病院にて 〜季節外れの蒸し暑さ〜
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僕たちが診察室へ入ると以前と変わらない様子で、不知火先生は迎えてくれた。
「やぁ、創君。久しぶりだね。ここ最近のキミの噂は藍に良く聞かされているよ」
僕が診察室の扉を開けて早々、入って来たのが僕らだとも確認もせずに、不知火先生はそう声を掛けてきた。
「言われてみると確かにそうですね……それよりも以前はすみませんでした。大人気なかったです。あの時は柄にもなく気持ちに余裕が無かったもので……」
確認もせずに声を掛けて来たのには少し驚いたが、僕は以前と変わらないように迎えてくれた不知火先生に感謝も込めて、僕は冷たい態度を取ってしまったあの日の事を素直に謝った。
「いや、構わないよ。創君の気持ちに余裕が無かったことくらい分かっていたんだ。私の方こそすまなかった」
僕たちはお互い頭を下げあった。
「んんんっ。そんな事はどうでも良いから、さっさと診てやってくれ。響華」
藍さんは少し拗ねているようで、明らかに大げさな咳払いをしてから僕たちにそう言ってきた。
「ふふっ、分かっているよ藍。あんなに慌てて電話をしてくるなんて、学生の時以来じゃないか? それだけ、創君の事を大切に思っているんだね」
不知火先生は本当に嬉しそうに、微笑みを浮かべながらそう言っていた。
「ばっばか……それは言わない約束だったはずだぞ? もぉ……」
藍さんは本当に珍しくというか、僕にとっては初めて慌てた様子を見せた。
「藍さん、やっぱり可愛いですね。今の表情や声。僕にもっと魅せて下さい……」
僕はそう言いながら、我慢出来なくなり藍さんに抱きついた。
「ちょっ、創君。響華の前なのに……あーもう、本当にしょうがない奴だ……」
藍さんは驚いた後、恥ずかしながらも僕の事をそっと抱きしめ返してくれた。
「藍さん。大好きです」
僕は不知火先生の目の前という事を忘れて、大胆にもそんな言葉を口にした。
「私だって創君の事が……」
「あーもう暑い暑い。おかしいなーもう秋になったと言うのにー」
藍さんが言葉を言い終わる直前に、僕たちのそんな様子を見ていた不知火先生はわざと言葉を遮るように棒読みでそう言ってきた。
僕たちはその言葉に反応して、お互い同時に離れて苦笑いをするしか無かった。まだ一度も藍さんから好きだと直接言葉を聞けていなかったので、少しだけ残念な気がしてならなかった。




