回想 十年前の出来事 〜幼馴染〜
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莱霧は私と不知火先生の幼馴染だった。幼稚園の時からずっと一緒で、何をするにも三人でというのが当たり前だった。
そんな幸せそのものだった私たちにその事件は唐突に起こった。事件が起きたのは私たちが高校二年生の時だった。その日はたまたま偶然、響華は学校で用事があり、後程合流する予定になっていた。
「藍。そんないつまでも響華や僕に頼っていると、もし僕らがいなくなった時どうするの?」
莱霧はうつむいている私に向かってそう声を掛けて来た。
「だって、わたし……」
私はうつむいてもじもじとしながら莱霧の後ろをぴったりとくっついて歩いていた。
「はぁーほんと、しょうがないな藍は」
莱霧はそう言いながら、少し口元を緩めている。
「うー」
私はそんな莱霧の表情が気に入らなくて少しだけ拗ねていた。
「まぁ、僕が生きている間は藍も響華も僕が守るよ……」
莱霧は少し照れ臭そうにそんな事を言ってきた。自分の思っている事を恥ずかしい事さえも、はっきりと口に出来る莱霧や響華が羨ましくて仕方が無かった。
「そんな事言って、さぞ女の子にモテるんでしょうね」
私はぼそっとそんな事を莱霧に向かって言った。
「……藍の言葉には偶に棘があるよな……」
莱霧は少し苦笑いをしながら私にそう言ってきた。私たちはその後いつものようにくだらない話を続けながら、通学路を歩いていた。いつものように、本当にいつもと何も変わらなかった。
交差点で信号待ちをしていた時、一台のトラックが私たちの方に目掛けて突っ込んで来るのが見えた。後ろを向きながら話し掛けてきていた莱霧よりも先に気付いた私は、気が動転してしまい莱霧に直ぐに伝えることが出来なかった。そればかりか私は恐怖で体が動かなくなってしまっていた。
莱霧はその様子に違和感を覚えたのか、直ぐに周りを確認してトラックが目前に迫っている事に気が付いた。莱霧はとっさに私を思いっきり道路の端に押して来た。自分も一緒に避けるつもりだったのだろうが、ほんの少しだけ間に合わなかったようで、トラックにはねられてしまった。
その出来事を間近で見た私は、直ぐに救急車を呼ぶ事も、ましてや莱霧の傍に行く事さえ出来なかった。この交差点は人通りが少なく、当事者の私たちしかその場に居合わせなかった。莱霧は血を流し横たわったまま、トラックの運転手は気絶しているようだった。助けを呼ぶ事が出来たのは私だけだったという事だ。
それから数分が経ち、遅れて来た響華が異変に気付き直ぐに救急車と助けを呼んで来てくれた。懸命な治療むなしく、莱霧は病院で息を引き取った。私がもっと早く助けを、救急車を呼ぶことが出来れば莱霧は助かったかも知れない。この時から、いやこれ以前から自分が嫌で嫌で仕方が無かった私は、変わりたい、変わらなければと思い今のような性格になった。
私は今でもあの時の事を夢に見る。まるで莱霧に恨まれているようで苦しくて仕方が無い。僕の事を見殺しにしておいて、藍だけ幸せになるの? って言われているようで……




