藍さんの車にて 〜微妙なバランス〜
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僕らは二人で体育祭から抜け出した後、藍さんの車で病院へと向かっていた。
「響華には私の方から連絡しておいたから、直ぐに診察して貰える手はずになっている」
藍さんはそう言うと車を止める為、駐車場へと向かい車を走らせた。
「相変わらず用意周到ですね。藍さんは」
僕は久しぶりに見た藍さんの完璧さに、感心を通り越して呆れていた。
「偶々私に医者の知り合いがいただけという事さ。私じゃなくてもそうすると思うがね」
駐車場に車を止めた藍さんはエンジンを切った後、僕をもう一度お姫様抱っこで診察室まで運ぼうとしたので僕は慌てて断った。
「何だ? 恥ずかしいのか。まぁ、そうか。そういえば男子高校生だったな、創君は」
まるで今思い出したかのように藍さんはそう言ってきた。
「むぅーどうせ僕は子供みたいに小さいですよーだ。それにまた、莱霧さんと僕を重ねて見てたんでしょ? 良いですよーだ」
僕はわざと頬を膨らませながら、藍さんの手を借り車から降りた。
「……すまない。そんなつもりは、いや、ゼロとは言えないか……」
藍さんは凄く申し訳無さそうな表情をしている。
「構いませんよ? 僕がそれでも一緒に居たいって望んでいるんですから……そんな事で一々そんな表情をされた方が辛いですよ……」
僕は藍さんを諭すようにゆっくりとそう言った。
「本当に変わった奴だよ、創君は……」
藍さんは呆れているのか、少し口元に笑みを浮かべている。
「それを言うなら、藍さんもだいぶ変わっていると思いますけどね……学生である僕の告白を誤魔化す事無く、本気で考えてくれているんですから。教師なら普通断りますって」
僕は少しだけ藍さんを馬鹿にするように、挑発気味にそう言った。
「むっ、それを言うなら創君だって十歳以上も年の離れている私に告白してきているんだ。何も変わらないだろう?」
僕の挑発気味な言葉に感化されたのか、藍さんは少しだけ眉間に皺を寄せながらそう返してきた。
「まぁまぁ、ここはお互い様って事でここで何時までも言い争っていたら、不知火先生にも申し訳ないので。ここは僕が大人の対応をしましょう」
僕はまるで子供をあやすかのように藍さんにそう言って、僕は診察室の扉を開いた。
「その意見には同意だが、キミのその態度は気に入らないな。はぁ、まぁいい。莱霧も変わった奴だったが、それ以上に変わった奴だよ、創君は。だからこそ私はキミを……」
その先の言葉は気になったが、藍さんが最後まで口にする前に不知火先生に話し掛けられてしまったので、最後まで聞く事は出来なかった。聞きたかった言葉が後に続いている事を望んでいたが、敢えて後で聞き直す事はしなかった。微妙なバランスで成り立っている僕たちの関係を崩したくなかったから。




