に頼んでしまおうと決めた。
「っちぇつまんねーの、折角だからあんな事やこんな事をついでに頼もうと思ったのによ。残念だ」
僕の思った通りだった、こいつに任せたら大変な事になっていたに違いない。
「仕方ないから今から頼みに行ってくるよ。ハウは来なくていいからね? 因みにもう授業始まるから急いだ方がいいよ? 僕のクラスの一時限目は変更があって体育だから事前に出ない事は伝えているから問題は無いんだけどね」
腕時計をつけていた僕はハウに気付かれないように時間を確認していた。ハウが腕時計をつけていない事は知っていたので折角だからハメてやろうと思ったわけだ。
「うわっ、マジで時間やばいじゃん。チクショー! 創、覚えておけよ? この借りはいつか返す」
ハウは急いで携帯を取り出し時間を確認すると、どこぞの雑魚みたいに捨て台詞を吐いて全力で自分の教室に戻って行った。